【2015年3月20日(金曜日)】 Vol130
目次
- リレーエッセイ
県教育委員会委員 境野 米子(さかいの こめこ) - 日々の思い
県社会教育課長 佐川 正人(さがわ まさと) - 退任挨拶
理事兼政策監 尾形 淳一(おがた じゅんいち) - お薦めの一冊コーナー
- 学校自慢コーナー
- 会津若松市立川南小学校
- 川俣町立川俣中学校
- 福島県立郡山商業高等学校
- お知らせ
- 編集後記
リレーエッセイ
「思い出の教師たち」
県教育委員会委員 境野 米子(さかいの こめこ)
『温故知新』
名前や顔を覚えるのが苦手な私が、唯一記憶している先生は小学校1年生の時の國澤校長先生。元旦の朝礼は外で行われていたのですが、「温故知新、古いものをたずね求めて新しい事を知ること」と話し、たぶん「今年はこのことを心にとめて・・」とだけ言ったのでしょう。
あまりに短いあいさつと優しい口調が今もなお心に残っています。当時は意味もよく分からなかったと思うのですが、その言葉を目にし、耳にするたびに、「ああ」と思い出します。
あいさつは短いのが一番いいなと子供心に強く響いたのでした。
『言い訳をしない』
女子高校に入り、周りにすぐ感化され?弁当を授業中に食べたり、授業をそっと抜け出したり、教師に「ミイラの塩漬け」などと辛らつなニックネームを付けたり、やりたい放題。
授業中に指されても答えなかったり、わざと反対意見を言ったり、思い出すと恥ずかしくて穴があったら入りたい気持ちになります。
本当に生意気な生徒でした。
ある日、地理と歴史を教えている教師が「感想を書いてほしい、批判でも悪口でも何でもいいぞ」と言い、紙が配られました。結核を患い、治療のために聴覚に障害を持たれていましたが、一生懸命わかりやすい、面白い授業をしてくださる先生を好ましく感じていました。だから率直に思っていることを、「言い訳をしないで欲しい」、「耳が不自由であること、また専門外の教科であることを、耳にタコができるほど聞かされる生徒の身になってほしい」と書きました。それは、私なりの「今の教え方で十分です。自信をもって・・・」というエールだったのですが、先生には通じなかったようです。
次の授業の時に、「こういうことを書いた生徒がいる」と読み上げ、烈火のごとくに怒りまくりました。ただ下を向いているしかありませんでした。多分、先生の一番弱いところを突いてしまったのでしょう。
以来社会科の授業に全く興味が持てなくなりました。仕方がなく化学や生物の授業を好むようになり、理系に進むことになりました。
今でも思い出すと、体が熱くなります。
申し訳なかったと思う一方で、皆の前で読み上げる前に、私の思いも聞いてほしかったと思うのです。教師も人間、生徒も人間、だから話し合えば誤解は解けたのにと・・・。
私は、できるだけ「言い訳をしない」をモットーに生きていこうと考えているわけです。
『父の、お互い様』
長い間、父のことが嫌いでした。家の近くにできた卓球場は「不良のたまり場」、夜店や祭りに行くのは「不良のすること」、学校からの帰りが遅くなると、すぐに学校へ電話を入れるような父が疎ましくて仕方がありませんでした。
言うことややることが、超がつくほど保守的で前近代的でした。
スーパーで「5円も安かった」と大喜びで買い物をしてきたら怒られました。「高くても、近所の店で買え」と言うのです。「お互い様なんだ。スーパーの人は、わが家に買い物に来ないだろう」というわけです。なんで高いものをわざわざ買いに行かなければならないのか、信じられない思いでした。
世の中は、私のような軽薄な人間が多いので、近所の店は次々と閉店し、交通量の多い国道を横断しなければ歩いて買い物に行ける店がなくなってしまってから、父の言っていたことの大切さに気づかされました。
近所に買い物に行けば、どこの店でも「ばあちゃんの具合はどう」とか「お母さんは元気か」とか「学校は面白いか」などと聞かれ、「大事にな」「よろしくな」「がんばれよ」と声をかけられました。日本中に、スーパーのレジにはないコミュニケーションの場が当たり前にあったわけです。
