知事定例記者会見
■日時 令和5年4月11日(火曜日)10時00分~10時24分
■会場 応接室
【質問事項】
1 ドイツ連邦共和国環境大臣の来県について
2 ALPS処理水の処分について
3 新型コロナウイルス感染症について
【質問事項】
【記者】
14日に、ドイツの環境大臣が来県されます。気候変動等も含めてG7の関連でいらっしゃるということですが、知事と会談される場面もあるとお聞きしています。
4月の下旬には、訪欧される関係もあるかと思いますが、福島県の知事として、今回、どういったメッセージを伝えたいか、お考えを伺います。
【知事】
今週、ドイツの環境大臣が福島県を来訪され、関係各所を視察されると伺っております。
まず、心から歓迎いたします。大臣と面談をさせていただく予定となっておりますが、私からは二つメッセージをお伝えしたいと考えています。
一つ目は、感謝です。ドイツ、そしてヨーロッパの皆さんから、東日本大震災、特に、原発事故以降、温かい御支援を頂いてきました。そのことに対する「ありがとう」という感謝の思いを直接お伝えしたいと思います。
そして、二つ目は、福島県が経験した苛酷な原発事故に対する思いであります。2011年の3月、福島県は世界でも前例のないような苛酷な原発事故に見舞われ、それは過去形ではなく、現在においても、その苦しみというものが続いています。原子力災害からの復興は途上であり、例えば双葉町、大熊町、浪江町などは、帰還困難区域が多くの面積を占めており、住民の皆さんがまだまだふるさとに安心して帰ることができない状況が継続しています。
したがって、「二度とこのような原発事故を起こしてはいけない」という強い思いや、「一度起こしてしまうと、どれだけ厳しい状況が長期にわたって継続するか」ということを、伝承館という場でもありますので、直接お伝えしたいと考えております。
特にドイツにおいては、脱原発が今月において達成された国でもあります。そういう国に対して、福島県自身が、脱原発、(県内における)全基廃炉、10基廃炉ということで、これまで長い間、取組を進めてきましたが、そういった思いをお互いに意見交換しながら、共有することができればと考えております。
また、あわせて、福島県が再生可能エネルギー100%に向けて、着実にこの12年間、その歩みを進めており、一定の方向性が今見えていること、そして、今後未来のエネルギーとして、水素の利活用に積極的に取り組んでいること、こういったことなどをお話できればと考えております。
【記者】
未来の話のところですけれども、再生可能エネルギーの利活用の部分で、今回、連携協定の締結先とは違うと思うのですが、ちょっと一歩踏み込んだ、政策的な協議であったり、話であったり、考えている部分について伺います。
【知事】
まず、福島県が、これまでドイツ国内で連携協定を結んでおりますのは、ノルトライン=ヴェストファーレン州とハンブルク州、あるいはスペインのバスク州であり、州単位で(の協定締結で)あります。ただ、州と言いましても、ノルトライン=ヴェストファーレン州は人口が約1,800万人であり、東京をはるかに上回る規模の州でありますので、ノルトライン=ヴェストファーレン州との協定というものは、非常に規模の大きい連携ということになります。
したがって、今回(お会いするの)はドイツ連邦の大臣であられますので、その大臣との関係という意味では、直接的(に協定につながる)ということではないと思いますが、現在、我々が正に協定を締結するハンブルク州の環境大臣も一緒に来られるというお話を伺っておりますので、我々が今、再生可能エネルギー等で既に連携を行っておりますが、ここにまた今後新たな要素も加味をしながら、発展的に連携協定を締結するといったこともお話する時間があればと考えております。
【記者】
今の質問の関連です。ドイツの脱原発は、福島第一原発の事故が直接的なきっかけとなって、決定されました。これが完了するのは間もなくですね、15日と言われていますが、完了することについて知事の受け止めを伺います。
【知事】
現在、EUの各国を見回すと、この福島第一原発の事故を踏まえて、原発の取扱いどうするかという点について、2011年段階と現時点において、国によって対応が分かれてきているなということを感じております。
特にその一つの原因になっているのはカーボンニュートラル、脱炭素の動きかと思います。
