ふくしま尾瀬のまち
<檜枝岐村 編>

山で採れた良質な黒檜を村名の由来とする檜枝岐村。日本一人口密度が低い村としても知られ、約500人の村人は自然の恵みを享受しながら穏やかな暮らしを送っています。
檜枝岐村は尾瀬国立公園の玄関口となるため、春から秋にかけてはたくさんの登山者でにぎわい、冬が訪れると雪深い山里の温泉地として旅人の郷愁を誘います。伝統料理「山人料理(やもーどりょうり)」や、郷土芸能「檜枝岐歌舞伎」といった、檜枝岐村ならではの文化も色濃く根付き、心温まる村人たちのもてなしも相まって、「ただいま」と何度も足を運ぶリピーターが多いそうです。

立地・気候

檜枝岐村があるのは奥会津の最果てとなる、福島県の西南端。日本百名山の燧ケ岳や会津駒ケ岳といった雄大な山々に囲まれ、390.46平方kmの面積のうち約98%を林野が占めるほど、豊かな自然に溢れています。標高1000m近い高冷地のため夏場でも過ごしやすく、清らかな檜枝岐川沿いの森の中にあるキャンプ場は、年々注目度が増しているとか。
例年約2mのパウダースノーが降り積もる特別豪雪地帯でもあり、尾瀬檜枝岐温泉スキー場はスキーヤーの穴場スポットとして人気を集めています。

歴史を紐解くと、794年に藤原金晴が邑長になったという記述が村に残る最初の記録ですが、土器や石器等の出土品も多く、縄文時代から人々が居住していたと推定されます。その後、江戸幕府直轄領地時代を経て、1889年の市町村制施行により伊南、大川村との組合村となり、1917年に「檜枝岐村」として独立しました。
また、住民の9割の姓が「星」、「平野」、「橘」の3つであることから、檜枝岐村が落人の隠れ里であった歴史も窺い知れます。
1200年前に平安京遷都の権力争いに敗れた藤原一族(「星」は郷里の「星の里」から命名)が、800年前に源平合戦に敗れた平家の末裔が、400年前に戦国時代の戦いに負けた伊勢の楠氏(「橘」は姓)がこの地に移り住み、似た境遇である者同士、力を合わせながら生き抜いてきたのでしょう。その強く優しい人々の心は、現在の檜枝岐村にもしっかりと息づいています。

写真光り輝く雪に彩られた会津駒ヶ岳

特産品

写真

1年の半分近くが雪で覆われる冷涼な高地のため、檜枝岐村では米を栽培することができません。ゆえに米の代わりに蕎麦を育て、山で山菜やきのこを採取し、熊や鹿を撃ち、川でイワナやヤマメを釣るなどして、先人たちは暮らしを成り立たせてきました。そこで活躍したのが山仕事をする男性=「山人(やもーど)」。山人は蕎麦粉、雑穀、酒、味噌、塩をもって山に入り、狩猟をしながら山中で採れる食材で空腹を満たしていたといいます。
檜枝岐村の伝統料理「山人料理」は、そんな山人から名付けられたもの。村で日常的に食されていた蕎麦や山菜、川魚などを用いた料理を、山人料理として観光客に提供し始めたそうです。
つまり山人料理とは、檜枝岐村で採れた食材だけを用いた料理の総称。打ちたての十割蕎麦、川魚の塩焼きや刺身、山菜や山椒魚の天ぷら、蕎麦粉の皮に旬の具を詰める「焼き餅」、貴重だったうるち米を餅のようにした「ばんでい」など、春夏秋冬の食材を活かした素朴で贅沢なご馳走です。
檜枝岐村の旅館や民宿の夕食としていただけるので、ぜひ宿泊をして山人料理をご堪能ください。

写真山人料理(イメージ)

観 光

尾瀬国立公園での登山をはじめ、グリーンシーズンのキャンプや渓流釣り、スノーシーズンのスキーやスノーシュートレッキングなど、檜枝岐村は四季を通じて自然を堪能できるアクティビティが充実しています。とはいえ「体力に自信がないけれど、尾瀬の雰囲気を体感したい」という方もいるでしょう。そこでうってつけなのが「ミニ尾瀬公園」です。
ここは尾瀬国立公園の魅力を凝縮したかのような植物園で、3つのエリアごとに尾瀬の季節の花々が咲き誇ります。尾瀬国立公園より標高が低い場所に位置するため、ひと足先に見頃を迎えるのもポイント。木道・遊歩道が整備されているので、車椅子の方やご年配の方でも安心してお楽しみいただけます。
さらに尾瀬の自然をダムや道路開発から守り、“尾瀬の父”と呼ばれた植物学者の武田久吉氏の意志を継ぐ「武田久吉メモリアルホール」や、檜枝岐村を愛した書家・丹治思郷氏の作品を展示する尾瀬書美術館「思郷館」 、尾瀬を撮り続けた山岳写真家・白籏史朗氏の作品を所蔵する「尾瀬写真美術館」も併設しており、尾瀬の歴史やアートにも触れられます。

ミニ尾瀬公園ミニ尾瀬公園内:ロックガーデン

ミニ尾瀬公園湿原エリアで咲くニッコウキスゲ(7月頃)

