【質問事項】
1 東日本大震災及び原発事故から5年半を迎えたことについて
2 県民健康調査について
3 加藤紘一元議員について
4 東北中央自動車道について
5 農林水産物等の風評払拭について
【記者】
昨日で震災から5年半を迎えました。知事はよく「光と影」とおっしゃいますが、5年半の段階で、知事にとって影はどのような部分で、その影を払拭するためにどのような行動をしていきますか。
【知事】
東日本大震災、原発事故の発生から5年半という長い月日が経ちました。この間、福島県は復興に向かって着実に前進していると思います。ただ、そういう中でも、特に原子力災害の影響等もあって、福島県にはまだまだ重い課題がたくさんあります。例えば、今なお福島県内に避難区域が存在しています。一部の区域では、まだ帰還の見通しが立たないという現実もあり、9万人近い避難者の方がおられるというのも厳しい現実です。加えて産業の一部においては、震災後まだまだ本来の状況に戻っていない産業もありますし、さらに風評・風化の問題は避難区域だけではなく、福島県全体の問題でもあります。こういった様々な課題をどう払拭し、これから復興に向けて明るいニュースを増やしていくかということがこれからの重要な課題だと受け止めております。
【記者】
避難者がまだまだ9万人近くいるということですが、中には避難指示区域外から避難している方々がいます。そういう方々からは「国や県への不信感が拭えなくて、例え放射線の数値が安全でも、中々帰れない」という声を聞きます。そういった方々に対して、どのように不安を払拭していこうと考えていらっしゃいますか。
【知事】
福島県の放射線の問題、原発事故からの放射能の問題は、非常に難しい問題だと思います。リスクコミュニケーションの議論も様々ありますが、何か一つ絶対的な正義・真実があって、それ以外が間違っているとか、これだけが正しいとか、そういうものではないのだと思います。それぞれの立場で、それぞれの考え方というものが並列しているというのが、今の福島県の内外の現状だと思いますので、やはり私たちにできるのは、今ある事実、データをきちんと出していくこと、そして、科学的・客観的な見解を多くの方々に頂きながら、それをまた表に出していくこと、そういう中で一つ一つ丁寧に御理解を頂いていくしかないと考えております。
【記者】
最初の質問で、震災5年半ということで、知事から「復興は着実に進んでいる」という言葉がありましたが、一方で避難指示が解除された地域では、学校に子どもが戻っていないという現状があります。子どもがいない自治体は将来の見通しが厳しいというのが全ての人の共通認識だと思うのですが、知事としてどのように子どもたちを戻していくのか、自治体を継続させていくために何か妙案があればお願いいたします。
【知事】
今頂いた御質問で、妙案ということについてお答えすると、残念ながら妙案や特効薬があるわけではありません。正に御指摘のとおり、避難指示が解除され既に3年、4年経っている自治体や、まだ1年という自治体もありますが、いずれも子どもたち、特に義務教育の年齢のお子さんたちが震災前に比べて中々戻りきらない。そして、少人数の学校運営で苦慮しているという現状を私自身が生で体験し、実感しています。
大きな方向性としては2つあると思います。まず、元々住んでおられた住民の皆さんに、できるだけ若い世代も含めて戻っていただくような努力をすること。それには、安全・安心の確保は当然、大前提ですし、その地域ならではの教育というものが出来て、子どもにとって非常にプラスになるということが実感できるような教育形態を関係自治体と共に作り上げていくことがまず重要だと思います。
そしてもう1点は、一部の自治体で始めてますが、外から入って来られる方もいます。いっぺんに増えるものではありませんが、そういった方々の人数を少しずつ増やして、そして新しい家族が増えて、子どもたちの声が増えてくる、その内外の取組を同時に進めていくことが重要だと考えております。
【記者】
今年は避難指示が解除された地域もあって、来春までには帰還困難区域以外は全て解除を目指していると思うのですが、解除への動きが鮮明になってくると、例えば、すぐに戻ろうとか、これから戻ろうと前に向かって進もうという住民の方々と、まだ到底戻れないという方々との間に、心の溝みたいなものができてくると思います。そのあたりは町も当然考えないといけないのですが、町は町内の復興で手一杯だと思います。こういったところで県として何か対策を打つお考えはありますでしょうか。
