2000年版 福島県年次経済報告書
印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月1日更新
2000年版 福島県年次経済報告書
2000年版 福島県年次経済報告書(概要)
1 福島県経済の概況
- 平成11年の本県経済は、各種の政策効果もあって後退のテンポが徐々に弱まり、国内経済同様、極めて緩やかながら最悪期を脱し始めた。
- 今回の不況から早急に脱して、本県経済の一刻も早い活力回復を図るため、県では政府の経済対策と相まって、前年度に引き続き切れ目ない各種の景気浮揚対策を積極的に講じ、対応を進めたところである。
- 景況を分野別にみると、まず、消費面では、大型小売店販売額(店舗調整後)が百貨店、スーパーを問わず、年間を通して前年を下回る低調な動きとなった反面、乗用車新規登録台数が規格改訂を受けた軽自動車の大幅な伸びを背景に前年を上回るなど、消費の抑制が続くなか、消費者ニーズに変化が現れた形となった。
- 生産面では、年央にかけて多くの業種で在庫調整が進むとともに、本県の主力産業である電気機械工業の生産が改善基調に転じた結果、鉱工業生産指数(総合)も前年を上回るものとなった。
- しかし、その他の産業においては、依然として生産が低迷し、設備投資も完全に冷え込んだままであるなど、鉱工業全体では長期停滞をなかなか抜け出せない状況が続いた。
- 雇用面では、企業倒産が前年を大きく下回ったが、企業におけるリストラ(事業再構築)が引き続き進行し、一時は有効求人数と有効求職者数の乖離が高止まりする月が続くなど、近年では最悪の雇用環境に陥った。
- 以上のとおり、本県経済は、年後半から生産活動が前年を上回る基調に移行したが、力強さに欠けるものであり、消費面や雇用面も低水準の状況で一年を終えることとなった。
2 各種統計データの動き
- 個人消費
- 大型小売店販売額は、2年連続の前年割れとなり、店舗数の減少も進んだ。⇒ 主力商品である百貨店の衣料品、スーパーの飲食料品が引き続き落ち込んでいる。⇒ 販売額低迷の背景には、個人消費のみならず法人需要の落ち込みもあるが、他の種別の小売店への消費者のシフトも著しくである。
- 乗用車新規登録台数は、3年振りに前年を上回った。⇒ 前年を上回ったのは、新規格に改訂された軽自動車の大幅な伸びによるものである。⇒ 軽自動車の躍進は、大型車、中型車、小型車の販売低迷であり、消費者ニーズの変化を示している。
- 物 価
- 国内卸売物価指数(総平均)は、2年連続して前年を下回った。⇒ バブルの崩壊後、低下基調にある。⇒ 工業製品は、10年2期以降前年を下回り続けている。
- 福島県消費者物価指数(総合)は、12年振りに前年を下回った。⇒ 10年9月の災害発生から始まった生鮮食料品の高騰が、11年末にかけて収まったことが前年を下回った原因の一つとしてあげられるが、消費低迷の影響もある。
- 家 計
- 実収入と可処分所得は、名目、実質とも前年を下回った。⇒ 実収入は、世帯主、世帯主の配偶者の収入とも前年を下回った。⇒ 賞与は、夏季は上回ったものの、冬季は下回った。
- 消費支出は、名目、実質とも2年連続して前年を下回った。⇒ 消費支出の動きを10大費目別にみると、食料、光熱・水道、被服及び履物で昨年に引き続き抑制が行われている。
- 平均消費性向は前年を上回り、平均貯蓄率は前年を下回った。⇒ 先行き不安から、消費を切り詰め、貯蓄に回す行動に変化はないが、収入の低迷から平均消費性向は上回り、平均貯蓄率は下回ったと考えられる。
- 建設需要
- 新設住宅着工戸数は、3年連続の前年割れとなった。⇒ 落ち込みの主原因は、種類別には貸家、資金別には民間資金住宅の不振である。⇒ 持家が前年を上回ったのは、10年中の住宅金融公庫基準金利の低下が融資受付件数の増加につながり、その着工が11年にずれ込んだことによるものである。
- 業務用建築物着工棟数は、減少基調にある。⇒ 鉱工業用、商業用、サービス業用とも前年を割り込んだが、四半期別にみると鉱工業用に変化が見られる。
- 公共工事請負金額は、前年を大きく下回った。⇒ 10年度の景気対策として実施された大型補正や災害復旧工事の反動が出たものである。
