名前: シャンル・シェン | 勤務先: 東京都江東区役所 |
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2016年、秋。新幹線で約1時間半。考えてみればそんなに遠くもない福島県を初めて訪れました。プラットホームに降りた瞬間から澄んだ空気が体を包み込んだことを覚えています。集合後、のどかに広がる景色を眺めながら目的地に向かっていると、知らず知らずのうちに心が穏やかになっていきました。そして最初にたどり着いたのは堂々と立つ福島県環境創造センター交流棟、通称「コミュタン福島」でした。 勉強目的で訪れただけに、もっと堅苦しい体験を期待していた私の考えとは裏腹に、コミュタンではとても楽しく福島県の現状と復興への道則を学ぶことが出来ました。ドームシアターでの体験はまさに新感覚!360度の映像と音声に囲まれながら福島県の人々の苦労と努力、そして絶えない希望を感じ取り、ちょっと涙目に…なんてこともあったかもしれません。 ツアー中訪れた他のどこよりもこの施設が特別印象に残るのは、大学で科学を専門していた身として、正しい科学情報が世界に知らされることほど大事なことはないようにも思えるからです。科学恐怖症や誤った情報発信などのせいで今までも大変な騒ぎになった例は世界各地、時代を超えていくつもあります。目に見えない、手に取って感じられないものほど誤解を招きやすく、福島県もメディアやマスコミに煽られた世間の誤認に苦しめられてきたのかと思うと、胸が痛みます。だからこそ、コミュタンでの素晴らしい展示物や体験オブジェを通し、より多くの人たちが放射線、除染活動、福島県の厳密な食への安全対策等について楽しく学び、正しい知識が人々の意識に植え付けられていくことを願うばかりです。 (そして科学者であった上での感想をもう一つ:空中の放射線が通った経路が見られるライトボックスには思わず胸が高鳴りました。サイエンスフリークにはたまらない体験です!) その後おいしい料理に顔をほころばせたり、赤べこを塗るのに一生懸命になったり、鶴ヶ城で地域の歴史を学んだりと、ツアーは円滑に実施されていきました。各地、各アクティビティにて自分でも驚くほど様々な感情が過りました。夜はホテルで会席料理を堪能し、他のツアー参加者と温泉に入り友好的な交流を交わすことが出来ました。このツアーに参加しなければ巡り会えなかった縁もたくさんあったと思います。 翌日、朝から贅沢に露天風呂に入りながら思いました。福島県にはきっと、見たもの、聞いたもの、訪れた場所以外にも、言葉では表せないなにかがある。それは自然豊かな美しい景色のおかげかもしれない。出会った人々の温かさかもしれない。丁寧に、大切に育てられた美味しい食べ物のおかげかもしれない。それを全部ひっくるめた、福島県に浸透するその何かは、確かに私の心に届きました。 もっと時間が欲しい。そして、もっとたくさんの人に福島県に来てほしい。来年の春は福島県でお花見したな、なんて考えながらこの素敵な時間が終わるのを惜しみました。 駅のプラットホーム。昨日見たはずなのにどこか懐かしく感じるのは、福島県での体験が私の中の何かを変えたからかもしれません。ツアーを企画してくださった皆様、共に参加してくださった皆様、そして私たちを温かく歓迎してくださった福島県の皆様、この場をお借りしてお礼を申し上げます。また会いましょう! |
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