【知事】
避難指示区域の皆さん、まだ解除されていない地域、解除される地域、解除された地域、それぞれ色合いは異なりますが、いずれも国の法律・制度に基づいて強制的に避難された方々です。そういう意味で、その方々が5年半という年月の中で、それぞれの避難先で一定の暮らしを持って落ち着いておられる。当然、ふるさとへの思いは持っていても、すぐに帰られる方ももちろんおられますが、近々という方、まだちょっと目途がつかない、あるいは帰らない、いろいろな御判断があります。そういった判断がそれぞれあって当然だと思います。その前提の中で、各自治体は帰還政策を一生懸命進めたい、これを是非応援していきたいと思います。ただ、避難指示解除イコール直ちに帰還ということではありません。したがって、国、県、自治体合わせて、当分の間まだ戻られない方に対するサポートをどうするかが、引き続きこれからの焦点になってきます。与党の第6次提言にも、そういった文言がありますし、また先ほど、歪みのお話を頂きました。全くそのとおりだと思っています。先般、国に対して私から話をした際にも、区域を解除する解除しない、あるいは除染する箇所としない箇所という形でどうしても歪みが出てしまうので、それが薄くなるような配慮、対応をして欲しいという話をしました。時間的に全部を一斉にというのは中々難しいので、どうしても段階があるのはやむを得ないのですが、段階があるからこそ出てしまう歪みをゼロにするのは中々難しいと思いますが、どうやって減らすことが出来るかということを常に意識して施策として考えていく、これが重要だと考えております。
【記者】
5年半に関連して、原発の現状についての所感をお伺いします。先日からの台風や壁パネルの取り外しといったことに対して、5年半というところの今の所感をお願いします。
【知事】
5年半経ちまして、原発のオンサイト、敷地内の状況は大きく変貌したと思います。当初は、東京電力の職員の言葉を借りますと、戦場かと見間違えるほどの非常に厳しい状況で、作業環境がとても整っているとは言えない状況でした。それから5年半が経って、今の東京電力第一原発、非常に多くの方が視察に訪れていますが、皆さん一様に、「こういった環境が整ったんだ」と驚かれています。そういう意味でこの5年半の第一原発の事故収束への取組は前に進んだと思います。具体的に言いますと、パネルの取り外しや使用済み燃料の取り出し、あるいは汚染水対策で海側遮水壁、凍土遮水壁、サブドレン、地下水バイパス等々、様々な手立てがある程度打てたという点では前進だと思います。ただ、これは実はまだ入口です。残念ながら本当の意味での廃炉に向かっては長い期間かかりますし、喫緊の課題と言われている汚染水対策も凍土遮水壁の状況はまだまだ不安定という現実もありますので、そういう意味で喫緊の課題に対しても、長期の対応に対しても、まだまだこれからという現実があろうかと思います。安全に着実に東京電力第一原発の廃炉を進めていくことが福島県民のみならず、日本国全体にとって非常に重要な課題であると思います。これからも国、東京電力は責任を持って、世界の英知を結集して廃炉対策に取り組んでいただきたいと考えます。
【記者】
ここ最近、県民健康調査の関連で、非常に動きがございまして、医師会では過剰診断ということで縮小を求める傾向と、家族会からは拡充を求める動き等、いろいろあります。知事としては、今後見直しに着手するという話も出ておりますが、この一連の動きについて一言お願いします。
【知事】
甲状腺検査の在り方について、今、御指摘いただいたように、様々な方々の立場からそれぞれの御意見を頂いているところです。大切なのは、引き続き検討委員会において議論をお願いしていくとともに、県民や様々な関係者の方々、あるいは専門家の御意見を参考にしながら、福島の子どもたちの健康をしっかりと守っていくという観点に立って、県としての対応を考えていきたいと思います。
【記者】
子どもたちの健康のためということで、当然、県だけではなく、国や東電の責任等もあると思うのですが、知事自身は拡充させたいとか、そういう考えについてはどうでしょう。
【知事】
私自身の考えは今ほど申し上げたとおりですので、今後も検討委員会の御意見を伺いながら、また様々な立場の方々の御意見も踏まえながら、考えを整理していきたいと思います。
【記者】
加藤紘一元議員が亡くなられました。政治家の先輩として、また官僚の先輩として、コメントをお願いします。
