2日目:2014年06月29日(日)
(1日目はこちら) 早朝、留学生たちはNPO法人「ザ・ピープル」が運営しているオーガニックコットンプロジェクトを見学しました。天候の関係で、計画していた畑でのコットンの苗の植える作業はできなかったためビニールハウスのなかでコットンの植の選別や種まきの作業をお手伝いしました。 長靴を履き替え、軍手を手にした留学生たちのほとんどは、これまで農作業経験を経験していませでした。それでも、学生たちは慣れない手付きと真剣な眼差しで、一生懸命に農作業に挑戦しました――学生ならではの真面目さに触れて、私も思わずまざって、久しぶりに学生気分を味わいました。
農作業のあと、留学生たちはNPO法人「ザ・ピープル」の事務所を見学し、そこで去年収穫したコットンを使って人形作りに挑戦しました。ついさっきまで自分たちが植えていたコットンの種はやがて芽が吹き、土を破って立派な花が咲いて、綿が実ることを知った留学生たちは、それぞれ自分のオリジナル作品に命と魂を吹き込みました。
人形作りを終え、留学生たちは次の目的地――アクアマリンふくしまにやってきました。日本有数の水族館として知られているアクアマリンふくしまは、震災時に高さ4.8メートルの津波に襲われ、水生動物の多くは亡くなり、地下に設けた予備飼育室や電気設備は全壊に近いダメージを受けました。 また、外壁のガラスが落ち、館外の地面に1メートルの地盤沈下が発生するなど、水族館は計り知れない被害を受けました。 それでも、職員やボランティアによる熱心的な復興への取り組みや他の水族館からの展示生物の提供などの協力のおかげで、震災のわずか4ヶ月後に、アクアマリンふくしまは営業再開を果たしました。 留学生たちは息を飲んで、5分間の津波の映像をじっと見ました。いわき市内の大学に通っている学生からは、「震災後に来たので、当時の被災映像を見るのは初めてで、とても驚きました。」と、もう一度、震災の被害について認識をあらたにしました。 私としては、一番忘れられないのは、アクアマリンふくしまの館長がスタッフたちに対して、「4ヶ月以内に水族館の再開を果たしましょう。」という課題を出したことです。これは一見、無理難題ですが、アクアマリンふくしまは地元住民長年の願いを実現した結晶であることから、地元住民と共にいわき市の復興を担うべく、スタッフ一同が努力の末、成し遂げた快挙です。 私は、館長とスタッフの信念が留学生たちにもきとんと伝わるようにと、通訳に心をかけました。福島県の復興は、決して容易ではないが、前向きにがむしゃらに働く県民たちのおかげで、私たちは福島で生活することができ、そして、福島の復興という途轍もなく長きレースで情報発信という名の責任感を、自分を含めて次から次へとバトンタッチしてほしいです。
ツアーの終盤、私たちは久ノ浜海岸で震災の傷跡を確認するとともに、嵩上げの工事をしている防波堤や、建設準備が進む防災緑地に移植する予定の黒松の試験植樹を見学しました。そして、津波で流されて、同地区の小学校内の一角でプレハブ住宅を借りて営業再開を果たした「浜風商店街」の店主たちと触れ合いました。 生々しい津波の傷跡を目の当たりにして、留学生たちの心を大きく揺らぎました。久ノ浜地区の見学は、きっと学生たちに「津波の恐ろしさ」と「命の尊さ」という表裏一体の二つのキーワードについて深く考えさせることに間違いないでしょう。
こうして、短くも密度濃い第1回留学生スタディツアーは幕を閉じました。しかし、参加者の留学生のみなさんにとって、情報発信を通じて福島の復興に力を貸す取組はまだ始まったばかりです。私は、この有意義な事業をより多くの留学生たちが参加できますように期待してますし、自分はこれからもできる限り関わっていきたいと思います。 福島県の国際課に勤めているからといって、自画自賛するつもりはありません。ひとりの元留学生の立場から率直な考えを述べているだけです。福島県は留学生たちを必要としている――これを切実に感じています。私は、今回のツアーを通じて、参加者の留学生たちもきっと、福島県の熱意を感じたに間違いないと思います。 このレポートを見た有志よ、ぜひ第2回の留学生スタディツアーでまた会いましょう! (完) |
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