【2014年7月22日(火曜日)】 Vol122
目次
- 日々の思い
県教育庁参事 笠原 裕二(かさはら ゆうじ) - リレーエッセイ
県教育委員会委員 高橋 金一(たかはし きんいち) - お薦めの一冊コーナー
- 学校自慢コーナー
- 中島村立滑津小学校
- いわき市立藤間中学校
- 福島県立二本松工業高等学校
- お知らせ
- 編集後記
日々の思い
「学校事故の防止」
教育庁参事 笠原 裕二(かさはら ゆうじ)
私のところには度々、児童生徒の事故発生について報告が上がってきます。中には命にかかわる深刻な事故もあり、その度に、常日頃の「事故発生の未然防止」への取組が大切であることを痛感させられております。
各学校では、「生活安全」「交通安全」「災害安全」に関して、「事故発生の未然防止」「事故発生時の対応」「再発防止」等に日々取り組んでいただいているところではありますが、残念ながら様々な事故が発生している状況にあります。
「事故発生の未然防止」を図るには、管理職を含めた全教職員が、事故発生リスクの内容、その防止対策等について十分に確認・情報交換を行うことや、事故に関する研修・訓練を積極的に企画・実施するなどして、事故発生リスクに対する各教職員の感性を磨き、事故発生の前兆を見逃さずに事前の的確な防止対策や児童生徒に対する適時適切な指導等を繰り返し、確実に実施することが大切であると考えます。
重大な事故が発生するまでには、その前兆として突発的な出来事やミスにヒヤリとしたり、ハッとしたりする「ヒヤリ・ハット」があり、これらの「ヒヤリ・ハット」を見逃さないことが大切です。1件の重大な事故、災害の裏には、29件の軽微な事故、災害があり、さらに300件のヒヤリ・ハットがあるとされています。
「事故発生の未然防止」のためには、ヒヤリ・ハットの具体例やその理由、それを起こさないための対策などについて話し合い、その情報を学校全体で共有するとともに、児童生徒さらには保護者に対して意識を高めるための啓発を行ったりすることが有効な対策の一つであると考えます。
「事故発生時の対応」としては、事態や状況の確認を適切に行いながら、児童生徒の安全・安心の確保を最優先として、事態が今後どのように進展するのか予測し、学校としての対応方針を明確にしながら対応を進めていくことが大切であると考えます。
また、事故に応じて、被害拡大の防止や事故発生後の時系列的な対応策を実施するための教職員間の役割分担等の体制について、教職員全員で常日頃から確認・情報の共有を図っておくことも大切であると思います。
「再発防止」としては、当該事故のみならず、過去に発生した自校及び自校以外の事故についてもその発生原因や背景の分析を行い、自校における発生防止のための適切な取組を学校全体で行うといったことが重要であると思います。
事故のない平穏な日々は、何事もないように、教職員・児童生徒・保護者・地域の方々・関係機関が一体となって、日々新たな気持ちで、事故の未然防止に真摯に取り組むことで得ることができるものです。教職員の皆さんには、なお一層、日常の教育活動や学校の管理運営、児童生徒の通学等における、様々な事故のリスクについて常に関心を持ち、細心の注意を払って、子どもたちが安全に学校生活や家庭生活を送ることができるようしっかりとした取組をお願いいたします。
リレーエッセイ
「安 積 艮 斎」
県教育委員会委員 高橋 金一(たかはし きんいち)
先頃、福島県内の優れた出版物を讃え出版文化の向上を図る目的で制定された福島民報出版文化賞の正賞に、「安積艮斎 艮斎文略 訳注」(安積國造神社宮司 安藤智重氏著 早稲田大学名誉教授 村山吉廣氏監修)が選ばれた。
本書は、郡山出身で江戸末期の儒学者安積艮斎(あさかごんさい)の著作「艮斎文略」の書き下し文及びその現代語訳である。本書により、艮斎の思想、哲学などが理解でき、平易な現代語訳と脚注により、一般の方でも艮斎の格調高い文章に触れることができる内容になっている。
ところで、安積艮斎という人物について、県民の皆様はどれだけ馴染みがあるだろうか。実はかくいう私も、平成に入ってから、その業績を知るに至った一人である。
艮斎について、インターネット百科事典Wikipediaには、以下のように紹介されている。
「寛政3年(1791年)3月2日、陸奥(後の岩代)二本松藩の郡山(福島県郡山市)にある安積國造神社の第55代宮司の安藤親重の三男として生まれる。名は重信、字は子順(しじゅん)、通称は祐助、別号は見山楼。17歳で江戸に出て佐藤一斎、林述斎らに学ぶ。