原子力発電に対する見方、2011年の原発事故直後においては、原発を減らしていかなければいけないという大きな潮流があったかと思います。一方で現在、地球環境問題が、温暖化等も含め非常に厳しい状況になっており、カーボンニュートラルも、世界にとって極めて重要な課題になっていると考えています。
そうした中で、ドイツは、当時のメルケル首相のリーダーシップの下で、脱原発を明確に決められ、その後、首相等が変わっておられますが、国内での議論がありつつも、一応その方向性を堅持されている。
一方、フランスなどほかの国においては、カーボンニュートラルという潮流の中で、原子力発電が一定程度は必要だということで、過渡期的な位置づけということもあるかもしれませんが、やはり使わざるを得ないということで方向性をつくっておられます。
それぞれの国々が、自分たちが直面するそれぞれの課題に応じて、国としての原子力政策を真剣に模索されていると受け止めております。
【記者】
一方で、事故から12年と同じ月日が流れる中で、ドイツは脱原発し、日本は原発回帰にかじを切っている訳ですが、今おっしゃったように国のそれぞれの判断というところがあるかもしれませんが、なぜこの違いが生まれて、福島を抱える日本が脱原発にいかなかったというこの点については、どのように感じていらっしゃるのか伺います。
【知事】
今ほどの、「政府において脱原発にいかなかった」との御指摘ですが、必ずしもそうではないかと思います。率直に言いまして、それぞれの国が抱えている事情やエネルギー事情は根本的に異なりますので、私が福島県知事という立場で論評することはなかなか難しいと思います。
ただ、福島県知事として常に続けていきたい(訴えていきたい)ことは、「二度とこのような原発事故を起こしてはいけないんだ」ということです。
そのために、どういった対応があるべきなのか、何か一つの正解があるわけではないと思いますが、福島県としては、原子力に依存しない社会をつくるということを、県の復興理念の一つとして明確に掲げておりますし、全国の中でも有数の原発の基数、10基というものを全基廃炉ということが明確になっています。
また一方で、東京電力福島第一原発の廃炉ですが、先週もお尋ねを頂いておりますが、まだ原子炉の内部すら、12年たっても明確に分かっていないという状況でありますので、やはり原発に頼らない社会をつくるために、再生可能エネルギー100%というものを、しっかり道筋をつけていかなければいけない。こういったことを、機会あるごとに国内外に向けて発信していきたいと考えています。
【記者】
一点だけ確認です。脱原発の質問の中で、福島県としては再生可能エネルギー100%を目指して道筋をつけていくという発言があり、一方で原発をめぐっては県、国によって考え方が違うというお話がありました。福島県として再生可能エネルギー100%、あと脱原発を実現するということは福島県だけではなく、できれば日本国内に波及させていくというか、モデルになりたい、そういうようなお考えはあるのか伺います。
【知事】
まず、エネルギーミックスの議論というものは常にあるわけでありますが、我々が今この世の中で生活をする、あるいは仕事をする、こういった中で、一定の電力というものが極めて重要であります。そういう中で、やはりどういったエネルギーミックスがそれぞれの国にとってベストかということを、国家として御判断をされ、対応されているかと思います。
一方で、福島県は苛酷な原発事故に見舞われた当事者の県でありますので、2011年の段階で、原子力に依存しない社会をつくろう、再エネ100%で頑張っていこうという目標を打ち立てて、12年間、非常に意欲的な挑戦的な目標でありますが、その努力の道筋を一つ一つ結果に落とし込んでいるところであります。したがって、再生可能エネルギー100%、そんなに簡単ではありません。我々も2040年を目途にということで申し上げておりますので、やはりこういったものができないと、本当の意味で、原子力に依存しない社会というものは簡単にはつくれないのだろうということも考えておりますので、まず我々自身が、原発事故の当事者県として、しっかり道のりを歩んでいきたいと考えています。
【記者】
ALPS処理水の海洋放出方針を政府が決めてから13日で丸2年となります。
この2年の国と東電の取組、十分と考えられておられるか伺います。
【知事】
