ラウンド農ふくしまWeb-センター通信(R3試験研究・業務の紹介)-
令和3年度 試験研究・業務の紹介
流通加工科の業務紹介
流通加工科では、福島県産農産物の加工技術、品質保持技術、機能性成分等の分析に関する研究に取り組んでいます。
また、「地域産業6次化」を推進するため、ハイテクプラザ会津若松技術支援センター、農業短期大学校研修部とともに設置された「福島県県産品加工支援センター」の構成機関として、食品加工や流通に関する技術相談支援にも取り組んでいます。
福島県県産品加工支援センターHP(https://www.pref.fukushima.lg.jp/w4/fpppsc/)
さらに、農業短期大学校で学生に対する食品製造演習の授業を行っています。
【令和4年3月 生産環境部流通加工科】
肉用牛のAI超音波肉質診断
畜産研究所では、人工知能(以下、AI)を活用して、生きている牛から枝肉になった時の霜降り度合いなど、肉質を推定する技術を開発しました。
AIには、出荷前の牛に超音波をあてた時の白黒の画像データと、その牛を実際に出荷して、枝肉になった時の画像データを組み合わせて学習させています。このAIが学習したデータを元に、牛の超音波画像から将来枝肉になった時の画像を予測し表示します。
この技術を活用することで、誰でも生きている牛から将来の霜降り度合いが推定できます。更に今まで勘と経験に頼っていたものを見える化できるだけでなく、肥育の途中で出荷時期を判断することができ、早期出荷によるコスト低減や共励会への出品による価格向上が期待できます。
当所では、この技術の精度向上のためのデータ蓄積を今後も行うとともに、普及機関等と連携して、県内和牛肥育農家の経営安定や福島牛のブランド力向上に貢献してまいります。
【令和4年3月 畜産研究所】
分析課のしごと
(分析課の設置と体制)
2011年3月の東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故により、福島県内には放射性物質が拡散され、県産農林水産物の生産・流通・消費にとって大きな障害となりました。さらに、風評被害と重なり生産者の皆さんは深刻な状況でした。
そこで、農林水産物の食の安全と安心を確保するため、放射性物質を測定する施設が必要となりました。その結果、農業総合センター内に分析課が新設されました。早いものであれから11年の年月が経ちましたが継続して分析を行っています。現在の体制ですが、課長以下9名体制で放射性物質を測定するゲルマニウム半導体検出器11台を稼働させて県産農林水産物の検査を実施しています。
過去10年間の出荷前の検査では約25万点分析していますが、2020年度の検査点数は、およそ480品目、約1万5千点で、基準値を超えたものはありませんでした。
これらの分析結果は速やかに国に報告するとともに、県のHPで公表されています。また、結果やモニタリングに関わる事柄をポスター化し、農業総合センター内に展示するとともに、国内外からの視察や取材に活用して福島県の食の安全・安心をPRしています。
(農林水産物の緊急時環境放射線モニタリング)
法律に基づき、農林事務所等が採取した試料の放射性物質(放射性セシウム)を測定し、測定結果を国に報告しています。
*測定している食品群は以下のとおりです。
玄米、穀類(玄米を除く)、野菜、果実、原乳、肉類、鶏卵、はちみつ、牧草・飼料作物、水産物(海産,河川・湖沼,内水面養殖)、山菜(野生,栽培)、きのこ(野生,栽培)、果実(野生)、樹実類
(測定結果の公表)
福島県農林水産物・加工食品モニタリング情報HP 、スマホから御覧いただけます。
【令和4年2月 安全農業推進部分析課】
鳥獣対策試験について
イノシシやニホンジカ、ツキノワグマなど野生鳥獣によって農作物が食べられたり、農地が荒らされるなどの被害が増えており、企画技術科では、農作物をそれらの被害から守る対策についての試験に取り組んでいます。
現在は、動物を感知すると暗闇でも自動で撮影し画像を通知するカメラと、通知された画像からAIがどんな動物かを判別するソフトを使用して、鳥獣の出没傾向が簡単に調査できるかどうかを研究中です。
また、2019年からは、農作物を鳥獣から守るために設置しているワイヤーメッシュ柵という侵入防止柵が、積雪の多い地域でも利用可能かどうかについて調査しています。そのため、柵の試験は、この真冬がまさに調査期間です。
昨年は、防寒対策をし、かんじきやスノーシューを履いて、1m以上降り積もった雪の上を歩き調査をしました。研究としては一定の積雪があった方が比較ができるため、積雪状況を気にしながら、今年も調査を進めます。
【令和4年1月 企画経営部企画技術科】
有機農産物の認証業務について
有機農産物を販売するに当たっては、生産行程の認証を受ける必要があることをご存知ですか。
