3号機原子炉建屋使用済燃料プールからの燃料の取り出し(2)(燃料取り出し用カバー設置~試運転)
平成31年4月から令和3年2月にかけて3号機原子炉建屋から、使用済燃料の取り出し作業が行われました。
このページでは、使用済燃料を取り出す燃料取り出し用カバーの設置から試運転の状況まで説明します。
(参照:3号機原子炉建屋使用済燃料プールからの取り出し(1)(ガレキ撤去・線量低減))
(参照:3号機原子炉建屋使用済燃料プールからの取り出し(3)(使用済燃料の取り出し))
作業概要
- 3号機の燃料取り出し作業は原子炉建屋最上階(以下「オペフロ」という。)に燃料取り出し用カバーを設置し、内部で燃料取扱機を用いて構内輸送容器(以下「キャスク」という。)に入れ、共用プールに搬出されました。
- 作業員の被ばくを低減するため、燃料取り出しカバーは構外で製作された部材をオペフロ上で組み立てて設置されました。
- 燃料取扱機設置後、燃料取り出しに向けた試運転のなかで燃料取扱機の停止などのトラブルが多発しました。
作業状況
作業状況について、時系列に沿って説明します。
福島第一原子力発電所構内概略図 | 目次 |
1.燃料取り出し用カバーの設置 | |
2.燃料取扱機・クレーンの試運転 |
1.燃料取り出し用カバーの設置
平成28年
- 5月14日、3号機原子炉建屋オペフロ上で組立作業を行う前に、作業が円滑に行えるよう作業手順や施工方法を確認するために、小名浜港の作業ヤードにおいて事前訓練作業が開始されました。
- 12月20日、燃料取り出し用カバーの部材の搬入作業が開始されました。部材は構内の物揚場から搬入され、3号機原子炉建屋オペフロまで移送されました。
平成29年
- 1月17日、燃料取り出し用カバー土台の設置工事が開始されました。
- 7月31日、燃料取り出し用カバーの設置工事が開始されました。
- 11月12日、燃料取扱機がオペフロへ設置されました。また、11月20日にキャスクの搬入や開閉操作などを行うクレーンがオペフロへ設置されました。
平成30年
- 2月23日:燃料取り出し用カバーの設置が完了しました。
オペフロに設置された燃料取扱機 | 燃料取り出し用カバーの設置作業 |
確認日 | 確認事項 |
---|---|
(平成29年) | |
1月25日 現地駐在活動報告書 | 3号機使用済燃料取出設備ストッパの設置状況 |
2月7日 現地駐在活動報告書 | 3号機使用済燃料取出設備設置状況 |
3月2日 現地駐在活動報告書 | 3号機燃料取り出し用カバーFHMガーダ設置作業 |
6月27日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋燃料取り出し用カバーの搬入状況 |
7月31日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋燃料取り出し用カバーの設置状況 |
8月2日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋燃料取り出し用カバーの設置状況 |
8月30日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋燃料取り出し用カバーの設置状況 |
11月10日 現地駐在活動報告書 | 陸揚げされた燃料取扱機及びクレーンの状況について |
11月13日 現地駐在活動報告書 | 3号機燃料取扱機(FHM)の設置状況 |
11月20日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋へのクレーン設置作業の状況確認 |
11月30日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋燃料取り出し用カバーの設置状況 |
12月11日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋燃料取り出し用カバーの設置状況 |
12月26日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋燃料取り出しカバーの設置状況 |
(平成30年) | |
1月15日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋燃料取り出し用カバーの設置状況 |
1月16日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋燃料取り出し用カバーの設置状況 |
1月30日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋屋上の状況確認 |
2月5日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋燃料取り出し用カバーの設置状況 |
2月21日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋燃料取り出し用カバーの設置状況 |
2.燃料取扱機・クレーンの試運転
平成30年
- 3月15日、燃料取扱機・クレーンの試運転が開始されました。
- 3月16日、クレーンの電源が投入され、主巻の制御盤などの機器に異常や警報が確認されました。
- 5月11日、クレーンの試運転において、主巻の巻下げ停止操作をしていたところ、制御盤から異音が発生し、クレーンが停止しました。制御盤の内部に煤が付着していたことが確認されました。調査の結果、クレーン制御盤内の絶縁物が溶けていること、ボルトの頭部が溶融していることが確認されました。
工場と現場で電源電圧が異なるが電圧設定が変更されていなかったこと、制御盤内が高温になって絶縁物が変形し、端子部が接触したことでショートしたことが原因と推定されました。 - 8月8日:使用前検査中に、燃料取扱機で警報が発生し、動作不能となりました。調査の結果、ケーブルの断線、雨水浸入防止カバーの内部が湿っていることなどが確認されました。
