「福島県版ユニバーサルデザイン実現への提案」第2章1-5 活力ある街
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福島版ユニバーサルデザイン実現への提案
第2章 ユニバーサル・デザインを生かした県づくり
1 生活者(利用者)のための環境づくり
(5)活力ある街
街には、さまざまな人が集まり、出会いと交流が日々繰り返されています。人々の多様な個性がふれあい、それぞれの街独特の雰囲気や文化がかもしだされます。人が集まることで、利便性も集積されてきましたが、今日、車の普及に伴う生活や行動の変化などによって、中心市街地の活力が急速に低下してきています。ユニバーサル・デザインの考え方で、街の活力が取り戻せないでしょうか。
〈車中心社会の見直し〉
街の活力は、車が集まることではなく、人が集まることで生まれます。人が集まるためには、訪れやすく、歩きやすい環境やしくみをつくることが必要です。街の主人公は「人」です。「人」を中心にしたユニバーサル・デザインの考え方で、街づくりをもう一度とらえ直してみることが必要です。 だれもが訪れやすくするには、バスなどの交通機関の車両や運行のシステムを、「(3)移動しやすいまち」で述べたように、高齢者などにも利用しやすいものにする必要があります。歩きやすくするには、歩道や公共・公益施設の段差解消はもちろん、休憩スペース、トイレなどの快適性向上が必要です。そのうえで、車を中心市街地に乗り入れなくてもよい(歩いて買い物などをすることが楽しい)しくみを考える必要があります。 イギリスなどで定着しているタウンモビリティは、一つの参考になります。
〈タウンモビリティの導入〉
タウンモビリティ(ショップモビリティ)は高齢者などが街や商店街、ショッピングセンターを歩く足代わりとして、電動スクーターを活用するしくみです。貸し自転車のように、公共駐車場やバスターミナル、商店街などに隣接して貸出所を設け、車、バス、タクシーから降りてすぐに、安価で利用できるようにしておきます。その運営や、走行環境の点検を通して、ボランティアによる外出支援のしくみづくり、段差の解消、歩道や通路の改善など、ユニバーサル・デザインの取組みが進むことになります。二酸化炭素の削減にもつながります。楽しく利用できる雰囲気をつくるため、貸出所には案内コーナー、トイレ、休憩所、外出支援のボランティアセンターなどを設けることも考えられます。なお、電動スクーターは、高齢社会における移動手段として、違和感なく使えるような工夫を含め、普及に向けた研究を進める必要があります。
〈人間サイズの街〉
車社会の感覚ではなく、「人」の感覚を基本にして、街を見直す必要があります。商店主、住民、専門家などが一緒に街を歩くワークショップを開いてみるのも一つの方法です。案内表示、歩道や公共・公益施設の段差、通路をふさいだり通行に危険な看板などをチェックします。高齢者や障がいのある人、子育て中の人などに参加してもらえば、普通に歩ける範囲の限界やトイレ、ベンチ、休憩所、情報案内の不足などにも気がつくでしょう。商店の人も利用者の目で街を見直すことになります。歩道の触感、音、におい、色彩、景観など、街を「人」の五感で感じることになります。
〈美しい街〉
私たちは、街では、商店街をはじめ公園、広場、街路、公共・公益施設などの公共空間に、やすらぎや美しさを求めています。もちろん、防災、防犯上の安全、安心が前提です。こうした美しい街をつくるため、住民も、自らが街づくりの主人公として、計画づくりはもちろん、清掃や花いっぱい運動などの美化活動や地域活動に主体的に参画していく意識が大切です。また、行政や商店街などの事業者は、住民が参加しやすいしくみをつくる必要があります。