【2013年3月21日(木曜日)】 Vol106
目次
- 日々の思い
県教育庁理事 清野 隆彦(せいの たかひこ) - リレーエッセイ
県教育委員会委員 小野 栄重(おの えいじゅう) - お薦めの一冊コーナー
- 学校自慢コーナー
- 伊達市立大石小学校
- 檜枝岐村立檜枝岐中学校
- 福島県立光南高等学校
- 福島県立喜多方桐桜高等学校
- お知らせ
- 編集後記
日々の思い
「異動にあたってのごあいさつ」
県教育庁理事 清野 隆彦(せいの たかひこ)
県庁の西庁舎9階で勤務している教員の皆さんは、毎日朝早くから夜遅くまで真面目に勤務されており、仕事ぶりも几帳面というのが私の印象です。
学校での勤務ぶりが目に見えるようです。でも、やはり学校現場とは勝手が違うのか 様々な場面で苦労されています。たまに私が冗談を言っても、緊張して笑ってもらえない ようなこともあります。教員として採用されたのに、何故ここにいるのだろうと思っている人も いるかもしれません。
初めて教育庁にきた方にとっては毎日が未知との遭遇で、一年が過ぎて今頃になれば、 ようやく余裕が出て一息つけるといったところでしょうか。
3月は一年の締めくくりの「卒業」の時期です。県の教育庁や教育事務所等で勤務されている皆さんとは若干立場は違いますが、私も今から10年ほど前、ご縁があり県内のある町の職員として勤務した頃に、教育関連行事に出席した経験があります。
学校行事では、毎年必ず同じ日に小中学校の入学式と卒業式があり、町長一人では回りきれないので、役場職員が分担して町長の祝辞を持って代理出席することになります。
私は、人前で話をすることは苦手で極力避けたいのですがそうもいかず、直前に渡される 祝辞を読んで手を加えて、学校では「来賓」として一番前に並んで、じっとその時を待ちます。
新入生に「みなさん、こんにちは。」と笑みをつくりながら声をかけた時の自分が会場内で一番緊張していたはずで、今でもその場面を思い起こすたびに恥ずかしくて赤面してしまいます。
大役を終えて席に戻る頃には少し余裕が出て、改めて周りを見回すと、主役の子どもたちの様子が見えてきます。
緊張が続いている子、もう飽きて早く帰りたい子、不安そうな顔、楽しそうな顔、 つまらなそうな顔、いろいろな個性が感じられます。そしてそれを見守る保護者の顔にも 様々な表情があります。
月日が流れて、卒業の季節になり、私はまた違う学校に代理出席して祝辞を述べます。 凛々しい顔となり、自信を持って巣立っていくお子さんとともに、達成感や満足感を持った 先生方という構図が見えてきます。
よく考えれば、たとえば担任を持つということは一年単位で児童生徒と関わり合うということで、十人十色という言葉がありますが、個性をまとめていくことは大変でしょうね。 それを何十年も実践してきた教育庁の先生方は、長年教員という大役を果たしてきた成果である「誇り」と「信念」と「自信」が感じられます。
教育庁に勤務されている皆さんを褒めたことはありませんが、私には持っていない すばらしい能力であり、尊敬に値する実績だと思います。
いずれ、本籍である学校現場に戻って教育長をはじめ県の教育委員会が何を考え、 何をしようとしているのか直接伝えてくれるはずです。
それは福島の子どもたちが、豊かな人間性、社会性を身に付け、活力に満ち、社会に貢献しながら自立して人生を切り開いていけるような人に育ってほしいという思いです。
勉強だけではなく、「“ふくしまの和”で奏でる、こころ豊かなたくましいひとづくり」という理念を忘れずに子どもたちに接してほしいというのがわれわれの願いなのですが、 現実には、これはかなり重い課題です。
これから何をなすべきか考えるうえで、東日本大震災と原発事故のことを考えない わけにはいきません。
この未曾有の悲惨な事件に関してはさまざまな意見や考えがありますが、2年間が経過したという事実と、何が変わったかと周りを見回すと、我々も皆さんも頑張っており、 前進しているところもありますが、復興に関する課題の根本的な解決に向けての道筋が見えてこない分野がまだまだあります。
そして何よりも、子どもの声が聞こえない社会には未来を感じないものです。
本県が豊かで活力のある未来を取り戻せるかどうかは、福島を思うすべての人たちの力にかかっていますが、安心してそこに住むためには、心の拠り所となる 学校が不可欠です。
そしてそこには先生がいないと成り立たないのです。
出会いと別れの繰り返しは人生の常ですが、先生と児童生徒との関係はその振り出しであり、やはり特別なものがあるような気がします。
子どもたちにとって先生は何時まで経っても先生だと前回のメルマガで書きましたが、 先生方それぞれが先生であるために、工夫しながら自身のモチベーションを維持しているのだろうとご推察申し上げます。