文化11年(1814年)、江戸の神田駿河台に私塾「見山楼」を開く。見山楼は旗本小栗家の屋敷内にあり、小栗忠順もここに学んだ。
天保14年(1843年)に二本松藩校敬学館の教授、嘉永3年(1850年)には昌平黌教授となり、ペリー来航時のアメリカ国書翻訳や、プチャーチンが持参したロシア国書の返書起草などに携わる。
また、幕府へ外交意見として『盪蛮彙議』を提出した。万延元年(1860年)11月21日没。没する7日前まで講義を行っていたと伝えられる。」
上記の艮斎24歳で開塾した私塾「見山楼」の門人は2,282人に及んでいる。その門人の名前及び出身地などが記された「安積艮斎門人帳」が郡山市の安積國造神社内の安積艮斎記念館に現存所蔵されている。これは、平成21年に福島県の重要文化財に指定されている。
この門人帳に記載されている門人には、誰もが一度はその名を聞いたことがある、次のような幕末から明治にかけて活躍した歴史上の著名人が含まれている。
秋月悌次郎(1824年から1900年)
会津藩主松平容保の側近。維新後、東大教授。
上野房五郎(後の前島 密)(1835年から1919年)
日本の近代郵便制度創設者の一人。「郵便制度の父」と言われる。
岩崎弥太郎(1835年から1885年)
土佐藩士。三菱財閥の創始者。
小栗上野介(忠順)(1827年から1868年)
江戸末期の幕臣。勘定奉行、江戸町奉行、外国奉行を歴任。
安政7年(1860年)、日米修好通商条約批准のため米艦ポーハタン号で渡米し、日本人で初めて地球を一周して帰国した。
清河八郎(1830年から1863年)
庄内藩士。尊皇攘夷の志士で、浪士組(新選組・新徴組の前身)を結成し、虎尾の会を率いて明治維新の火付け役となった。
高杉晋作(1839年から1897年)
長州藩士。尊皇攘夷の志士で、奇兵隊を創設。
長州藩を倒幕に方向付けたとされる。
谷 干城(1837年から1911年)
土佐藩士。西南戦争時に熊本鎮台司令長官。第2代学習院長。
吉田松陰(1830年から1868年)
長州藩士。松下村塾を開き、明治維新の精神的指導者・理論者とされる。
いずれ劣らぬ、幕末から明治にかけて、歴史の教科書にその名を連ねる数々の有名な人物が輩出しているのである。このようにその門人らの顔ぶれを見ると、艮斎は、「近代日本の源流」とされる大学者であった(安藤智重著「安積艮斎」より)と言っても過言ではないと思う。
艮斎は朱子学者だったが、陽明学など他の学問や宗教を排することなく、学派を超えてよいものを取り入れようという自由な学風を貫いたという。そして、早くから欧米列強の海外侵略に注意をはらい、漢訳洋書から情報を収集して、海防論を唱え、それらの集大成として、1848年(嘉永元年)には「洋外紀略(ようがいきりゃく)」を著し、鎖国政策が行われていたにも関わらず、海外貿易の必要性を説いた。
このほか、ペリー来航の際、艮斎は開国か鎖国かと世論が分かれる中、幕府に対して、外交に関する意見書として「亜墨利加御取扱存寄書」を提出し、外国の軍事力のために強制されて開国するようでは国体を損ない人心を失うと指摘の上、三年間返答を延引し、その間に砲台、軍船、大砲などを造り、軍備を整えた上で返答すべきであるとした(前掲「安積艮斎」93頁)という。
こうしたことからも、幕末から明治維新にかけて活躍した人物の思想的淵源をなす学者であったことが窺われると思う。
最近では、平成22年(艮斎没後150年)のNHKの大河ドラマ「龍馬伝」の中で、香川照之が演じる岩崎弥太郎の台詞に、「江戸にはのう、安積艮斎いう漢学の偉い先生がおってのう。」「江戸に行って、天下第一の安積艮斎先生に弟子入りするぜよ」というくだりがあり、全国のお茶の間に「安積艮斎」の名前が伝えられたということがあった。
幕末期における安積艮斎の名前が全国に知れ渡っていたことを物語るエピソードでもある。
小学校、中学校、高等学校において我が国の歴史を勉強しても、私の記憶では、福島県出身の偉人として名前が登場するのは野口英世くらいしか思い浮かばない。
しかしながら、こうした幕末から明治にかけての我が国の基礎を作った歴史上の著名人が師事した偉大な知識人が福島県に存在したのである。こうした事実はもっと広く知られるべきではないかと思う。身近な歴史上の人物を起点として、国を動かした著名人に連なっていくという思想的系譜を知るだけでも、歴史に親しみが湧き、無味乾燥なものではなく、生き生きとした学習ができるのではないだろうか。