震災と原発事故から12年が経過しているわけでありますが、この処理水の問題は、困難な、しかも非常に喫緊の課題として、我々の目の前にあります。
この2年間、政府において、一定の方針を定め、また漁業者の皆さんに対する説明を継続し、理解を深めようという努力をしている。あるいは、全国の中で、この処理水の正確な情報を発信しようという取組、あるいは世界に対しても、各閣僚等が機会あるごとにお話されているという経過を見ております。一方で、やはり風評に対する懸念というものが県内外で残っている。あと漁業者の皆さんも、非常に複雑な思いで葛藤されているという現状を見ているところであります。
政府、東京電力においては、こういった現状を踏まえた上で、この処理水の問題について、正確な情報の発信、あるいは風評対策に万全を期すること、これは、これまで福島県として幾度も幾度も訴えてきているところでありますが、それに対し、誠実に対応していただくことを願っております。
【記者】
県としては、2年間どのように取り組んできたか、今、理解醸成まだまだというような見解もありましたが、今後どのように進めていくか改めて伺います。
【知事】
福島県として、まず、私自身、国の関係大臣等とお会いする機会、あるいは福島復興再生協議会、閣僚との関係、その様々な場面において、常にこの処理水の問題について、今ほど述べたような県内の思いであったり、あるいは国内におけるお考え、あるいは海外との関係も含めて、直接伝えてきたところであります。
政府自身は、そういった意見も踏まえて、一定程度の対応をしていただいているかと思いますが、やはり大事なことは、それを継続して、関係の皆さんの理解を深めること、そして、風評への懸念を払拭できるような具体的な施策というものをしっかり構築をしていくこと、これに尽きるかと思います。
今後とも県として、それぞれの思い、立場によって異なる、こういった複雑多様さ、葛藤、分断、そういったものも含めて、政府あるいは党の関係者等に率直に訴え続けていきたいと考えています。
【記者】
正確な情報発信のお話がありましたけれども、今月7日に韓国の最大野党の、共に民主党の国会議員が県内を訪問して、処理水の海洋放出に反対の姿勢を示すために来たということだったのですが、どんな目的、行程であるかというのは事前に把握されていたのかというところと、視察では、地方の議員、医者、避難された住民のお話を聞いていましたけれども、福島の子どもたちの甲状腺の発生率は通常の数十倍であるとか、トリチウム水で魚が汚染されることになるといったような、これまで国とか県が発信してきた情報とは違う内容が韓国の議員団に伝えられていましたが、まず、このような状況への受け止めを伺います。
【知事】
震災、原発事故から12年が経過しておりますが、今なお輸入規制を続ける国・地域がございます。こういった中で、そういった視察をされたという報道も拝見しているところであります。こういう風評、特に誤解、偏見がいまだに残っているということが事実でありますので、やはり福島県の正確な情報を我々自身が、政府が、東京電力が、継続して発信していくことが重要でありますし、第三者的な情報の発信も重要かと思います。
先般、IAEAが昨年11月に日本を訪れて実施をしたALPS処理水の安全性に関するレビューについて、その見解を取りまとめた報告書が公表されました。ALPS処理水の取扱いについては、今後、様々な取扱いを進める上で、客観性、透明性を確保することが極めて重要です。今後、IAEAのレビューに関する包括的な報告書が公表される予定でもあります。
国においては、引き続き、IAEA等の国際機関と連携して、第三者による監視と透明性の確保に努めること、またあわせて、科学的な事実に基づく分かりやすい情報発信を行い、国内外における理解が深まるよう責任を持って取り組んでいただきたいと考えています。
【記者】
IAEAの科学的なデータの根拠さえ、少し信憑性が低いというような疑問の声も議員団から聞かれましたけれども、あと今回は、民間レベルでの情報発信だったのですが、そういう情報を国会議員が持って帰ったということになっており、比較的好意的なところへの情報発信のほかに、ピンポイントで、そもそも否定的な意見を持っている立場の人たちへのアプローチというところについては県の知事としてはどういうふうにお考えか伺います。
【知事】
