高温焼却炉建屋東側壁面の配管からの放射性物質を含む水の漏えいについて
トラブルの概要
令和6年2月7日、福島第一原子力発電所において、汚染水浄化設備(第二セシウム吸着装置(サリー))が設置されている高温焼却炉建屋東側壁面のベント口(汚染水浄化設備で発生する水素ガス排出用の排気管)から、放射性物質を含む水が建屋外に漏えいする事案が発生した。漏えいした水は、ベント口下部の敷き鉄板上に溜まり、敷き鉄板の隙間から土壌へ染みこんだ。
東京電力は、漏えいした水の量は約1.5立方メートル、放射性物質量はCs-137及びCs-134の総和で約66億ベクレルと評価している。
福島県の対応
申し入れ
県では東京電力に対し、重大なトラブルに繋がるリスクに対して申し入れや要請を行っています。
令和5年10月に発生した増設ALPS配管洗浄作業における身体汚染に関する再発防止策を確実に実施するとともに、他の廃炉作業に水平展開して、同様のトラブルが発生しないよう、安全管理体制の構築に取り組むことを求めているところですが、その最中に、今回のトラブルが発生したことは極めて遺憾であると考えています。東京電力において、県民に不安を与えるトラブルを繰り返し発生させていることについて、同様のトラブルを再び発生させないという強い覚悟を持ち、より一層の安全管理の徹底を図るよう、申し入れを行いました。
会議による確認結果
会議 | 開催日 | 議題 |
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第93回(令和5年度第6回)廃炉安全監視協議会 | 令和6年2月20日 | 高温焼却炉建屋からの放射性物質を含む水の漏えいに係る原因と対策 |
第36回(令和5年度第3回)労働者安全衛生対策部会 | 令和6年2月26日 | 高温焼却炉建屋からの水の漏えい事象における対策実施状況について |
第94回(令和6年度第1回)廃炉安全監視協議会 | 令和6年4月24日 | 高温焼却炉建屋からの放射性物質を含む水の漏えいに係る設備面での対策 |
第95回(令和6年度第2回)廃炉安全監視協議会 | 令和6年8月20日 | 作業点検および共通要因分析について |
原子力安全対策課楢葉町駐在による現場確認
東京電力の対応状況を確認するとともに、現場周辺のモニタリングポスト及びダストモニタの値に異常がないか確認しました。確認内容の概要は以下のとおりです。
調査日 | 現場状況 | 確認内容 |
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令和6年2月7日 | ・現場確認時、ベント口からの漏えいは停止していた。 ・ベント口下部のゴムシート及び鉄板上に水たまりがあった。 ・モニタリングポスト及び敷地境界ダストモニタに異常な値は確認されなかった。 |
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令和6年2月8日 | ・ゴムシート及び鉄板上の水たまりは回収されていた。 ・モニタリングポスト及び敷地境界ダストモニタに異常な値は確認されなかった。 |
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令和6年2月9日 | ・ゴムシート及び鉄板が撤去され、その下のコンクリート部分の線量測定を実施していた。 ・モニタリングポスト及び敷地境界ダストモニタに異常な値は確認されなかった。 |
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令和6年2月13日 |
・コンクリート周辺の汚染土壌を回収し、コンクリートに放射性物質飛散防止剤を塗装していた。 |
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令和6年2月14日 |
・切り抜いたコンクリート底部表面の線量率測定を実施していた。 |
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令和6年2月15日 |
・漏えい箇所直下のコンクリート盤下部土壌を回収するため、コンクリートを切断していた。 |
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令和6年2月16日 | ・漏えい箇所東側地下を通るK排水路のバイパス工事(汚染エリアを避けるように上流部に堰、水中ポンプを設け、下流部まで配管でバイパスを設ける。)が実施されていた。 ・作業に伴い当該漏えい箇所付近に設置されたダストモニタの指示値に異常な値は確認されなかった。 ・モニタリングポスト及び敷地境界ダストモニタに異常な値は確認されなかった。 |
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令和6年2月18日 |
(写真なし)
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・コンクリート盤下部の汚染土壌回収は、地表面の線量率が平均0.02mSv/h(周辺のバックグラウンド相当)になるまで実施されることとなっていることから、県の放射線測定器により、土壌回収後の地表面の線量率を測定した。その結果、東京電力の測定結果と同程度(平均0.02mSv/h)であることを確認した。 |
令和6年2月19日 | ・コンクリート盤下部汚染土壌の回収が完了し、砕石で埋め戻されていた。 ・K排水路のバイパス工事(汚染エリアを避けるように上流部に堰、水中ポンプを設け、下流部まで配管でバイパスを設ける。) が完了していた。 ・作業に伴い当該漏えい箇所付近に設置されたダストモニタの指示値に異常な値は確認されなかった。 ・モニタリングポスト及び敷地境界ダストモニタに異常な値は確認されなかった。 |
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令和6年2月20日 | ・汚染土壌を回収した箇所は、コンクリート打設の準備作業を実施していた。 ・また、汚染土壌の回収が完了したことから、K排水路のバイパス設備(堰、水中ポンプ、移送配管等)の撤去作業が行われていた。 ・作業に伴い当該漏えい箇所付近に設置されたダストモニタの指示値に異常な値は確認されなかった。 ・モニタリングポスト及び敷地境界ダストモニタに異常な値は確認されなかった。 |
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令和6年2月21日 | ・回収した汚染土壌の保管状況を確認した。(写真赤点線部分) ・コンテナの転倒防止のため、固定金具が設置されていた。 ・コンテナの外観から、土壌の流出がないことを確認した。 |
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令和6年3月28日 | ・ベント口の下部の汚染された土砂等の回収が完了し、再舗装され、その上に鉄板が敷かれていることを確認した。 | |
令和6年5月23日 | ・第二セシウム吸着装置(サリー)が設置されている高温焼却炉建屋壁面の旧水素ベント口の隣に新たな水素ベント口(追設ベント口)が設置され、屋内に新たなドレンタンクが設置されていること、ドレンラインは飛散防止対策として内管と外管の二重構造となっていることを確認した。 | |
令和6年7月5日 | ・第三セシウム吸着装置(サリー2)が設置されているサイトバンカ建屋においても、サリーと同様に、新たな水素ベント口(追設ベント口)やドレンタンク、内管と外管の二重構造となったドレンライン等の設備改修工事が行われたことを確認した。 |
【参考】福島県原子力安全対策課現地駐在
福島県では、東京電力ホールディングス株式会社の廃炉に向けた取組等の確認体制を強化するため、平成26年4月1日から、楢葉町内に原子力安全対策課職員が常駐し、現地確認やトラブル時の迅速な情報収集を行っています。なお、重大なトラブルが発生した時には休日・夜間も現場確認ができるように体制を整えています。
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