■ミニ尾瀬公園
・住所 福島県南会津郡檜枝岐村左通124-6
・営業時間
‐公園 9:00~17:00(11月中旬~翌4月下旬は休園)
‐カフェ 9:00~16:00(水曜定休/夏休み期間は無休、冬季休業)
‐武田久吉メモリアルホール 9:00~17:00(11月中旬~翌4月は休館) 入館料:無料
‐尾瀬書美術館「思郷館」 9:00~17:00(最終入館16:00)(水曜休館/11月中旬~翌4月は休館) 入館料:無料
‐尾瀬写真美術館 9:00~17:00(最終入館16:00)(水曜休館/11月中旬~翌4月は休館) 入館料:無料
・問い合わせ 0241-75-2065
https://www.oze-info.jp/ozh_shop/miniozepark/

自 然

檜枝岐村の自然といえば、やはり「尾瀬国立公園」。尾瀬は険しいルートが多いと思われる方もいるかもしれませんが、檜枝岐村の沼山峠入山口から入る尾瀬沼コースは、初心者に優しく尾瀬の魅力を存分に感じられます。
最短約40分で辿り着く大江湿原は、ニッコウキスゲやワタスゲの群生地として名高く、「花の湿原」とも称される人気のエリア。大江湿原を抜けると尾瀬沼が姿を現し、燧ヶ岳を望むこともできます。
尾瀬沼の周囲約7kmには木道が敷かれ、3時間程度でぐるりと一周することも可能です。気軽にトレッキングを楽しめるコースなので、檜枝岐村ないし尾瀬の季節の移ろいを全身で味わうべく、シーズン中に何度も訪れてみるのもオススメです。


写真尾瀬沼から望む燧ヶ岳

文化・伝統行事

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江戸時代から続く「檜枝岐歌舞伎」は、檜枝岐村を象徴する郷土芸能です。明確な記録はないそうですが、村人が伊勢神宮へ参拝した折、上方や江戸で見聞きした歌舞伎を見よう見まねで演じたのが始まりだとされています。その昔は村に戻った山人を出迎える、慰安のための娯楽として演じられていたとか。
浄瑠璃本を参考にしたり、歌舞伎役者から教えを乞うなど、独自に発展を遂げた歌舞伎は代々受け継がれ、1999年に福島県の重要無形民俗文化財に指定されました。

現在、檜枝岐歌舞伎を演じるのは、1922年に当時の村長・星愛三郎氏が村民とともに立ち上げた千葉之家花駒座。鎮守神社の境内に建つ国の重要有形民俗文化財「檜枝岐の舞台」で、毎年5月12日の愛宕神祭礼と8月18日の鎮守神祭礼に奉納歌舞伎、9月の第1土曜日に観光客を対象とした公演「歌舞伎の夕べ」が上演されています。

・住所 福島県南会津郡檜枝岐村居平670 鎮守神社境内
・料金 公演により異なります
・問い合わせ 0241-75-2432
※問い合わせ先は尾瀬檜枝岐温泉観光協会になります。
https://www.oze-info.jp/

写真石段の観客席から鑑賞する檜枝岐歌舞伎

温 泉

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旅館や民宿はもちろん、各家庭にまで温泉が給湯されるほど、檜枝岐村は豊富な湯量に恵まれた土地。村内には3つの公衆浴場があり、すべての浴場が男女別で、内湯と露天風呂を備えています。
まず「燧の湯(ひうちのゆ)」は源泉かけ流しの単純硫黄泉を堪能できる村自慢の浴場。内湯は檜造りで、露天風呂からはブナの森と舟岐川の美しい景色が眺められます。
「駒の湯(こまのゆ)」もファンの多い浴場です。檜枝岐川に面しているため解放感たっぷり。肌に優しいアルカリ性単純泉が、身体と心を癒します。
「アルザ尾瀬の郷」はプールと温泉が楽しめる総合温泉スポーツ施設。道の駅「尾瀬・檜枝岐」と同じ敷地内にあるので、食事やお土産の購入もあわせてどうぞ。

■燧の湯
・住所 福島県南会津郡檜枝岐村上ノ台208-1
・営業時間
 平日13:00~20:00(最終受付 19:30)
 土・日曜・祝日 6:00~20:00(最終受付 19:30)
※12月30日~1月3日の営業時間 6:00~20:00(最終受付 19:30)
・定休日 火曜(2024年11月25日~2025年4月25日の間)
・問い合わせ 0241-75-2290
https://www.oze-info.jp/ozh_spa/hiuchinoyu/
■駒の湯
・住所 福島県南会津郡檜枝岐村下ノ原839-1
・営業時間 15:00~20:00(最終受付 19:30)
・定休日 水曜(1月1日(水)は 15:00~20:00まで営業(最終受付 19:30))
・問い合わせ 0241-75-2655
https://www.oze-info.jp/ozh_spa/komanoyu/
■アルザ尾瀬の郷
・住所 福島県南会津郡檜枝岐村字見通1156-1
・令和7年4月25日まで冬季休業中
・問い合わせ 0241-75-2200
https://www.oze-info.jp/ozh_spa/aruzaoze/

写真露天風呂からは雪景色も楽しめる(燧の湯)

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