まず、こういったIAEAの関係もそうでありますが、科学的で冷静な議論というものが極めて重要だと思います。IAEAには韓国の専門家も入っておられます。科学的な土俵で議論すれば、真実は二つも三つもないと考えておりますので、やはり冷静で客観的な科学的な議論というものを大切にしていくことが重要だと考えております。
【記者】
コロナ対策でマスクの着脱の判断が個人に委ねられてから間もなく1か月となります。現在の感染状況をどう見ているかというのが一点、あと知事も状況に応じて、マスク以外にも握手を再開したり、いろいろ、対応を変えているところがあると思うのですけれども、マスクを外すことの効果ですとか、危機感ですとか何か御自身でお感じになったことについて伺います。
【知事】
まず、福島県全体の感染状況をお話ししますと、この1か月間、全体として減少傾向がある程度継続している。また、この10日間余りも前の週の同じ曜日を下回るということで、全体としての減少傾向は福島県内において継続できていると考えています。
ただ一方で、二つ注意しなければいけない点がありまして、減少しているとは言っても、やはり平日は100人以上の方が新たに感染をされているという現実があります。
したがって、3月13日にマスクの取扱いが変わりました。あるいは、来月の8日から(感染症法上の)分類が2類から5類に変更される。こういった全体としての傾向がある中ではありますが、3月あるいは5月の分岐点を越えたから、新型コロナウイルスがなくなったかというと、なくなったわけではありません。常に我々の身の回りにはあり得るんだということを忘れてはいけないと考えています。
そして二つ目に大事なことは、福島県は全体として、ある程度の減少傾向を継続していますが、特に大都市圏等において、またリバウンドの動きが見られています。東京都の専門家の分析を見ますと、4月から5月にかけて、増加傾向が予測できるという試算も出ておりますので、やはり人の活動が活発化する中で、全体としてリバウンドの傾向というものが、福島県内においても見られる可能性はあるかと思います。
そこで改めてですが、4月、新年度に入りました。進学、就職、転勤など、正に移動の機会が増えています。あるいは、今日もそうですが、気温が高くなってきて、お出かけの機会も増える。だからこそ、改めて基本的な感染防止対策の確認をしていただきたいと思います。特に混雑する場所、あるいは感染リスクの高い場所へ移動する際は注意をする。目的地だけでなく、往復の行程、ここも注意が必要です。あるいは会食等も感染対策をとっていただく。特に大事にしていただきたいのは、発熱あるいは喉の痛みなど、普段と違う症状がある場合には外出を控えていただくことと、身の回りの方が感染され、濃厚接触になった場合も外出を控えていただくこと、こういった基本的な部分はお願いしていきたいと思います。
また、マスクの取扱いについて、私自身、県内外で皆さんの状況を拝見しておりますが、福島県の方は、比較的マスクを付けて、感染対策を相当徹底されながら活動されている方もおられますし、例えば屋外を歩いているときなどは外して、笑顔で歩いている方もおられ、人それぞれ自分自身の中での感染対策を継続していただいているかと思います。
最近、開校式、入学式等に行っておりますが、やはり生徒さんも比較的マスクを付けている方が全体としては多いという印象がございます。ただ、個人の判断に委ねられている状況でありますので、自分自身が気を付け、個人の判断を大事にしながらマスクの着脱を続けていただくことが重要だと思いますし、特に、付けている・付けていないからといって、差別偏見ということは決してあってはいけない。今ある意味その両立が徐々にでき始めているかなということを考えております。
いずれにしても、まだ新型コロナウイルスがなくなったわけではありませんので、基本的な感染対策の確認ということを、福島県としてこれからも継続してお伝えしていきたいと思います。
(終了)
○質問事項
1 ドイツ連邦共和国環境大臣の来県について
→生活環境部国際課 電話024-521-7181
(欧州訪問について)
→商工労働部次世代産業課 電話024-521-8047
(脱原発について)
→企画調整部エネルギー課 電話024-521-7814
2 ALPS処理水の処分について
→危機管理部原子力安全対策課 電話024-521-7252
3 新型コロナウイルス感染症について
→新型コロナウイルス感染症対策本部(総括班) 電話024-521-7262