認証機関には、民間団体、公益財団法人、NPO法人などがありますが、福島県では県自らが平成18年に有機農産物の登録認定機関(現 登録認証機関)となり、これまでにのべ121事業者の認証を行ってきました(令和3年12月1日現在)。
認証を新たに取得したい方の審査(審査の流れは図1のとおり)や、認証を取得された方の認証を継続するための審査を行っています。
有機農業に興味がある方、認証の取得を考えている方は、年に2回(6月、12月開催予定)、センターで講習会を開催していますので、ご参加ください。
有機農産物の認証手続きの詳細や講習会の日程などについては、ホームページに情報を掲載しています。ぜひ御覧ください。
図2 有機JASマーク 写真1 実地調査の様子 写真2 講習会の様子
これからも消費者の方に安心して有機農産物を手に取ってもらえるよう、認証業務を進めていきます。
【令和3年12月 安全農業推進部指導・有機認証課】
「畑作科」のしごと
畑作科では、大豆、小麦、大麦、エゴマ、葉たばこ、ソバ、ラッカセイを畑で作っています。
以前には蚕(かいこ)、コンニャクイモ、ナタネ、ヒマワリ、ソルガム、ケナフなど、いろいろなものを育てていました。
実りの秋を迎え、稲刈りが終わると農作業も一段落!と思われるかもしれませんが、畑作科のしごとが忙しくなるのは実はここから。エゴマの収穫、麦の種まき、大豆の収穫…と作業は続き、肌寒くなった畑を走り回っている毎日です。
【令和3年11月 作物園芸部畑作科】
「作物保護科」のしごと
作物保護科では、稲や野菜・花きを病害虫から守る方法を研究しています。
稲では、穂が枯れて米が実らなくなる、いもち病(写真1)という病気に対する新しい薬剤の効果確認や、お米の表面に時々見られる褐色や白色の斑点の原因である、カメムシ(写真2)の県内での生息状況を確認し、被害を防ぐ方法を研究しています。
野菜では、農家の方々が主要な病害虫を診断しやすくなるように、国の研究機関と連携して、AI(人工知能)を活用してキュウリの病害虫診断ができるスマホ用アプリの開発に取り組んでいます。
また、株が枯れてしまう「トマトかいよう病」という病気がどこから入ってきたのかや、害虫のコナジラミ類に現在使われている薬剤の効果が低下していないかどうかを調べています。
花きでは、キクの商品価値を下げてしまうキク白さび病を、環境にやさしく、効果的に防ぐ方法の開発や、県内で2018年に新たに発生し、被害が拡大しているトルコギキョウ斑点病の発生条件を調べています。
【令和3年10月15日 生産環境部作物保護科】
営農再開後の水田生物調査
東京電力福島第一原子力発電所事故後には、多くの水田で米作りができなくなりましたが、除染が進み、少しずつ水田の利用が再開しています。
このように一度中断していた水田には生き物は戻ってくるのでしょうか?
そこで、営農を再開した水田(4市町村11地区)にどんな生物(カエル類、アシナガグモ類、トンボ類、水生昆虫)がいるかを、平成30年から令和2年までの3年間調査しました。
この調査で、アキアカネ(写真)は多数確認されたほか、トウキョウダルマガエル(写真)は徐々にですが戻りつつあることが確認されました。また、ヒメゲンゴロウ、コガムシ、コオイムシといった水生昆虫は、営農を中断し、表面の土をはぎとったり、新しい土を入れたりした水田では24種が確認され、中断していない水田よりも多い傾向にありました。
これらのデータから、生物の多様性を評価したところ、営農を再開した水田の多くは多様性が高いことがわかったのです。営農を中断していた水田でも再開すれば、生き物たちはすぐに戻ってくるため、中断の影響は少ないと考えられました。
【令和3年10月11日 浜地域研究所】
広報のしごとの裏側
皆さんは県の取組を紹介する県政テレビ広報番組をご存知ですか。
農業総合センターでは、センターの取組を広く知ってもらうために、ホームページや広報誌での情報発信のほか、県が制作している県政テレビ広報なども活用しています。
先日、この県政テレビ広報番組の取材に企画技術科の担当が同行してきました。今回のテーマは『県オリジナル花き新品種の紹介』です。広報担当としては、当日までは雨は降らないだろうか、花は綺麗に揃って開花してくれるだろうかなど心配が絶えず、当日は当日で出演する職員や農家の方が緊張せずに話せるだろうかなど、ドキドキしながら見守っていました。実際は、雨も降らず、リンドウとカラーはとっても綺麗でしたし、私の心配をよそに出演者の皆さんは慣れた様子で完璧に対応してくださっていました。
県政テレビ広報はたった2~3分の番組ですが、数週間前から企画書や台本を作成するほか、今回は早朝出発で取材に1日かかっています。番組制作の大変さを痛感しましたが、番組を通じて県オリジナル花き品種が皆さんの目に留まれば嬉しいです。
今回は広報の裏側を少しご紹介しました。県政広報番組、ぜひご覧ください!