東日本大震災及び福島第一原子力発電所事故以来、ともすれば、沈みがちな福島県であるが、近代日本の礎は福島県がなければ築かれなかった、原子力から脱却し、新たな未来を作るのも福島県がリードするんだというような、些かオーバーな表現ではあるが、そうした気概を持って、この難局に立ち向かって行く必要があるのではないか。
受賞決定の数日前に開かれた出版記念祝賀会の席上、品川萬里郡山市長(元郵政審議官)は、その挨拶の中で、三菱や郵便関係の知人に「御社があるのも、艮斎先生のお陰、ひいては郡山のお陰」と自慢するのだ等と発言されていた。
折しも、広野町に来春開講する中高一貫校を支援するため、小泉進次郎復興大臣政務官の呼びかけにより、各界著名人によって、7月10日、「ふたばの教育応援団」が結成された。宇宙飛行士山崎直子氏ら11名のメンバーが、講師として年間最大百時間程度、同校の授業を担当する。
こうした一流の方々の生の声に触れ、その柔らかい頭脳に直接知的刺激を受けた生徒たちが、未来の福島県、未来の日本を牽引する人物になってくれることを期待したい。
安積艮斎が、当時一流の学者である佐藤一斎に弟子入りし、直接その謦咳(けいがい)に接し、その後の偉大な業績を踏み出す第一歩を歩み始めたのも、艮斎17歳の年であったのだから。
お薦めの一冊コーナー
このコーナーでは、福島県立図書館司書のお薦めの一冊を御紹介します。
おすすめの一冊 『会津の歌舞伎史を訪ねる』(歴春ふくしま文庫42) 渡部康人/著 歴史春秋社 2014
奥会津博物館文化財等研究員である著者は、田島祇園祭で知られる南会津町出身。本書では、古文書の分析や実地調査を通じて、会津若松城下や南山御蔵入領で華々しく繰り広げられた歌舞伎の姿に迫ります。歌舞伎の熱狂の奥に、会津藩の財政状況が透けて見えるのも読みどころ。
巻末に南山御蔵入領内の農村舞台の一覧もあります。(県立図書館司書 S.K)
県立図書館024-535-3218
http://www.library.fks.ed.jp/
学校自慢コーナー
このコーナーでは、各学校の特色ある取組を御紹介します。詳しい内容を県教育委員会のホームページで紹介していますので、御覧ください。
『創立140周年の伝統』
中島村立滑津小学校
本校は明治7年9月21日、旧滑津村の善通寺を仮の校舎に充て滑津小学校と称してスタートしました。創立当初から滑津小学校の名称が変わらず続いていることは珍しいことだと言われています。
歴史と伝統と地域の皆様に支えられ、今年は創立140周年を迎えました。
中島村立滑津小学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
中島村立滑津小学校のホームページへ
『藤間中学校の特色ある取り組み ~ 地域に根ざした学校を意識して ~』
いわき市立藤間中学校
本校は、全校生121名の中規模校です。自ら進んで「学び」「考え」「表現できる」生徒の育成のために、「地域に根ざした学校」を意識した教育活動を展開しています。
いわき市立藤間中学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
いわき市立藤間中学校のホームページへ
『「実社会で通用する人材の育成」を目指して ~ 松工マイスター ~』
福島県立二本松工業高等学校
本校では高校生活を目標を持って、充実した3年間を送り、卒業時の就職や進学の自己実現を図るために、教科に関する国家資格や検定試験、ものづくり大会・各種コンテストなど難易度に応じて得点を設定し、取得した得点に応じたマイスター(技能卓越者)の称号を与える取組を、平成16年度から全国に先駆けて実施しています。
福島県立二本松工業高等学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
福島県立二本松工業高等学校のホームページへ
お知らせ
いよいよ夏休みが始まりました。地域や家庭で豊かな時間を過ごし、ひと回りたくましくなった子どもたちが元気に学校に戻ってくるのが楽しみです。
さて、ここからは7月のお知らせコーナーです。
特別支援教育課からのお知らせ
平成26年度「第2回特別支援学校作業技能大会~夢に向かってテクノチャレンジ2014~」開催
特別支援学校が一堂に会する作業技能大会を行います。
各学校が日頃の成果を披露することで、企業や事業主の皆さんに特別支援学校の取組を知っていただく機会とします。
特別支援学校で学ぶ生徒の将来の夢の実現を後押しするためにも、ぜひ会場にお越しください。
開催日:平成26年7月29日(火曜日)
会 場:ビッグパレットふくしま
内 容:作業作品の品評、あんま・マッサージなどのデモンストレーション、ビルクリーニングなどの作業技能検定部門など