私が時々顔を出すスポーツジムに貼られている標語に「あせらず、あきず、あきらめず」 というのがあります。疲れた時は、一息ついてこの言葉を思い出してください。
今、教育に関しての世間の関心が高まろうとしています。世の中がこれからどのような方向に進んでいくのかわかりませんが、教育の理念は何時の時代でも不易なものです。
そして改めて思うのは、時間だけは平等に過ぎていくということです。
私は福島から外に出て生活したことは学生時代だけで、これまで福島漬けの生活でした。 「井の中の蛙」かもしれませんが、こんなによいところに生まれてよかったといつも思っていますし、これからもそうありたいと思います。
今の福島は震災と原発事故の痕跡が色濃く残って、瑕疵があります。
今はすべての県民が明るい未来を描ける状況にはないかもしれませんが、子どもたちが 夢と希望を持てる福島になるよう、我々大人一人一人が考えながら道筋を示してやることが 大切だと思います。そのためには、いずれは困難を払拭するという強い意志が必要です。
私も微力ですが、これからも「あせらず、あきず、あきらめず」を忘れずにふくしまの復興に取り組んでいくつもりです。一年の締めくくりの時期を迎え、私も教育庁を去ることとなり、 改めて教育庁のみなさん、そしてそれぞれの学校現場で毎日頑張っておられる先生方に御礼を申し上げ、また今後益々のご活躍とご健勝を祈念します。大変お世話になりました。
リレーエッセイ
「教師冥利とは」
県教育委員会委員 小野 栄重(おの えいじゅう)
私が県の教育委員を拝命して早三年、これまで様々な経験と貴重な出会いの連続であり、いわき商工会議所会頭としての仕事とはまた別の意味で子供たちの教育環境の充実のためやり甲斐と責任のある充実した時期を過ごさせていただき 大変感謝いたしております。民間からの助言、提言、私見をのべさせていただきながらの「光陰矢のごとし」のあっという間の三年間でした。
そんな中、毎年高校の卒業式では、はなむけの言葉をのべさせていただく機会があるのですが、最近の卒業式でのちょっとした変化に気がつきとても感動 いたしました。
通常は式の流れとして、最初から最後まで厳かな雰囲気で終始するのですが、 最近は校歌斉唱の後に式歌として今巷で流行している思い出の歌を心を込めて歌って場の雰囲気を和ましてくれたり、答辞の挨拶では先生と家族への率直な感謝の気持ちを自分の言葉で正直に心を込めて表現したりと、震災の苦しい時期を 乗り越えてきた逞しさと心の成長に目を見張る場面もありました。そして圧巻は、 卒業生退場の際、クラスごとに担任の先生を前にして、全員、大声で感謝の言葉を投げかけて去っていくその光景は実に粋ですがすがしく、そしてまた涙を誘う名場面でもありました。
思うに先生方は教師という職業を選んだ時点で、子供たちとのかかわりが 全てであり、子供たちの将来の自立に向けた素養と人格の形成に殆どの時間を 費やす、いわば最も過酷で責任の重い聖職とまで言われる職業でありますが、 その反面子供たちの成長に喜びを感じ毎年巣立っていく子供たちから心のこもった 感謝の言葉をもらい、一生教え子との交流が生まれる、大変やり甲斐のある職業でもあります。これこそまさに「教師冥利に尽きる」と言うことなのだと改めて実感しました。
震災以降福島県は様々な試練の連続ではありますが、先生方にはこの福島の地で子供たちの教育に携わることができることに意義を感じ、自信とプライドを持って福島から世界へ羽ばたく子供たちの育成にご尽力いただきます様今後ともよろしく お願い申し上げます。
お薦めの一冊コーナー
このコーナーでは、福島県立図書館司書のお薦めの一冊を御紹介します。
『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』(平田オリザ/著 2012 講談社)
「コミュニケーション能力」が過度に要求される昨今ですが、そもそもその中身について考えたことがありますか?グローバル化が進み日本社会が変貌する中、 世間が求めているコミュニケーション能力には実は矛盾が内包しています。 大阪大学の教授で劇作家の著者が発想を転換させ、これからのコミュニケーションを 乗り越えるための考え方を提案します。(県立図書館司書 K.T)
県立図書館024-535-3218
http://www.library.fks.ed.jp/
学校自慢コーナー
このコーナーでは、各学校の特色ある取組を御紹介します。詳しい内容を 県教育委員会のホームページで紹介していますので、御覧ください。
『パフォーミングアート「桑の実が見る夢」』
伊達市立大石小学校
地震と原発事故で傷ついた「ふるさと」に心を痛め、「ふるさと」への 自分たちの思いを形にしたいと考え、総合的な学習の時間で学んだことを もとに、「ふるさと霊山に生きること」「家族」をテーマに全校児童34名で 演劇づくりに取り組みました。
