【2015年9月24日(木曜日)】 Vol136
目次
- リレーエッセイ
県教育委員会委員 小野 栄重(おの えいじゅう) - 日々の思い
前郡山第一中学校長 滝田 文夫(たきた ふみお) - お薦めの一冊コーナー
- 学校自慢コーナー
- 矢吹町立中畑小学校
- いわき市立小名浜第一中学校
- 福島県立須賀川高等学校
- お知らせ
- 編集後記
リレーエッセイ
「好きな教科は わかる楽しさから」
県教育委員会委員 小野 栄重(おの えいじゅう)
つい先日、平成27年度全国学力・学習状況調査に係る福島県の結果が発表になりました。
小学校国語及び小・中学校理科はおおむね全国平均ですが、中学校国語は全国平均をやや下回り、小学校算数及び中学校数学は全国平均を下回っていました。この結果だけみればかなり厳しい結果といわざるをえませんが、その原因を考察する中で興味深い傾向があることにはっとさせられたのは私だけではないはずです。
それは、児童生徒質問紙調査の結果から類推できます。国語の勉強が好きな小学生の割合は全国の割合よりもかなり高くなっていましたが、今回特に課題としてクローズアップされている数学の好きな中学生の割合は、全国より極端に低くなっているという事実です。
つまり学力の高さと好きな教科とは見事な相関関係になっていて、特に嫌いな教科が中学の時期に顕著に現れ、このことが勉強の意欲を大きく失墜させている可能性があるということです。
勉強はもともと辛いものかもしれませんが、誰しもそれは社会で自立するために乗り越えなくてはならない壁です。もし勉強が楽しく学校へ行くのが楽しみになるくらいの教育ができるなら、これこそ学力向上の最善策であります。
そのためには教科にかかわらず、子どもたちに授業の内容を理解させ、さらにその先の興味と自信を持たせることがきわめて重要になります。
特に中学生の早い時期から、先生方には危機感を持って「わかる授業」に取り組んでいただきたいと思います。将来の受験を控えた多感な時期に、興味のあるスポーツや文化活動と共に基本である勉強の楽しさをできるだけ早く体験させてほしいと思います。好きな教科が増えれば増えるほど、子どもたちは勉強に苦手意識がなくなり、自然と学力はついてきます。
東日本大震災と原発事故という、これ以上ない過酷な試練を乗り越えてきた福島の子どもたちに、不可能なことなどなにもありません。私たちはこのすばらしい子どもたちに、素敵な未来をプレゼントしなければなれません。
学力テストの結果に一喜一憂するのではなく、福島の子どもたちの無限の可能性を信じて、一人一人に寄り添った福島ならではの「わかる授業」に徹した教育を提供し続けていくことが、最も大切なことなのではないでしょうか。
日々の思い
「趣味に学ぶ」
前郡山第一中学校長 滝田 文夫(たきた ふみお)
今年の夏は、前半は酷暑、後半は雨模様が続いた。また、豪雨による大きな被害も発生し、まさに異常気象の夏であった。不順な天候が続き、予定や計画が狂ってしまった人も多かったのではないだろうか。
私も、趣味を進める上で、なんとも恨めしい夏であった。
今から16年前、新任校長として赴任した学校では、教科横断的な学習として「総合学習」を実施していた。その一つに「野菜の栽培」があり、私が担当の一員となった。子どもたちに指導するためには、実際に経験しないといけないと思い、すぐに郊外に畑を借りて野菜の栽培を始めた。
夏野菜のナスやキュウリ、トウモロコシ、秋野菜の白菜、大根、ネギなどを作った。全くの素人であった。「そろそろ土寄せをしたら」、「追肥をしないと」、「そろそろネットを掛ける時期だよ」など、危なっかしいその様子を見て、近所の人たちがあれこれと声を掛けてきてくれた。
そんなこともあり、1年目からなんとか美味しい野菜を収穫することができた。
2年目からは、タマネギ、オクラ、ズッキーニなど栽培をする野菜の種類も多くなり、収穫量も多くなってきた。畝作りや移植・定植など時間のかかる作業は土・日に行う。平日は4時半に起きて畑に向かい、小一時間ほど作業をして自宅に戻り朝食を摂って職場に向かう。福島に通勤していた10年間を含め、すでにこのような生活が16年も続き、すっかり趣味の一つとなっている。
ここ数年は、種から育てるようにもなり、「いつも精が出るね」、「立派な野菜が育ったね」などと賞賛の声を掛けてもらっており、一層やる気がわいて野菜作りに励んでいる。
美味しい野菜を育てるために、籾殻の堆肥で大切に育てた苗は、適切な時期によく耕した畑に移植する。苗がたくましく育ち、花を咲かせ、実をつけるまでには、雑草を刈り取り必要に応じて施肥をするなど、育ちやすい環境を作り、その時期に適した細やかな対応が大切である。
野菜作りは、学習環境を整えて年齢に応じた適切な指導により、確かな学力とたくましく生きる力を持った、たくましく健全な子どもを育てる学校教育と相通じていると感じている。
近所の人たちの声掛けのように、子どもの心に響く声かけができていただろうか?