品数は少なくても、ソバのゆで方を教えられ、魚の調理法を聞き、今晩のメニューを相談する場がある豊かさを思います。子どもが育つ環境に、こうしたご近所のお互い様の支え合いが大切なのではと、しみじみと思うこの頃です。
『怒られる』
朝から晩まで有機農業運動で忙しかった頃のことです。
農協中央会では天皇と恐れられた一楽照雄氏は、退職後に有機農業研究会を設立されました。その天皇から依頼があり、「土と健康」という月刊誌に学校給食に反対する原稿を書きました。その原稿が気に入らないとして、電話で烈火のごとくに怒られました。「あんたは学者か!あんたは研究者か!」挨拶も何もなく、怒鳴り散らすのですから、驚きました。
聞いているうちに、ようやく理解できました。「主婦に書いてもらいたかったのに、学者が書いた原稿が届いた」ということなのです。なるほどと納得しましたが、あんなに怒鳴り散らさなくても、言いたいことは伝えられるのにと思う一方で、怒らなければ伝わらないこともあるのだろうとも思いました。
以後、書くたび、発言するたびに、「私は学者ではない、ただの主婦、母親なのだ」と立ち位置を確認してきました。先生と呼ばれているうちにいい気にならないように、と自戒してきました。
8年前、教育委員会の委員をお引き受けしたはいいのですが、毎月開かれる定例の委員会では、何もわからないまま賛成することもできず、初歩的な質問を連発していた一年目の頃のことです。
我慢もここまでと思ったのでしょう。委員長から会議の後の歓送迎会の折に、大声で怒られました。「全部の質問がダメとは言わないが、勉強もしないで、初歩的な質問ばかりしていては仕方がない」と言うのです。多くの人の前で大きな声で怒られることなど、めったにないことでしたから、顔は赤くなるし体も震える思いでした。
普段は温厚で、とりわけ女性には優しいと評判の委員長が怒るのですから、よほど頭に来ていたのでしょう。苦々しく思い、困っていたのかもしれません。
とはいうものの、委員長の「全部の質問がダメとは言わないが・・・」に救われるような思いがして「申し訳ありません。一生懸命勉強します」と謝りました。とはいうものの、教育委員として他の方々のように業績が優れ社会的な地位があるわけでなく、ただの主婦が選ばれたことにも意味があるのではないか、と改めて考えるようになりました。
謝った割には、ちっとも進歩がないまま8年がたち、卒業の日を迎えることになりました。
教育委員会の皆様が、ただの主婦の疑問や質問に、一つ一つ誠実にお答えいただいたことには、本当にありがたく感謝です。
震災後、仮設校舎、間借り校舎で授業が再開されて以来の非常事態が、今もなお続いている現場の先生方のご苦労を思うとき、また一人一人の生徒さんの気高さ、健気さや素直さに比較して、私たち大人のなんと情けなく力が足りないことよと、わが身に腹が立つばかりです。
震災で通常の業務ができなくなった教育委員会も、ようやく正常な状態に戻ったかのように見えますが、職員の方々は倍以上の仕事量に追われ、力の限りを尽くされていることだけは、よくわかります。
それでも、問題が山積みの現場からの声を少しでも聴いてほしい、日本中で福島の子どもたちのために活動している方々の声を聴いてほしいと、無理を承知で言い続けるしつこさに、多分呆れていると思い、申し訳なく思います。
現場の教師の方々に、また教育委員会の皆様方に、心から敬意を払い、感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。
ありがとうございました。
※境野委員は3月末に任期満了となります。
平成26年10月には地方教育行政功労者表彰(文部科学大臣表彰)を受賞されました。
日々の思い
「葉っぱビジネスから学んだこと」
県社会教育課長 佐川 正人(さがわ まさと)
