物揚場排水路における全ベータ放射能の上昇について
構内物揚場排水路(雨水排水路)に設置している簡易放射線検知器の高警報が発生したトラブルについて説明します。
トラブルの概要
- 令和3年3月2日、構内物揚場排水路に設置している簡易放射線検知器(以下「PSFモニタ」という。)の高警報が発生し、全ベータ放射能濃度が高かったことから、排水路出口付近のゲートが閉止されました。※
この事象による周辺海域の海水に異常は認められませんでした。 - 東京電力による調査でガレキ類一時保管エリア(以下「一時保管エリア」という。)W2において保管されていたコンテナから、内容物(内包水、ゲル状の物質)が流出していたことが原因と推定されました。
- コンテナからの漏えい事象を受け、東京電力は、コンテナの外観目視点検、内容物が把握できていないコンテナの内容物確認、コンテナを保管する一時保管エリアのモニタリングの強化を実施することとしました。
※通常、排水路のゲートが閉止される基準は、高高警報(設定値:3000Bq/L)が発生したとき、または高警報(設定値:1500Bq/L)が発生し、パトロールで汚染水の漏えいが確認された場合となっています。しかし、この時には、これまでに高警報が発生した事例(大気中の天然放射性物質等が降雨によって排水路に流入した場合は、ガンマ核種濃度と全ベータ放射能濃度が同時に上昇する。)と異なり、ガンマ核種濃度と比較して全ベータ放射能濃度が高く、高警報の原因が不明であったことから、東京電力は念のためゲートを閉止しました。
これまでの経緯
トラブルの経緯について、時系列に沿って説明します。
福島第一原子力発電所構内概略図(図内の番号は目次番号の場所を示しています) | 目次 |
1.物揚場排水路PSFモニタ高警報の発生 | |
2.高警報発生の原因調査 | |
3.一時保管エリアW2における汚染除去作業 | |
4.外観目視点検、内容物確認の実施 |
1.物揚場排水路PSFモニタ高警報の発生
- 3月2日 18時18分、物揚場排水路に設置しているPSFモニタの高警報が発生しました。モニタリングポストの値に異常はありませんでしたが、排水路内の水を分析したところ、全ベータ放射能濃度が高いことが確認されたため、同日23時40分、当該排水路のゲートが閉止されました。
- 3月9日 19時5分、当該排水路の水については継続的に分析を実施しており、物揚場排水路等の清掃作業が完了したこと、放射能濃度が低減していることなどから閉止していたゲートが開放されました。福島県は、ゲート開放時に現地駐在職員を派遣し、PSFモニタの指示値等に異常がないことを確認しました。
物揚場排水路ゲート付近 | 物揚場排水路の閉止ゲート |
確認日 | 確認事項 |
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3月3日 現地駐在活動報告書 | 物揚場排水路の状況確認及び回収された水の移送状況(1) |
3月4日 現地駐在活動報告書 | 物揚場排水路の状況確認及び回収された水の移送状況(2) |
3月9日 現地駐在活動報告書 | 物揚場排水路ゲート開放に伴う状況確認 |
3月10日 現地駐在活動報告書 | 物揚場排水路の状況確認及び回収された水の移送状況(3) |
3月17日 現地駐在活動報告書 | 物揚場排水路の状況確認及び回収された水の移送状況(4) |
3月18日 現地駐在活動報告書 | 物揚場排水路の回収水移送状況 |
2.高警報発生の原因調査
〇発生源調査
- 東京電力は高警報発生後、全ベータ放射能濃度が高くなった原因の調査を継続的に実施しました。福島県は、東京電力による原因調査に立ち会うとともに、物揚場排水路上流の空間放射線量率を測定するなど、独自に原因となる可能性のある場所の調査を実施しました。
確認日 | 確認事項 |
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3月5日 現地駐在活動報告書 | 旧処理水バッファタンク周辺 |
3月12日 現地駐在活動報告書 | 物揚場排水路上流の未フェーシング箇所 |
3月19日 現地駐在活動報告書 | 東京電力の調査状況の確認(一時保管エリアW2周辺) |
3月23日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアW2 |
〇大雨時の警戒
- 3月13日(土)から14日(日)にかけて大雨の予報が出されました。東京電力による汚染調査では原因物質が特定できていない状況であったため、現地駐在職員は、物揚場排水路の放射線の上昇を警戒するため、昼夜交替でPSFモニタの値を確認するとともに、東京電力が行う降雨時のモニタリング強化についても確認しました。また、3月21日の降雨時にも同様の現地確認を実施しました。
確認日 | 確認事項 |
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3月13日・14日 現地駐在活動報告書 | 降雨時における物揚場排水路の状況確認 |
3月21日 現地駐在活動報告書 | 降雨時における物揚場排水路路簡易放射線検知器の指示値の確認 |
〇原因の発見
- 3月22日、東京電力は物揚場排水路の上流にある一時保管エリアW2付近の排水溝に流れる雨水から、全ベータの値が高いことを確認しました。その後、当エリア内を調査したところ、ベータ線量率が高い地点、及び地表面上にベータ線量率が高いゲル状の塊を発見しました。
- その後の調査で、ゲル状の塊は、過去に一時保管エリアW2で保管されていたコンテナの腐食部から漏えいした物質であることが判明しました。
- 東京電力は、コンテナ内の水がコンテナ下部の腐食部から漏えいし、一時保管エリアW2の汚染につながった可能性があると推定しました。
- 一時保管エリアW2では、ゲル状の塊の除去及び地表面の剥ぎ取り、再舗装、飛散防止剤の塗布が実施されました。(3.一時保管エリアW2における汚染除去作業)
また、当事象に関する一時保管エリアの点検強化として、東京電力は、コンテナの外観目視点検、内容物が把握できていないコンテナの内容物確認の実施、コンテナ等を保管している一時保管エリアのモニタリング強化を実施しています。(4.外観目視点検、内容物確認の実施)
一時保管エリアW2 | 一時保管エリアW2で発見されたゲル状の物質 |
確認日 | 確認事項 |
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3月31日 現地駐在活動報告書 | 漏えいが確認されたコンテナの固体廃棄物貯蔵庫第2棟における保管状況 |
4月2日 現地駐在活動報告書 | 漏えいが確認されたコンテナの内容物確認作業 |
5月19日 現地駐在活動報告書 | 漏えいが確認されたコンテナの保管状況 |
