「福島県版ユニバーサルデザイン実現への提案」第2章1-3 移動しやすいまち
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福島版ユニバーサルデザイン実現への提案
第2章 ユニバーサル・デザインを生かした県づくり
1 生活者(利用者)のための環境づくり
(3)移動しやすいまち
人は、買い物、映画、知人の家などには、自由な時間に、気軽に行きたいものです。外出すること(出かけること)は、気分を新たにし、生活に張りを持たせてくれます。移動することは、人の本質的な欲求であり、基本的な権利といえるでしょう。すべての人が移動しやすい環境が、さまざまな人が集ういきいきとしたまちをつくります。
〈だれもが外出できる手段の確保〉
車、バス、電車などは移動の手段ですが、一人で乗り降りができない、家から停留所まで歩いていけない、段差やホームの階段を上れないなどの理由で、外出をあきらめざるをえない人がいます。むしろ、文明の利器である乗り物は、こうした人たちにこそ必要だったはずです。 このような反省から、最近では、体力が弱い人や車いすの人でも乗り降りしやすい車が一般車として販売され、スロープ付きの低床バスの導入や駅のエレベーター設置などが促進されるようになってきました。 ここで気づかされることは、交通手段のユニバーサル・デザイン化は、高齢者や障がいのある人だけでなく、病気、けが、妊娠、それに幼児や重い荷物を抱えている人にとっても、とても利用しやすくなるということです。交通事業者は、利用者の拡大にもつながるユニバーサル・デザイン化に積極的に取り組んでいくべきです。
〈移動の連続性の確保〉
人が外出してから帰宅するまでの間、乗り越えられない段差が一か所でもあれば、自力での外出は不可能です。停留所までの歩道、停留所、駅前などの乗り換え箇所、目的の商店街や公共施設などの障壁がすべて取り除かれ、移動の連続性が確保されてはじめて、だれもが外出しやすいまちが実現します。 もちろん、まちじゅうの段差を取り除くのは不可能に近いでしょう。ヘルパーや隣人による外出支援、運転手などの介助、通行人による手助けなど、人手による支援のしくみや意識づくりも必要になりますが、特別な対応はできる限り小さくするのが、ユニバーサル・デザインの考え方の基本です。すべての人が自分で移動できるような環境づくりを目標に、地域の住民、商店街などの団体、交通事業者、行政などが互いに協力しあって取り組んでいくことが大切なのです。
〈モデル地域の設定〉
現状において移動のユニバーサル・デザインを達成するには、多くの課題があります。そこで、モデル地域を設定し、交通事業者はもちろん、行政、商店街その他の公共・公益施設の設置者、福祉団体、地域住民などが一体となって協議会をつくり、できることから着手してみることを提案します。 例えば、県立病院と主要駅及び周辺の市街地を選び、高齢者や障がいのある人などが、自宅を出てから通院や買い物などの用事を済ませて帰るまでの安全、安心な外出を目標にします。バス・電車・タクシー・道路・建物間の円滑な移動はもちろん、バスの路線案内・料金システムは複雑すぎないか、病院内の誘導表示・受診の手順はわかりやすいか、まちなかのベンチやトイレは不足していないか、駅や公共・公益施設の誘導表示や利用しやすさに問題はないかなどをチェックし、関係機関や関係者が協調して一つ一つ改善を試みます。現段階における物理的な手段やしくみだけでは解決できない部分や障がいの程度などにより対応が難しい課題については、目標年次を決め、人的な支援のしくみを工夫し補います。 こうして、改善を積み重ねてつくられたまちは、高齢者などに限らず、だれもが出かけたくなる、安全、安心、快適で魅力のあるまちになるはずです。モデル地域の取組みは、他の地域にも波及することでしょう。
〈山間地などでの取組み〉
山間地などでは、通学や生活の足の確保が重大な課題になってきています。交通事業者には、利用しやすい料金システムや路線の設定、低床バスの導入や観光誘客に結びつく工夫など、路線の維持や利用拡大に向けたあらゆる営業努力を求めるものですが、一方では、地域の住民や自治体などが、自分たちの利用しやすい生活の足を、自分たちで創り出す取組みが必要になってきています。 それぞれの地域で、役場などが持つ小型バスの活用、タクシー会社との提携、商店街と連携した100円で乗れるワンコインバスなど、さまざまな取組みを検討する必要があります。小高町で行われている「おだかe(いい)ーまちタクシー」(※下に説明があります)などの事例を研究するほか、地域の特性を踏まえながら、例えば、自然豊かな山あいの街では、観光客などの外来者の移動や利用のしやすさを目標において取り組んでみることなどを提案します。
【本文中の説明】
- おだかe(いい)まちタクシー 平成13年6月から町商工会が試験的に運営しています。タクシー会社と契約した車両が町民からの電話予約に従って運行コースごとに効率よく配車され、定額の乗合料金で利用できるようになっています。 戻る