今年度10月に全国社会教育研究大会徳島大会に参加する機会を得ることができました。この大会では、多くのことを学ぶことができ実りの多い大会参加となりましたが、その中でも「株式会社いろどり」代表取締役 横石知二(よこいし ともじ)氏の記念講演は特に印象深いものでした。
徳島県上勝町をご存じでしょうか。
上勝町は、人口1,742名(平成27年1月1日現在)、高齢者比率が51.44%という、過疎化と高齢化が進む町です。その町が1986年に「葉っぱビジネス」をスタートしました。その成功により近年マスコミでも取り上げられることが多く、2012年秋に「人生、いろどり」として映画化されるまでになりました。
「葉っぱビジネス」とは、日本料理を美しく彩る季節の葉や花、山菜などを、栽培・出荷・販売する農業ビジネスのことです。 横石氏のお話は、「葉っぱビジネス」スタート時の混迷の時期をいかにして乗り越え、現在の成功をつかむまでに至ったのかについてのお話であり、多くの示唆に富むものでした。
「葉っぱビジネス」のポイントは、商品が葉っぱであり軽量で綺麗でもあるので、女性や高齢者でも取扱いが容易なことです。中には、年間1000万を稼ぐおばあちゃんもいるそうです。
今では、過疎化と高齢化が進んでいた町に、ここ5年間で289名もの若者が移住したそうです。また、70歳を超える高齢者の方々が、人生に生きがいを感じ、いきいきとパソコンやタブレットを片手に仕事に打ち込む姿には驚かされました。
このビジネスに取り組んでいる方々からは、「人は自分に役割があることが何よりうれしい」「人は誰でも主役になれる」「頼りにされるってええよな」という声が聴かれます。
また 「葉っぱビジネス」の仕事が忙しくなったため老人ホームの利用者が減り、町営の老人ホームはなくなったという話です。「生きがいを作ることが、最高の福祉です」これは横石氏の言葉です。
「葉っぱビジネス」の成功を社会教育という視点でみたとき、趣味や娯楽を追求することも人それぞれの「生きがい」を生み出すことにはなるでしょう。しかし、それだけでなく人としての役割を果たすための素養作り等、これもまた社会教育の大切な視点であることを感じました。
このことは、高齢者ばかりでなく、どの年代層にもあてはまることだと思います。
今後の社会教育行政にこの視点を生かしてまいりたいと思います。
退任挨拶
理事兼政策監 尾形 淳一(おがた じゅんいち)
この2年間、多くの皆さんに支えていただき楽しく仕事をすることができました。本当にありがとうございました。
復興を目指す本県にとって大切な節目の日である3月11日の地元紙の論説で、ふたば未来学園高校の開校、小高商高と小高工高の統合、「子供がふみだす、福島復興体験応援事業」が取り上げられ評価をいただくことができました。
職員の皆さんの努力と、応援そして叱咤激励してくださった関係者の皆さんの熱い思いが実を結んだと実感できて、素直に嬉しいと思いました。
新年度も引き続き課題は山積していますが、教育委員会には学校現場で培われた知恵やアイディアが溢れています。それぞれの立場で立ち止まらずに子供たちのために前進を続けていけば必ず道は開けるはずです。
私も、引き続き教育委員会の一員だという思いで、教えていただいたことを糧に、新しい仕事に取り組んでいきたいと思います。
フレー、フレー教育委員会。本当にお世話になりました。
お薦めの一冊コーナー
このコーナーでは、福島県立図書館司書のお薦めの一冊を御紹介します。
おすすめの一冊 『サン=テグジュペリと星の王子さま』 (ビンバ・ランドマン/文・絵 鹿島茂/訳 2014年12月)
これまでも数多くの伝記絵本を著してきたビンバ・ランドマンが新作の主人公に選んだのは、『星の王子さま』の作者でパイロットのサン=テグジュペリ。
飛行機や詩を愛した幼少期から、第二次世界大戦の最中に交信を絶つまでの、彼の生涯が描かれています。
詳細な伝記ではありませんが、砂漠が好きだったり母親によく手紙を書いていたりといった一面もうまく表現されています。(県立図書館司書 N.T)
県立図書館024-535-3218
https://www.library.fks.ed.jp/
