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知事記者会見 令和6年8月19日(月)

印刷用ページを表示する 掲載日:2024年8月22日更新

【質問事項】

1 ALPS処理水の海洋放出について

【記者】
 24日に東京電力福島第一原発の処理水放出から1年を迎えますが、知事としての受け止めを伺います。

【知事】
 昨年8月24日にALPS処理水の海洋放出が開始されてから、間もなく1年となります。
 現在、8回目の放出が行われていますが、過去7回の放出も含め、海域モニタリングにおいても、トリチウム濃度が検出下限値未満か、十分に低い値であることを確認しています。
 こうした「異常がない」というデータを一日一日積み重ねていくとともに、これらのデータも含め、科学的な事実に基づく情報を、国内外に分かりやすく発信していくことが極めて重要であります。
 ALPS処理水の問題は、これからも長い取組が続きます。国及び東京電力においては、引き続き、想定外の事態が生じることのないよう、万全の安全対策を講じていただきたいと思います。
 あわせて、国内外の理解醸成に向け、IAEA等の国際機関と連携し、第三者による監視と透明性の確保に努め、正確で分かりやすい情報を継続して発信していただきたいと考えています。

【記者】
 先ほど処理水の話で理解醸成のお話が出ました。
 先週トランプさんの発言が少し物議を醸しましたが、特に国外で福島の現状について理解を醸成していくために、改めてどうお考えなのか伺います。

【知事】
 まず、我々自身がこの13年余り、風評被害と戦い続けております。
 昨年8月のALPS処理水放出の際も、特に漁業者の皆さん、県民の皆さんが、「また新たな風評が生じるのではないか」「これまで前進してきた取組が水泡に帰すのではないか」という不安を持っておられました。
 結果として処理水の問題については、全国の多くの方々から温かい応援を頂く中で、新たな風評は生じずに済んでいるところであります。一方で、世界の一部の国・地域等においては、今なお福島県産のみならず、日本産の水産物に対する輸入規制が行われています。
 こういったことについて、東京電力福島第一原発の廃炉対策が今どのように進捗しているのか、また、処理水の問題や今後の最難関と言われる燃料デブリの取り出しの問題も含めて、正確で分かりやすい情報を国内外に、特に世界に対して発信し続け、理解を醸成していくことが極めて重要であります。
 この点については、国に対して強く求めていきたいと考えています。
 この13年余り、世界の各国・地域に、私自身が幾度も足を運び、東京等の大使館等においても個別に理解醸成活動を行っている中で、一定の進捗があったかと思います。
 ただ先ほど申し上げたとおり、完全に風評が払拭された訳ではありません。また、世界各国・地域においては、13年経って福島の原発事故の存在を知らない方も徐々に増えているかと思います。
 こうした中で、改めて県が正に当事者の自治体でもありますので、市町村の思いや県民の皆さんの思いもしっかり汲み上げた上で、正確な情報発信を継続していくことが重要だと思います。
 先般はヨーロッパに、また、来月には東南アジアに行ってまいりますが、その際も、風評を払拭したいという強い決意で、私自身がトップセールスあるいはリーダーとしての情報発信に努力を重ねていきたいと考えています。

2 自民党の総裁選について

【記者】
 自民党の総裁選の日程が明日決まりますが、福島県知事として、次の総裁に求めることなどあれば伺います。

【知事】
 東日本大震災と原発事故から13年余りが経過する中、復興の歩みが着実に進む一方で、新たな課題も顕在化するなど、福島の復興を成し遂げるためには、これからも長く厳しい戦いが続きます。
 次の総裁には、これまでの総裁が引き継いでこられた「福島の復興なくして日本の再生なし」との思いを、改めて強く胸に刻み、福島の復興に真正面から取り組んでいただきたいと思います。
 また、人口減少や物価高、国土強靱化など、日本が抱えている様々な課題解決に向け、強いリーダーシップを発揮されることを期待しています。
 さらに、ALPS処理水についてお話をしたいと思います。
 昨年8月、岸田総理は「廃炉及びALPS処理水の放出を安全に完遂すること、また、漁業者の皆さんが安心して生業を継続できるよう必要な対策を取り続けることを、たとえ今後数十年の長期にわたろうとも全責任を持って対応することを約束する」と発言されました。
 この言葉は極めて重く、重要なものであります。福島県、また日本の漁業の未来のために、次の内閣においても、この言葉を堅持されるようお願いしたいと考えております。

【記者】
 処理水放出に当たって、政府として全責任を持って対応すると発言された岸田首相が次期総裁選には出馬しないと態度を示されましたが、どのようにお考えか伺います。また、総裁選の候補者として10人近くの方の名前が挙がっており、活発な総裁選だと思いますが、その現状をどのように受け止めているか伺います。