そんなことを考えながら、今日も朝日を浴びながら畑に向ってハンドルを握りしめている。
※滝田文夫先生は、平成26年度教育者表彰(文部科学大臣表彰)を受賞されました。
お薦めの一冊コーナー
このコーナーでは、福島県立図書館司書のお薦めの一冊を御紹介します。
おすすめの一冊 『岩波新書で「戦後」をよむ』 (小森陽一[ほか]/著 岩波書店 2015)
戦後70年を「岩波新書」で振り返ります。10年ごとに、それぞれの時代を表す3冊を選び、3人の識者が、社会背景を織り交ぜながら読み解きます。歴史をたどるだけでなく、それぞれの時代感覚を追体験するように読むことができます。
1949年から2015年まで、途切れることなく刊行されている岩波新書ならではの試みであり、ブックガイドとしても活用できます。
県立図書館024-535-3218
https://www.library.fks.ed.jp/
学校自慢コーナー
このコーナーでは、各学校の特色ある取組を御紹介します。詳しい内容を県教育委員会のホームページで紹介していますので、御覧ください。
『ゆたかな心を育む図書館をめざして』
矢吹町立中畑小学校
すすんで学ぶ、心ゆたかな子どもを育てるために、学校図書館を中心として読書に親しむ環境づくりをしています。学級担任と学校司書が連携協力し、授業での学校図書館の活用、読みたい本、読ませたい本を推薦した矢吹子ども読書100選を用いた読書を進めています。
本を通して家庭と学校をつなぎ、生涯をとおして豊かな学びができるようになる取組みです。
矢吹町立中畑小学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
『 絆 』
いわき市立小名浜第一中学校
東日本大震災後、京都府京都市立西賀茂中学校から同規模校である本校に対して支援をいただいたことをきっかけに交流が始まりました。
生徒会を中心に毎年色紙やビデオメッセージなどを交換し、交流を深めてきました。
いわき市立小名浜第一中学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
いわき市立小名浜第一中学校のホームページへ
『高い志を持って夢を叶えよ!』
福島県立須賀川高等学校
須賀川高校は創立108年という伝統を持ち、長い歴史の中で多くの著名人を輩出するなど、将来を担う有為な人材を育てることを社会的使命として教育活動に取り組んでいます。
生徒たちも「叡智・情熱・躍進」の校訓のもと、様々な活動に積極的に参加しています。今回はその中でも、部員40名となったJRC部を紹介します。
福島県立須賀川高等学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
福島県立須賀川高等学校校のホームページへ
お知らせ
今日は、学校や職場で、昨日までの連休の楽しかった出来事で盛り上がった方も多いのではないでしょうか?
さて、ここから9月のお知らせコーナーです。
県立図書館からのお知らせ
文化講演会を開催します!
演題:「図書館は、国境をこえる~カンボジアから東北へ~」
震災後の東北での移動図書館事業立ち上げにも携わった、シャンティ国際ボランティア会の鎌倉幸子さんによる文化講演会を開催します。
どなたでもお気軽にご参加ください。
日時:9月25日(金曜日)14時00分から15時30分
場所:A・O・Z (アオウゼ) 多目的ホール[MAX福島4階]
申込等:参加無料・一般の方は申込不要
県立図書館 024-535-3220
https://www.library.fks.ed.jp/
会津自然の家からのお知らせ
打って食べて大満足 新そばにチャレンジ
日時:平成27年11月14日(土曜日)、15日(日曜日)、22日(日曜日)
募集:平成27年10月15日(木曜日)から10月30日(金曜日)
第12回会津自然の家 あったかふれあいまつり
期日:平成27年10月18日(日曜日)
会津自然の家 0242-83-2480
http://www.aizu-nc.fks.ed.jp/
まほろんからのお知らせ
ふくしま復興展2「よみがえる文化財」
東日本大震災等で被災した福島県内の文化財の救出活動と、その再生に向けた取組を紹介する企画展です。
今回は、南相馬市や須賀川市をはじめ、県内各地で被災した文化財等を展示し、東日本大震災以降に行われてきた文化財救出活動や、民俗芸能等の無形民俗文化財の保護活動等についても紹介します。
期間:平成27年10月17日(土曜日) から 平成27年12月6日(日曜日)
※会期中の休館日:[10月]19日・26日 [11月]4日・9日・16日・24日・30日
まほろん 0248-21-0700
http://www.mahoron.fks.ed.jp/
施設財産室からのお知らせ
広告を募集しています!
県教育委員会及び県立図書館のHPのトップページに掲載いただける広告を募集しています。
詳しくはこちらを御覧ください。
→ http://www.pref.fks.ed.jp/koukoku/index.html
編集後記
「読書の秋」到来です。
今号では図書館での文化講演会をご紹介するほか、学校自慢コーナーでは矢吹町立中畑小学校における学校図書館を通した教員と学校司書のチームプレーを紹介しています。児童の感想から、生き生きとした読書活動の様子が伝わってきます。
十人十色、人それぞれに読書の楽しみ方があります。
私の場合、図書館のたくさんの本から一冊を選び、1ページずつめくる中でわずか数行の心に響く文章を見つけることが至上の楽しみです。 めぐりあったダイヤモンドのような部分を記録し、ときにそれらを読み返しています。そうすることで、また励まされたり、悪い癖を直したり、新しい視点で物事を考えたりすることができます。
しかし、十代の頃は本を読むことが楽しいと思えませんでした。「勉強」と読書の区別がつかなかったから、そして本の選び方が分からなかったからです。
自由に読んでよい(つまらないと思ったら止めてよい)と分かったのは大人になってからでした。
冒頭のリレーエッセイでは、小野委員から学ぶ楽しみを体験する重要性が 綴られています。学ぶ楽しさや読書の楽しさを知っている教員、学校司書はそれを子どもたちに伝えたくて仕方ないだろうな、と思うこの頃です。
教育総務課長 大類 由紀子(おおるい ゆきこ)
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