3.一時保管エリアW2における汚染除去作業
- 一時保管エリアW2においてベータ線の値が高い地点、及び地表面上にベータ線の値が高いゲル状の塊を発見したことから、東京電力は3月24日よりゲル状の塊や土の回収、除染材の塗布、養生シートの設置等の応急対策に取り組みました。
その後、線量が高い地点のアスファルト舗装のはぎ取り、再舗装を行い、放射性物質飛散及び流出を防止するための塗装作業を実施しました。
福島県では、一時保管エリアW2全体のアスファルト舗装のはぎ取り、再舗装及び飛散防止剤の散布が完了したことを確認しています。
発見直後の応急措置(3月26日) | 対策後の状況(8月26日) |
確認日 | 確認事項 |
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4月5日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアW2の状況確認(吸着材の設置) |
4月9日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアW2におけるアスファルト除去の準備状況 |
4月13日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアW2におけるアスファルト除去の準備作業 |
4月15日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアW2でのアスファルト剥ぎ取り作業の状況 |
4月26日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアW2の一部区画の再舗装の状況 |
6月8日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアW2の状況確認(仮置きされていた土砂の搬出作業) |
7月29日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアW2の状況確認(エリア全体のアスファルト舗装の撤去) |
8月26日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアW2の状況確認(アスファルト再舗装の完了) |
4.外観目視点検、内容物確認の実施
- 一時保管エリアW2で保管されていたコンテナの腐食部から放射性物質が漏えいしたことを踏まえ、東京電力は、屋外の一時保管エリアで保管されているコンテナの監視強化を目的として、容器やシート養生による保管が必要なガレキ類を保管したコンテナの外観目視点検、及びコンテナの内容物等をシステム管理する体制になる以前(2017年12月以前)の内容物の確認が困難なコンテナの内容物確認を実施しています。
- 外観目視点検は4月15日より開始され、7月30日に対象となる全5338基の点検が完了しました。点検の中で、一部のコンテナに著しい腐食やへこみが確認されましたが、すべてのコンテナで補修が実施されています。
- 内容物確認作業は8月3日より開始され、翌年2月14日に対象となる全4011基の確認が完了しました。内容物確認作業では、コンテナ内に水が溜まっていることが確認された場合、水抜き作業も合わせて実施されています。
- 福島県では、一時保管エリアにおけるコンテナ等の廃棄物の保管状況の確認や、外観目視点検及び内容物確認作業の状況確認を実施しています。また、状況確認中に水漏れなどの異常を発見した際には、東京電力に調査と報告を求めています。
外観目視点検 | 内容物確認 |
一時保管エリアにおける廃棄物の保管状況
確認日 | 確認事項 |
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4月22日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアW1における廃棄物の保管状況 |
5月13日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアE2における廃棄物の保管状況 |
5月20日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアCにおける廃棄物の保管状況 |
6月10日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアP2における廃棄物の保管状況 |
コンテナの外観目視点検
確認日 | 確認事項 |
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6月2日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアX |
6月7日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアX |
6月9日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアP2周辺 |
6月21日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアX |
コンテナの内容物確認
確認日 | 確認事項 |
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8月3日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアE1 |
8月20日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアP |
9月14日 現地駐在活動報告書 | 一時保管エリアE1 |
福島県の対応
廃炉安全監視協議会
廃炉安全監視協議会では、雨水排水路の高警報発生原因やコンテナの管理や点検の状況について東京電力より説明を受けるとともに、立入調査を実施しました。また、東京電力に対して徹底的な総点検の実施と、トラブルを未然防止するため、日常の監視活動や放射線モニタリングの強化に取り組むよう求めました。
・第76回(令和3年度第1回)廃炉安全監視協議会 (会議) 令和3年5月25日
高警報発生の原因、環境への影響評価、再発防止対策について東京電力から説明を受けました。
・第77回(令和3年度第2回)廃炉安全監視協議会 (立入調査)令和3年8月11日
福島第一原子力発電所にて立入調査を行い、物揚場排水路放射線モニタの状況およびモニタリング状況、一時保管エリアW2にあったコンテナの保管状況について、現地確認を実施しました。
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