【令和3年9月27日 企画技術科】
野菜科のしごと
野菜科では、野菜生産において生産者の皆さんが安定した収量を確保できるように、新しい栽培方法について研究しています。
今年は、福島県内の主要野菜であるキュウリ、トマトを栽培しているハウスで夏の高温により収量が落ちこむことを防ぐための試験研究や、福島県で育成したアスパラガスやイチゴについて、収量性や品質がより高くなる栽培方法を開発するための試験研究などに取り組んでいます。
担当研究員は暑い日も雨の日も毎日、ハウスや露地ほ場で生育や収量調査をしています。
(キュウリ、トマト、アスパラガスの様子)
【令和3年9月1日 作物園芸部野菜科】
浜地域農業再生研究センターの紹介
浜地域農業再生研究センターは、東京電力福島第一原子力発電所事故による避難地域等の営農再開・農業再生を図るために、平成27年度に南相馬市原町区に開設された機関です。
農家や市町村等と協力して、避難地域等の課題を解決できるように実証研究を行っています。具体的には、国や県の試験研究機関が開発した技術を現地向けにアレンジして実証し、効果はもちろん経済性や作業性等を評価します。
得られた成果をパンフレットやセミナー等で紹介し、さらに利用規模を拡大していくことで、避難地域等における一日も早い営農再開を支援しています。
(実証ほ場の放射性セシウムの測定) (緑肥作物による除染後農地の地力回復)
(ICT囲いわなによるイノシシの捕獲)(タマネギの機械化作業体系の実証) (浜通りに適した花き生産の実証)
【令和3年8月25日 浜地域農業再生研究センター】
農業と地球温暖化の関わり ~農地管理実態調査について~
環境・作物栄養科では、土壌や肥料に関する研究や、農地や農業における放射性物質対策に関連した試験研究等の業務を行っています。その中で地球温暖化防止対策に関する試験も行っています。
地球温暖化の進行は、私たちの生活への影響も懸念されており、世界規模でこの地球温暖化を防止するために、各国で温室効果ガス削減の取組が行われています。
農業分野でも対策が進められていますが、そもそもの農地での温室効果ガスの吸収・排出量を知る必要があります。このため、全国の都道府県の試験研究機関で温室効果ガスの吸収・排出量を算定するための基準となるデータがとられ、そのデータから国全体の吸収・排出量が推定されています。具体的なデータの1つは土壌中の有機炭素の量です。聞きなれない言葉ですが、農地に堆肥などの有機物を施用すると、この有機物の一部が分解されにくい土壌有機炭素となり土壌中に貯留されて温室効果ガスの排出量削減に貢献します。
福島県農業総合センターにおいても、毎年、有機物を施用している所内ほ場と栽培条件が異なる土壌を調査し、有機炭素蓄積量を測定しています。現地ほ場は、県内各地に計50地点もあり、4年間で1巡して調査します。また、測定に併せて生産者の皆さんがどのような有機物をどれくらい施用したかや管理方法に関するアンケートを行います。こうした栽培条件の調査や農地ごとの土壌への炭素蓄積能力や実態の調査が環境を守る取組につながっています。
(農地管理のイメージ) (栽培ほ場の生育確認の様子)
【令和3年7月16日 生産環境部環境・作物栄養科】
有機農業推進室のしごと
有機農業推進室では、有機農業に関する「試験研究」のほか、「有機農業の普及啓発」や「有機農業者の育成・確保支援」に関する業務を行っております。
「試験研究」では、雑草対策や有機栽培に向く園芸作物の選定などの技術実証や開発を行っています。
「普及啓発・農業者支援」では、新規就農者を始めとする有機栽培に取り組む農業者からの栽培技術に関する相談に応じています。また、首都圏の販売店と生産者をつなぎ、販路確保に取り組むほか、多くの消費者に有機農産物を知って・食べてもらえるよう啓発活動にも力を入れています。
有機農業推進室では、有機農業に関する相談を随時受け付けておりますので、農業総合センターにお越しの際には、お気軽にお立ち寄りください。