- 生産活動
- 鉱工業生産指数は、前年を多少上回った。⇒ 四半期別にみると、第2四半期以降は前年を上回っている。これは電気機械がいちはやく回復したことによるものであるが、回復への動きには業種間で格差が生じている。⇒ 財別でみると、建設需要や企業設備投資の低迷を反映し、投資財が落ち込んでいる。
- 鉱工業出荷指数は、前年を上回った。⇒ 四半期別にみると、生産指数同様、第2四半期以降は前年を上回っている。これは電気機械、食料品・たばこなどが前年を上回ったことによるものである。⇒ 財別でみると、消費財は耐久、非耐久とも堅調であるが、生産指数同様、投資財が落ち込んでいる。
- 鉱工業在庫指数は、4年連続して前年を上回った。⇒ 11年は、第2四半期を除き前年を上回る動きとなっている。これは電気機械がIT関連需要に応えるため在庫を増加させていることによるものである。⇒ 財別でみると、鉱工業用生産財で大きく在庫を増やしている。
- 在庫循環をみると、在庫積み上がり局面(景気後退初期)に達している。⇒ 11年第1期には在庫調整局面(景気後退期)にあったが、2期には在庫積み増し局面(景気拡大期)に入り、3期、4期には在庫積み上がり局面(景気後退初期)に入った。⇒ 各業種で在庫の調整が進行していることと、電気機械での在庫増が主な原因である。
- 大口電力使用量は、前年を上回った。⇒ 生産の動き同様、第2四半期以降は前年を上回っている。⇒ 契約量は、第2四半期以降は前年を下回っており、過剰生産設備の整理の進行がうかがわれる。
- 雇用・労働
- 新規求人倍率は、前年度を多少上回ったものの、2年連続して1.0倍を割り込んだ。⇒ 10年3月から12年2月までの2年間、1.0倍を下回り続ける結果となった。⇒ 業種別新規求人数の寄与度をみると、全業種でプラスに寄与しているが、中でもサービス業の寄与が大きい。
- 有効求人倍率は0.53倍(前年同)で、極めて厳しい水準にある。⇒ 年後半にかけて、極めて緩やかな改善を見せたが、依然、有効求職者数は高止まりの状況にある。
- 常用雇用指数は、前年を下回った。⇒ 男女とも、パートタイム労働者比率が上昇している。
- 所定外労働時間指数は、2年連続して前年を下回った。⇒ 11年第2四半期をボトムにマイナス幅を縮小する動きに転じている。
- 雇用人員判断DIをみると、過剰感は依然として高いレベルにある。⇒ 製造業は過剰感を急速に減らしているが、非製造業は緩やかな改善に止まっている。⇒ 新事業の創出や開業率の向上による、雇用機会の創出が重要である。
- 金 融
- 金融機関預金残高は、前年を上回った。⇒ 11年2期以降2%超の伸びを維持した。これは、個人、企業とも、消費や投資を圧縮し、預金に振り向けた結果である。
- 金融機関貸出・貸付残高は、前年を下回った。⇒ 前年比の動きをみると、民間はマイナス基調のままである。一方、政府系は前年を上回っているものの、プラス幅は縮小させている。⇒ 消費低迷が企業の設備投資を抑制し、その結果、資金需要を低下させている。
- 貸出約定平均金利は、低下を続けている。⇒ 企業の設備意欲は依然低調で、資金需要の低下傾向に変動がない。
- 企 業
- 企業倒産は、件数は前年を下回ったものの、負債総額は前年を上回り戦後最悪を更新した。⇒ 倒産件数の減少は、中小企業金融安定化特別保証制度の政策効果であるが、年後半にはその効果も薄れている。⇒ 負債総額が戦後最悪となったのは、高額負債を抱えた倒産(1,632億円)の発生による。⇒ 倒産原因をみると、件数の7割が不況型倒産で占められている。
- 業況判断
- 全国企業短期経済観測調査(福島県分)、中小企業業況判断DIをみると、企業マインドの改善が進んでいるが、依然として中小企業を取り巻く環境は厳しい状況にある。⇒ 製造業は、依然悪化超であるが、順調な回復基調にある。⇒ 非製造業は、第2四半期以降改善が進まず、中小企業では年末にかけては悪化超が拡大した。
- 2000年版福島県年次経済報告書のダウンロードはこちら 2000年版年次経済報告書(PDF形式:412KB)
PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)