【知事】
 まず、岸田総理についてであります。
 岸田総理におかれては、就任以降、復興に向けた様々な取組を進めていただきました。
 昨年、創造的復興の中核拠点としてF-REI(福島国際研究教育機構)が始動したほか、特定復興再生拠点区域の避難指示が全て解除され、新たに特定帰還居住区域が設定されました。
 また、本県産農林水産物を始めとした日本産食品の輸入規制撤廃に向け、首脳会談や様々な国際会議の場を通じ、各国首脳に対して、科学的な事実に基づく正確な情報を伝えていただいたこともあり、英国やEU等での輸入規制の撤廃につながりました。
 このように、本県の復興に多大なる御尽力を頂いたことに心から感謝を申し上げます。
 福島県は今もなお、震災、原発事故からの復興の途上にあります。
 今後とも福島に思いを寄せていただいて、復興に向けたお力添えをお願いしたいと考えております。
 また、次の総裁に求めることについては、冒頭でお話ししたところでありますが、大事なことは政策論争かと思います。
 国民の皆さんが、政治資金等の問題について意識が高いという現状がありますので、今後、出馬表明をされる各候補が、自分自身の政策や国家に対する理念、また、今回の自民党に関わるお金の問題等についての態度を明確に表明し、活発に政策論争をしていただくことが重要かと思います。
 同時期に、立憲民主党においても、次のリーダーについての選挙が行われると報道されています。両党それぞれのリーダーが、日本の政治を動かしていく上で非常に重要な存在でありますので、活発な論戦を期待しているところであります。
 あわせて重要なことは、福島の復興が、「過去形」ではなく「現在進行形」であるということであります。
 東日本大震災と原発事故から13年余り経過していますが、福島県は、燃料デブリの取り出しや処理水の問題など、これから10年、20年、30年という期間が必要だと見込まれるものが多くございます。
 また、帰還困難区域は、まだ福島県の中に2%余り残っており、この地域の今後の道行きが明確になっているわけではありません。
 こうした状況を、各政党のリーダー、あるいはリーダー候補となる方々には、しっかりと受け止めていただいて、「これから福島の復興をどう進めるのか」ということも政策論争の中にしっかり加えていただくことが重要だと福島県知事として考えております。

3 南海トラフ地震臨時情報について

【記者】
 南海トラフ地震臨時情報が今月20日に初めて発表されました。これを受けて県として対応したことを伺います。
 また、本県に関しても、北海道・三陸沖後発地震注意情報の運用が始まっていますが、今回の南海トラフ地震臨時情報を受けて見えた課題や、これから取り組むことなどがありましたら伺います。

【知事】
 今月8日に日向灘で発生したマグニチュード7.1の地震に伴い「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が初めて発表され、日頃の備えの再確認が呼び掛けられました。
 本県においても、太平洋沿岸が「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の対象地域であることから、災害を自分事として関心を持っていただくことが重要であります。
 また、台風5号や台風7号も含め、こういった自然災害に対するリスクを県民の皆さんが実感されているかと思います。
 県民の皆さんにおかれては、地震、台風、大雨災害等の自然災害が身近に起こりうるということを認識していただくとともに「福島県防災アプリ」等を活用しながら、避難場所や御家族との連絡手段の確認など、日頃の備えの確認を行っていただきたいと思います。
 また、最新の気象情報を積極的に入手し、大雨や地震等の自然災害から御自身と大切な方の命を守るための取組を改めてお願いいたします。

 

4 台風7号について

【記者】
 台風7号について伺います。
 いわき市は早い時間帯から市内全域の約32万人に避難指示を出しましたが、実際の避難者は200人余りだったと報じられています。
 避難指示の対象を災害の恐れが大きい地域に絞ることで、市民がより判断しやすくなるといった指摘もありますが、避難情報についてはどのように発令するのが良いか、お考えを伺います。

【知事】
 まず、このたびの大雨で被災された方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。
 先週16日から17日にかけて、非常に強い勢力で本県に接近した台風第7号は、県内各地に激しい雨をもたらし、住家の破損や道路への土砂の流入などの被害が発生しました。また、県内で初めて線状降水帯の発生予測情報が発表されました。
 これを受け、福島県では、市町村や気象台と緊密に連携しながら災害対応に当たったほか、県民の皆さんに対し、早めの安全確保を呼び掛けたところであります。
 各自治体においては、気象台や県の状況を確認しながら、必要と思われる対策を講じられたと考えております。
 特にいわき市においては、昨年、福島県内で初めて線状降水帯による被害を経験されたところであります。この線状降水帯は、実際にどこで発生するかを予測することが非常に難しい部分があります。
 線状降水帯は、これまでの梅雨前線や台風災害とは異なる特質を持ち、非常に甚大な被害をもたらすということを、いわき市は実際に経験された自治体でもあります。
 そうした経験も踏まえ、結果として、そういった避難指示という形になっておりますが、より安全サイドに立った対応をされたものと認識しております。
 こういった対応は非常に困難な部分もありますが、今後も気象台、県、市町村、国等と連携しながら、できるだけきめ細かな情報発信をしていく努力が重要だと思います。
 また、今回の線状降水帯の予測についても、福島地方気象台あるいは東北エリアで、当初は宮城県と福島県で発表されましたが、その後、実質的に解除されるというプロセスもありました。
 (線状降水帯の発生予測情報は)まだ1、2年という段階でありますので、今後、この線状降水帯への対応をより良くしていくために、関係者で意思疎通をしながら取組を進めていくことも防災対策として重要だと考えております。

5 燃料デブリの試験的取り出し作業について

【記者】
 燃料デブリの関係で、早ければ今日にも東京電力が取り出しの工程を発表します。
 これまで何回も延期になってきていますが、その点についての受け止めを伺います。

【知事】
 福島第一原発2号機における燃料デブリの試験的取り出しについて、先週、原子力規制委員会からテレスコ式取り出し装置の使用前検査の終了証が交付され、早ければ今月中にも取り出し作業が開始される予定であります。
 燃料デブリの取り出しは、長期にわたる福島第一原発の廃炉作業の中でも最難関の課題であり、今回の試験的取り出しはその入り口となる重要な作業であります。
 国及び東京電力においては、安全を最優先に、確実に作業を進めていただきたいと考えております。

(終了)

【質問事項】

1 ALPS処理水の海洋放出について
 →危機管理部原子力安全対策課 電話024-521-7252
 →企画調整部風評・風化戦略室 電話024-521-1129

3 南海トラフ地震臨時情報について
 →危機管理部災害対策課 電話024-521-8275

4 台風7号について
 →危機管理部災害対策課 電話024-521-8275

5 燃料デブリの試験的取り出し作業について
  →危機管理部原子力安全対策課 電話024-521-7252