自殺で残された家族と友人のケアとサポートの手引き(3)
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自殺直後に必要なもの
・簡潔、明確で正しい情報
・擁護する人-あなたやあなたに必要なことをよく知り、つぎつぎ押し寄せる情報を受け止め、警察や検死官やメディアへの対応を助けてくれる人。友人や家族であれば理想的だが、感受性をもったソーシャルワーカーや他の保健の専門家でもよい
・亡くなった方に接すること
・深く細やかな理解と支援・安全
最初の週
この小冊子を葬儀の前に読んでいる場合に役立つことを示します。
この時期は、まだ力が抜けたようで、ものごとをはっきり考えることができないように感じることでしょう。自殺が全く予想外であった場合はなおさらです。友人や家族・親戚の善意のアドバイスによって、すぐに混乱してしまいやすい状態です。
できれば、助けてもらって、ペースダウンし、心の準備ができてから物事を決めるとよいでしょう。ともかく、あわてることは何もなく、そういう意味では危機は過ぎ去ったのです。一般的な考えとは違って、急いで葬儀をするよりは遅れる方が、長い目でみてよいことが多いのです。一般には、葬儀を早く済ませたほうが早く生活に戻れるというように、まるで葬式が悲痛の元であるかのように考えてしまいがちです。そうではなく、悲痛の原因は大切な人が亡くなったというところにあります。葬儀は、公的な場で悲嘆の気持ちを気兼ねなく表にすることができ、参列者に支えてもらうことができる、理想的な場なのです。
西洋社会では故人と親密な時間を過ごす機会はとても少なく、葬儀や埋葬の準備や実行に積極的に参加することは好まれていません。女性の場合はことさらです。このような状況では、亡くなった日から葬儀まで5~7日あると、よりよいでしょう。言ってみれば、検死のために葬儀が遅れるというのは、視点を変えるとマイナスよりもプラスの側面があるといえます。時間の流れがゆっくりになれば、それだけじっくりと葬儀の計画を立てることができます。
葬儀では、故人とあなたとがどんなに結びつきを持っていたかを十分に示すことができ、また、故人にふさわしい、生き生きとした思い出を示すことができます。 葬儀の担当者は遺体との「対面」について尋ねるでしょう。最初は、それはいやだと思うかもしれません。自殺の方法によっては遺体の損傷が大きく、そうした場合は特にそのように感じます。しかし、やさしい支援の言葉があれば気持ちをとりなすことができるかもしれません。大切な人の遺体の一部しか判別できなかったり対面できない場合でも、遺体のそばにいて、さよならを言ったり、すべきと思うことをすることは、長い目で見れば大切なことです。こうすることで、死の現実を認めることができ、この経験が、これから先、振り返るよりどころとなります。事実をしっかりと受け止め恐怖感が少なくなるにつれ、故人と2人きりの時間を持つこと、必要なときには支えてくれる友人や家族が近くにいるという安心感が大切だということに気づいていくものです。
葬儀をこなすために安定剤を飲んだほうがいいですか?
先に述べたように、葬儀は悲嘆の気持ちを表に示すための時間です。残念ながら、私たちの住む社会では、強い感情は快く受け入れてもらえません。安定剤や鎮静剤は苦痛を鈍らせる一方、大切な記憶を鈍らせことがあり、後悔することになるかもしれません。安定剤がいらないような支援がないか尋ねてみてください。 もし「葬儀をこなす」ために安定剤を飲んでいなかったとしても、大事な部分を細かく思い出せないかもしれません。遺族の方の多くは、自宅で、家族や友人と安心して葬儀の録音を聞いたりビデオを見たりします。誰かに、葬儀や埋葬の録音を頼んでおけば、思い出として手元に残すことができます。
自殺後、数日間におけるニーズのまとめ
・ペースダウンする促し
・支援
・故人と大切な時間を過ごす機会
・「対面」(葬儀担当者の言うところの)の前、途中、後についての細やかな準備
・葬儀を計画する時間と機会を持ち、故人の生き生きとした思い出を示し、敬意を示すこと