学校自慢コーナー
このコーナーでは、各学校の特色ある取組を御紹介します。詳しい内容を県教育委員会のホームページで紹介していますので、御覧ください。
『地域とのつながりを大切にした特色ある教育活動』
会津若松市立川南小学校
本校では、地域の自然や人とのふれあいの中で、地域のよさが実感できる活動を行い、地域を愛する児童の育成に力を入れています。
会津若松市立川南小学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
会津若松市立川南小学校のホームページへ
『フェンシング部活動紹介』
川俣町立川俣中学校
川俣町立川俣中学校は、県内で唯一のフェンシング部を常設部として設置している中学校です。
福島国体のフェンシング競技が川俣町で開催された経緯もあり、施設面、資金面ともに川俣町によって支援されています。
日頃の練習は川俣町体育館で行い、指導には地元出身で国体出場の経験もあるコーチにも協力していただいています。
たくさんの方々の声援を受けて、生徒たちは,東北大会,全国大会など大きな大会での入賞を目指して、日々の練習に励んでいます。
練習や大会で県外に出かけることが多いため、いろいろな人たちとの交流ができるところもフェンシング部の魅力です。
川俣町立川俣中学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
『郡商の部活動とキャリア教育の紹介』
福島県立郡山商業高等学校
本校の「部活動の活性化」と「キャリア教育の推進」の取組を紹介します。
福島県立郡山商業高等学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
福島県立郡山商業高等学校のホームページへ
お知らせ
ここからは3月のお知らせコーナーです。
健康教育課からのお知らせ
平成29年「南東北インターハイ」、総合ポスター図案に本県高校生の作品が決定しました!
大会愛称、スローガン、シンボルマーク、総合ポスター図案が決まりました。本県の中学・高校生からも964点の応募がありました。
開催に向けて、皆さんで熱く盛り上げていきましょう。
詳細はこちらを御覧ください。
平成29年南東北インターハイ情報のページ
施設財産室からのお知らせ
広告を募集しています!
県教育委員会及び県立図書館のHPのトップページに掲載いただける広告を募集しています。
詳細はこちらを御覧ください。
http://www.pref.fks.ed.jp/koukoku/index.html
会津自然の家からのお知らせ
高寺山山開き
日時:平成27年4月12日(日曜日) 8時00分 受付
参加費:500円(町特産品800円相当プレゼント)
会津自然の家 0242-83-2480
http://www.aizu-nc.fks.ed.jp/
編集後記
3月は別れの季節です。
境野米子さんは8年間、福島県の教育委員を務めてくださいました。
また、公立学校では426名の教職員の方々が、県立学校では137名の教職員の方々がご退職されます。ほかにも、市町村の教育長や教育委員会事務局の職員の方など、教育に携わってこられた方々の、御勇退・御退職・御異動の知らせが入ってきます。
そのたびに、「あの方の考えと情熱が教育現場から無くなってしまう」と大変心細い気分になります。別れの悲しさやつらさは時間が経てば癒えるかもしれませんが、別れるからこそ、その方の偉大さをくっきりと感じ、残してくれたものを受けとめつつ新しい道を切り拓かなければと奮い立つ思いです。
去られる方々が蒔いてくださった種を咲かせていこうと思う今年の春です。
御勇退される皆様、御異動される皆様、長年にわたり、福島の教育と復興を、そして私たち教育関係者を牽引していただき、誠にありがとうございました。
教育総務課長 大類 由紀子(おおるい ゆきこ
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