原因はカバーの隙間から接続部内部に雨水等が浸入して腐食し、断線に至ったと推定されました。調査結果を踏まえ、類似箇所について調査した結果、複数のラインで異常が確認されました。また、防塵対策用の管が組み込まれていないものが確認されました。 - 8月15日:クレーンを用いて資機材を片付けていたところ、制御系の異常を示す警報が発生し、クレーンが停止しました。
その後の調査で、吊り上げた資機材が定格荷重を超過していたことが判明し、東京電力は労働基準監督署から改める勧告を受けました。
当事象は定格荷重以内の操作時にも発生しました。原因はブレーキの健全性確認時に下方向に力が加わり、一時的にブレーキ性能を超過した荷重がかかりクレーンが停止したと推定され、対策としてプログラムの修正が行われました。
燃料取扱機の異常や品質問題が複数確認されたため、東京電力は燃料取り出し開始までに設備の信頼性を万全にしておく必要があることから、動作確認や設備点検などの安全点検を追加実施することとしました。
(参照:安全点検・品質管理確認の実施)
- 10月19日、福島県は東京電力に対し、試運転中のトラブルに対して申し入れを行いました。(参照:申し入れ)
- 12月25日、安全点検が終了しました。
平成31年
- 2月14日、燃料取り出しに向け、燃料取扱機やクレーンの操作やキャスクの移送などを想定した訓練が開始され、訓練中に7件の不具合事象が確認されました。
不具合事象を解消し、4月15日より燃料取り出し作業が開始されました。
安全点検・品質管理確認の実施
安全点検は、試運転と燃料取り出し作業時との条件の違いによる設備不具合発生リスクの抽出を目的として、機器単品や安全確保のためのインターロック(制御機構)及び燃料取り出し作業を想定した動作確認、経年劣化等の設備点検が行われました。動作確認の結果、燃料取扱機及びクレーンの機能や性能に影響を及ぼす事象が14件確認されました。これらは2019年1月までに対策が完了しました。設備点検では、消耗品の交換、錆や塗装剥がれの補修が行われました。
品質管理確認は、燃料取扱機やクレーンを構成する部品の信頼性評価や新たに調達されるケーブルの品質確認が行われました。また、トラブル発生に備えて予備品の購入や復旧手順の策定が行われました。
キャスクを取り扱うクレーン | 燃料取扱訓練中の使用済燃料プール |
確認日 | 確認事項 |
---|---|
(平成30年) | |
5月11日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋使用済燃料取出用クレーンの停止について |
8月28日 現地駐在活動報告書 | 3号機原子炉建屋オペレーティングフロアの状況 |
(平成31年) | |
3月4日 現地駐在活動報告書 | 3号機燃料取り出しに向けた対応状況 |
3月12日 現地駐在活動報告書 | 3号機燃料取り出しに向けた対応状況 |
福島県の対応
知事による視察
申し入れ
県では東京電力に対し、重大なトラブルに繋がるリスクに対して申し入れや要請などを行っています。
平成30年10月19日
申入者 危機管理部部長 成田 良洋
申受者 東京電力ホールディングス株式会社 福島第一廃炉推進カンパニー
小河原克実バイスプレジデント
平成30年3月の試運転開始以降、不具合が確認されており、その共通要因が装置の調達における品質管理の問題であるとされていました。
使用済燃料の取り出しは、作業中のトラブルが放射性物質の放出に直結する作業であり、また、今後、燃料デブリの取り出しなどさらに困難かつ重要な作業が予定されており、より信頼性の高い品質管理が求められることから、申し入れを行いました。
廃炉安全監視協議会
廃炉安全監視協議会では、進捗状況や作業中に発生したトラブルについて、適切東京電力から説明を受けました。
平成29年2月7日 現地調査
構内高台から燃料取り出し用カバー等設置の状況を確認し、今後の予定等について説明を受けました。
平成29年4月28日 現地調査
構内高台から燃料取り出し用カバー等設置の状況を確認し、東京電力から、工事の進捗状況等について説明を受けました。
平成29年6月16日 会議
燃料取り出しカバー設置作業の進捗状況及び換気設備、放射性物質濃度測定機器の設置状況について説明を受けました。
平成29年9月8日 現地調査
構内高台から燃料取り出しカバー設置状況の状況を確認し、今後のスケジュールについて説明を受けました。
平成30年2月8日 会議
燃料取り出しカバー設置状況及び使用済燃料取り出しの概要、仕様について説明を受けました。
平成30年7月24日 会議
3号機燃料取扱設備クレーンの不具合の原因調査結果と対策について及び使用済燃料プール内の小ガレキ撤去等について説明を受けました。
平成30年9月4日 現地調査
3号機遠隔操作室において使用済燃料取り出 しの遠隔操作室の状況を確認し、使用済燃料取り出しに係る進捗状況及び3号機燃料取扱設備の不具合等について説明を受けました。
平成30年11月30日 会議
燃料取扱設備の不具合に対する反省点や対策、燃料取扱設備の安全点検の進捗状況について説明を受けました。
平成31年1月25日 会議
燃料取扱設備における安全点検の結果および今後の取り組みについて説明を受けました。
平成31年3月26日 会議
使用済燃料プールからの燃料取り出し訓練の結果等について説明を受けました。
廃炉安全確保県民会議
廃炉安全確保県民会議では、関係13市町村の住民及び各種団体の代表者等の構成員が、東京電力から作業中のトラブルについて説明を受けました。また、掲載されていない会議でも、適切廃炉作業の進捗として作業の進捗状況を確認しています。
平成30年9月3日
燃料取扱設備の不具合について、東京電力から説明を受けました。
平成30年11月20日
燃料取扱設備の不具合及び安全点検中に発生した不具合について、東京電力から説明を受けました。
平成31年1月24日
燃料取扱設備の不具合及び安全点検中に発生した不具合の対応状況について、東京電力から説明を受けました。
安全確保協定に基づく現地調査
- 平成30年1月25日
- 平成31年3月4日
原子炉建屋オペレーティングフロアの状況、遠隔操作室における燃料・輸送容器移動訓練
- 平成31年3月12日
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