裁決手続の流れ
裁決手続の流れ
裁決手続の前提として、起業者が施行する事業について、土地収用法における事業認定や、都市計画法における事業認可を受けている必要があります。
事業認定後の裁決手続については次のとおりになります。
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1 裁決申請及び明渡裁決申立て
収用の裁決の申請には、土地の所有権などを取得するための裁決申請と建物などを移転して土地の明渡しを求める明渡裁決申立ての2つがあります。明渡裁決申立ては、裁決申請と同時か又はその後に行われます。
裁決申請の請求 | 事業認定の告示後は、土地所有者又は関係人(抵当権者などは除く)は、起業者に対して自己の権利に係る土地について裁決申請を行うよう請求することができます。 |
補償金の支払請求 |
事業認定の告示後であれば、土地所有者又は関係人(抵当権者などは除く)は、収用委員会の裁決前であっても、起業者に対して土地に関する補償金の支払いを請求することができます。裁決申請前に補償金の支払請求をしようとする場合は、裁決申請の請求と併せてしなければなりません。補償金の支払請求があると、起業者は、原則として2か月以内に起業者見積りによる補償金を支払わなければなりません。 |
明渡裁決申立て | 起業者から裁決申請があり、明渡裁決申立てがなされていない場合には、土地所有者又は関係人は、収用委員会に明渡裁決申立てをすることができます。 |
2 裁決申請書及び明渡裁決申立書の受理
裁決申請又は明渡裁決申立てがあったときは、収用委員会はその申請書又は申立書が法令に適合しているかどうか書類審査を行い、適合している場合は受理することになります。そして、その申請書又は申立書の写しを収用しようとする土地の所在する市町村長に送付するとともに、土地所有者及び関係人に裁決申請又は明渡裁決申立てがあった旨を通知します。
3 裁決申請書及び明渡裁決申立書の公告・縦覧
収用しようとする土地の所在する市町村長は、裁決申請又は明渡裁決申立てがあったことなどを公告し、裁決申請書又は明渡裁決申立書の写しを2週間縦覧に供します。
土地所有者及び関係人は、縦覧期間内に、収用委員会に損失の補償、明渡しの期限などについて意見書を提出することができます。ただし、縦覧期間が経過した後に意見書が提出された場合においても、収用委員会が相当の理由があると認めるときは、受理します。 |
★意見書の様式は法令で定められていませんが、少なくとも、意見書には作成の日付け、提出者の住所・氏名を記載し、押印を忘れないでください。 ★複数人を代表して1人が意見書を提出する場合には、その全員からの委任状が必要になります。 |
4 裁決手続開始の決定及び登記
裁決申請書の2週間の縦覧期間が経過すると、収用委員会は、裁決手続の開始を決定してその旨を公告するとともに、収用しようとする土地を管轄する登記所に裁決手続開始の登記を嘱託します。
この登記があると相続人などを除き、登記後の権利の移動について起業者に対抗できなくなり、起業者及び収用委員会はこの時点での権利者を当事者として扱うこととなります。
5 収用委員会による審理
収用委員会は裁決申請書の縦覧終了後、起業者、土地所有者及び関係人の意見を聞くために、公開で審理を開きます。
起業者、土地所有者及び関係人には、あらかじめ審理の期日及び場所を通知します。(代理人が出席する場合は、委任状が必要になります。)
審理は、会長が指揮し、おおむね次のようなことについて意見を聞きます。
・収用しようとする土地の区域
・損失の補償
・権利取得の時期
・明渡しの期限
また、収用委員会は、審理や調査のために必要があると認めるときは、次のことができます。
・起業者、土地所有者、関係人などに出頭を命じて審問し、意見書や資料の提出を命じること
・鑑定人に鑑定させること
・土地又は物件について現地調査をすること
原則として審理が終了(結審)するまでの間に、次のような事項について、意見書を提出し、審理において意見を述べることができます。 ・縦覧期間内に提出した意見書に書かれた内容の説明 ・損失補償に関する事項 ・収用委員会から提出を命じられたり、説明を求められた事項 |
6 裁決
審理において、当事者の主張を聞き、意見の対立(争点)を整理して、審理を終結(結審)します。通知をしたにもかかわらず、審理に欠席されますと、そのまま結審する場合があります。
収用委員会では、審理で明らかになった争点について、必要な調査・検討を行い、裁決します。裁決は、裁決申請及び明渡裁決申立てに対する収用委員会の最終的な判断です。
裁決には、権利取得裁決と明渡裁決があります。
権利取得裁決 | 明渡裁決 |
収用する土地の区域 |
土地の明渡しに伴う損失の補償 |
土地に関する権利(所有権、賃借権、地上権、抵当権など)に対する損失の補償 | 明渡しの期限 |
権利取得の時期 | |
☆裁決があると、起業者は、権利取得の時期までに土地所有者や関係人に補償金を支払い、権利取得の時期に土地の完全な所有権を取得します。 | ☆裁決があると、起業者は、明渡しの期限までに補償金を支払い、土地所有者や関係人は物件を移転し、土地を明け渡さなければなりません。 |
★補償金の受領を拒否しても、起業者が供託をすれば、支払われたのと同様の効果が生じます。
★裁決前に、当事者間で合意が成立した場合は、任意契約をして裁決申請を取り下げるか、収用委員会で和解調書を作成することができます。
7 和解
和解は、裁決申請後であっても、当事者間の話し合いで円満に解決することが望ましいため設けられた制度です。
和解には、裁決すべき事項について、起業者、土地所有者及び関係人の全員の合意が必要です。
なお、収用委員会は、審理の途中において、いつでも、起業者、土地所有者及び関係人に和解を勧告することができます。
合意があったときは、全員から収用委員会に対し、和解調書の作成の申請をします。
和解調書が作成されると、収用の裁決があったのと同様の効果が生じます。