【知事】
加藤先生とは直接は面識がないものですから、コメントする立場にはないのですが、一代を築かれた政治家であり、また隣県の山形県の御出身ということもありますので、亡くなられたことに対して、心から哀悼の意を表したいと思います。
【記者】
東北中央道の一部開通ということで、昨日式典もありましたが、一部開通の効果をお話しいただければと思います。
【知事】
昨日、東北中央自動車道の福島ジャンクションから大笹生インターチェンジ間の一部区間が開通いたしました。長年、福島県にとっての一つの重要な目標でしたので、こういった形で開通できたことを本当にうれしく思いますし、今後の進捗についても一定の方向性が見えております。来年以降の新しい区間の開通に向けて、関係者の皆さんと一緒に工事等を進めていきたいと思います。今回、あの地域において、インターチェンジやジャンクションができるということは、地域経済の活性化や、新しい物流の流れ、また浜通りと中通りとの関係をつなぐという意味でも非常に重要であると考えております。
今後、相馬福島道路、これも今非常に、著しいスピードで工事が進んでおりますが、福島県全体の道路軸というものを造り上げながら、福島の復興、地方創生に資するように取り組んでいきたいと考えております。
【記者】
震災から5年半に関して、風評・風化の点についてお伺いしますが、風評被害、特に農林水産物を中心とした風評被害は、放射能が怖いということもありますが、最近、特にJAなどから、外食や食品メーカーからの買い叩きといっては言葉が悪いのですが、非常に低価格というのが固定化されてしまっており、そこが問題だというような声も聞こえます。そういった点を払拭し、元に戻していくために、知事としてはどのような対策が必要だと考えておられますか。
【知事】
御指摘ありましたとおり、風評対策は非常に重層的な構造になっていると思います。
実際の消費者である国民お一人お一人の風評を払拭することも重要ですし、一方で、消費者の皆さんは我々から直接買うわけではなく、途中のいろいろな流通段階でお買い上げになります。したがって、流通というものをきちんと御理解いただくこと、福島県の産品を棚に置いていただき、積極的に販売していただくことも重要な風評払拭の一歩になっていくと思います。私自身、トップセールスを幾度もしておりますが、実際に事業者や販売されている方々に直接お会いして、我々がどういう取組、安全対策をしているかについて客観的な事実を御説明したり、また美味しさを訴える中で、一歩ずつ御理解いただいているところです。
また、距離との関係もあります。比較的距離の近い方は、この5年半の中で、ある程度、御理解いただいたという実感もあるのですが、少し距離が離れると中々そうはいかないという現実もあります。したがって、まず各地域の関係業者の方々に、我々自身が様々な機会で接触して、御理解を頂いて、適正に取り扱っていただけるような努力を重ねていきたいと思います。
【記者】
価格自体はそういった取組によってまた元に戻る見込みがあるのか、それとも一度下がってしまった価格をもう一度引き上げるのは相当難しいのか、実感としてはいかがでしょうか。
【知事】
率直に言って簡単ではないと思います。ただ一方で、例えばきゅうりの価格など、福島県の農産物は、震災前に比べて一時大きく落ち込みましたが、その後の様々な努力の積み重ね、あるいは他の産地との関係もありますが、結果として震災前と同じレベルに戻っているものもございます。したがって、できないと言って諦めることなく、今あるその差を詰めて、さらに言えば、福島県産品は品質、美味しさともに非常に優れていると自負しておりますので、より高くなるように努力を続けていくことが何よりも重要だと考えております。
(終了)
【問い合わせ先】
1 東日本大震災及び原発事故から5年半を迎えたことについて
→ 企画調整部企画調整課 電話024-521-7129
→ 避難地域復興局避難地域復興課 電話024-521-8435
2 県民健康調査について
→ 保健福祉部県民健康調査課 電話024-521-8219
3 加藤紘一元議員について
→ 総務部政策調査課 電話024-521-7018
4 東北中央自動車道について
→ 土木部高速道路室 電話024-521-7885
5 農林水産物等の風評払拭について
→ 農林水産部農産物流通課 電話024-521-7371
→ 総務部広報課 電話024-521-7124