詳しくはこちらを御覧ください。
→ http://www.edu-fukushima.gr.fks.ed.jp/
義務教育課からのお知らせ
平成26年度「モラル・エッセイ」コンテスト
東日本大震災以降、私たちはさまざまな経験をしたことと思います。
あなたの体験したちょっといいお話、モラルやマナー、いのちや家族、人との絆など、今伝えたいメッセージを作文にまとめてみませんか。
心温まるエピソードについては、福島県教育委員会が作成する道徳教材資料に掲載し、各学校に紹介したいと思います。
ご応募お待ちしております。
応募対象:県内在住の中学生(含む中学部)・高校生(含む高等部)・
一般の方々及び県外に避難された中学生(含む中学部)・高校生(含む高等部)・一般の方々
募集期間:平成26年7月1日(火曜日)から8月29日(金曜日)
詳しくはこちらを御覧ください。
→ 平成26年度「モラル・エッセイ」コンテスト[PDFファイル]
県立美術館からのお知らせ
コレクション・クッキングについて
美術作品を楽しむための料理の方法は無限に存在します。
本展は、高野正晃(1965年いわき市生・在住)、三瓶光夫(1974年須賀川市生・埼玉県在住)、古川弓子(1975年会津若松市生・東京都在住)、three(1986年福島市生・在住)と当館コレクションとのコラボレーション展です。
作品との対話の中からどんな素敵な料理が生み出されるか、ご期待ください。
期間:開催中 ~ 平成26年9月15日(月曜日・祝日)
入館料:一般・大学生 600円、高校生以下 無料
県立美術館 024-531-5511
http://www.art-museum.fks.ed.jp/
県立博物館からのお知らせ
アイヌの工芸 ―東北のコレクションを中心に―
アイヌの人たちが制作した工芸品は素朴で機能的なものが多く、自然とともに育まれた独自の文化性を持っています。現在、アイヌの工芸品や民具のコレクションは、北海道のみならず国内外の多くの博物館に収蔵されており、収蔵された経緯も実にさまざまです。
本展覧会では、東北地方で収蔵されているアイヌの工芸品や民具を中心に展示・公開し、収蔵経緯とあわせてご紹介することで、アイヌコレクションが現在まで受け継がれてきた過程にも着目します。
なお今回は、福島県と北海道(蝦夷地)やサハリン(樺太、江戸時代は唐太とも表記)を結ぶ資料も出品します。江戸時代、会津藩が樺太に出兵した時のようすを描いた絵巻。同藩が幕府の方針に沿って蝦夷地を分領支配した際の一コマを描いた屏風。こうした絵画資料の中にはアイヌの人々の描写も見られ、貴重な情報が含まれています。
会期中さまざまなイベントも予定しています。この機会に、ぜひアイヌの文化を身近に感じてください。
期間:開催中 ~ 平成26年9月15日(月曜日・祝日)
入館料:一般・大学生 300円、高校生 100円、小中学生 80円
県立博物館 0242-28-6000
http://www.general-museum.fks.ed.jp/
福島県文化財センター白河館「まほろん」からのお知らせ
「まほろん夏まつり」
平成26年7月27日(日曜日)10時00分から15時00分
いよいよ夏到来!
今年もまほろんは、楽しい体験が盛りだくさんの「まほろん夏まつり」を開催します!
真夏のまほろんを、ぜひご堪能ください。
まほろん 0248-21-0700
http://www.mahoron.fks.ed.jp/
編集後記
今月号の「日々の思い」で、学校事故防止の大切さについてまとめられています。安全・安心な学校づくりを心がけていても、不測の事態や小さな不注意が重なってしまった結果、大きな事故につながってしまうことがあります。
事故発生時は、児童生徒の安全・安心の確保が最優先とありますように、何よりも子供の命を守ることが最優先です。
平成23年9月、さいたま市の学校でAEDが使われなかったことで小学6年生の女児の命が失われました。さいたま市教育委員会ではその際の反省と教訓を未来に繋げるため、懸命の取組みが行われています。
http://aed-project.jp/movies/movie5.html
熱中症やプール事故の危険性が高まる時期、教育関係者の皆様におかれては、AEDの使用を含む心肺蘇生法のあり方について今一度おさらいをお願いします。
有事のときは、安全バイアスに陥らず最善を尽くしきることが大事です。
教育総務課長 大類 由紀子(おおるい ゆきこ)
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