伊達市立大石小学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
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『郷土を愛し、夢に向かって学び続ける子ども』
檜枝岐村立檜枝岐中学校
本校は、今年度から檜枝岐小学校と小中一貫教育を推進しています。
小中合同入学式では、保護者や地域の方々が見守る中、小学1年生と 中学1年生を迎えることができました。
中学校の教師が小学校で授業をするなど、9年間の子どもの成長を考えた 教育活動を行っています。
檜枝岐村立檜枝岐中学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
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『輝く個性を力にかえて!(vol.1)』
福島県立光南高等学校
本校は、生徒一人一人の個性を尊重し、その個性を「磨き」「育てる」ことを 通して、進路実現や夢を叶える力にしてゆくだけでなく、その力を様々な場面で 周囲を支える力にしてゆくことを目標として取り組んでいます。
福島県立光南高等学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
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『校内研修〔防犯講習会〕を開催しました』
福島県立喜多方桐桜高等学校
平成25年2月18日、教員対象の防犯講習会を開催しました。
講師に喜多方警察署の現役の警察官の方々をお招きし、さすまたや ネットランチャーを使った演習を行いました。
学校・生徒の安全をあずかる教員の責任を改めて認識するよい機会となりました。
福島県立喜多方桐桜高等学校の学校自慢のページへ[PDFファイル]
福島県立喜多方桐桜高等学校のホームページへ
お知らせ
メールマガジンも今年度最後の号となりました。震災直後、被災した県庁の庁舎から パソコンを持ち出し、情報を発信してからはや2年。極限状況の中で必要なのは 「正しい情報」であることを担当者として痛感させられた2年でもあります。
メールマガジンという制限はありますが、これからも県教育委員会の思いを真摯に 伝えていきたいと思います。さて、ここからは3月のお知らせコーナーです。
「第6次福島県総合教育計画」の改定について
平成24年11月のメールマガジンでお知らせしたとおり、県教育委員会では、 福島県総合計画「ふくしま新生プラン」等を踏まえて「第6次福島県総合教育計画」の 見直しを行ってまいりました。
平成22年度の計画策定時に示した、本県が目指す教育の理念である 「“ふくしまの和”で奏でる、こころ豊かなたくましい人づくり」やその方向性を示す 3つの基本目標による教育の必要性はますます高まっていると考えられ、その実現 向けた20の教育施策において必要な改定をすることとしております。
計画期間は平成25年度から平成32年度までの8年間となりますが、一日も早い 教育環境の復旧・復興を図るための教育行政を今後とも推進してまいります。
「第6次福島県総合教育計画」(改定版)及び「平成25年度アクションプラン」 については、3月下旬に県教育委員会ホームページに掲載いたします。
教育総務課 024-521-7759
県教育委員会トップページはこちら
県立図書館からのお知らせ
子どものための科学読みもの 展 ~みる・かんがえる・たしかめる~
子どもたちの好奇心や興味を引き出す“科学読みもの”の多様さやおもしろさを 御紹介します。当館所蔵の子どものための科学よみものを、「驚き・感動」、 「観察」、「体験」、「探求」の4つのテーマで展示しています。
期間:開催中~平成25年6月5日(水曜日)
場所:県立図書館 展示コーナー
県立図書館 024-535-3220
http://www.library.fks.ed.jp/
県立美術館 臨時休館のお知らせ
県立美術館では、館内消毒のため下記の期間を臨時休館します。
御不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
臨時休館の期間:平成25年3月25日(月曜日)から4月5日(金曜日)
予告「横尾忠則ポスター」
現在も第一線で活躍するグラフィック・デザイナー、美術家の横尾忠則の 出発点でもあり創作の中心にあったポスターに焦点をあてます。版下などの 資料を含めた約400点の作品によって、エネルギッシュな横尾芸術の軌跡を たどります。お楽しみに!
期間:平成25年4月20日(土曜日)から6月16日(日曜日)
県立美術館 024-531-5511
http://www.art-museum.fks.ed.jp/
県立博物館からのお知らせ
パネル展「輝ける会津女性 新島八重を知ろう!」
平成25年NHK大河ドラマ特別展「八重の桜」(福島展:5月17日から 7月3日)の開催にあたり、事前の周知事業の一環として、新島八重の生涯を 知るための写真パネルおよびゆかりの資料を展示します。
写真パネルの他、八重ゆかりの資料などの展示を予定しています。八重の ドレスは、同志社女子大学生活科学部人間生活学科・清水久美子教授の ゼミ生のみなさんが、写真に基づき細部まで忠実に再現したもので、 福島県特産の「川俣シルク」を使用しています。
会期:開催中~5月6日(月曜日)まで
会場:福島県立博物館特設会場(観覧無料)
県立博物館 0242-28-6000
http://www.general-museum.fks.ed.jp/
福島県文化財センター白河館「まほろん」からのお知らせ
特別企画展「救出された双葉郡の文化財1」
東日本大震災では福島県内の文化財も大きな被害を受け、原子力発電所事故で、 警戒区域内の資料館に収蔵された多くの文化財は保管環境が悪化しています。
そこで県教育委員会、関連自治体等では、国の支援を受けて取り残された文化財を 救出し、順次県文化財センター白河館(まほろん)敷地内の仮保管施設に収納します。
双葉町・大熊町・富岡町からは、考古資料・古文書・絵画・民具など多種多様な 文化財が救出されました。双葉町の法螺貝(江戸時代)、大熊町の道平遺跡出土 土器(縄文時代)、富岡町の軸物「多古藩陣屋之図」(江戸時代)など、いずれも 双葉郡域の歴史・文化・風土を物語る貴重な資料です。
救出された文化財を通して双葉郡の姿を再確認するこの展示、是非御覧ください。
会期:開催中~6月9日(日曜日)
観覧料:無料
まほろん 0248-21-0700
http://www.mahoron.fks.ed.jp/
編集後記
本号のお知らせの欄にも掲載したとおり、年度内に第6次教育総合計画を改定 いたします。
現在の総合教育計画は、本県が目指す教育の基本理念として「“ふくしまの和”で 奏でる、こころ豊かなたくましい人づくり」を掲げています。この理念には、温かい 県民性やお互いを支え合う地域社会の絆といった本県の特性を生かしながら、 ハーモニーを奏でるように人づくりを進めていく、という「想い」を込めたとされています。
先の東日本大震災により、こうした温かい県民性や堅固な絆が福島県民の 誇りであり、財産であることを、改めて認識することになりました。これらを通じて 人づくりを進めていくという「想い」は、震災を経た本県にとって以前にもまして 必要です。
このため、今回の改定に当たっては、基本理念を変えることなく、そのまま 継承することとしています。
県教育委員会職員一同、この基本理念の旗のもと「夢・希望・笑顔に満ちた “新生ふくしま”」の実現を目指してまいります。
教育総務課長 森下 平(もりした たいら)
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