喜多方市高郷町揚津地内で発生した地すべりについて
喜多方市高郷町揚津地内で発生した地すべりについて
地すべり初期の状況 | 地すべり活発化後の状況 | 農林水産省地すべり地質官との現地調査 |
地すべりの概要
平成30年4月20日に本地区内を通る県道「新郷・荻野停車場線」の路面に亀裂が確認された。その後、路面の亀裂や段差の拡大が明確となり、亀裂の日変位量が10mmを越えて通行が困難となったため、同年5月4日に県道が通行止めとなった。
その後も、現場周辺の地すべり挙動は非常に激しく、県道路面の亀裂が拡大し、住宅近くにも拡大しつつあることから、5月25日に喜多方市による現地災害対策本部を立ち上げ、5月29日に1世帯2人に対して、避難勧告を発令した。
「地すべりブロックの総面積は約4ha」と小規模であったが、地すべりの移動土塊の規模は概ね、平均幅200m、長さ200m、すべり土塊の平均層厚25m、土塊量100万㎥と推察され、日を追うごとに時間移動量が増大する危険な状況となり、更なる進行により揚津行政区(3集落、2世帯、59名)の全世帯の避難や阿賀川の河川閉塞による周辺の道路・家屋や5キロ上流の山郷ダム(山郷発電所・第二山郷発電所)への影響が心配されたため、県会津農林事務所が地すべり抑止の緊急対応に着手し、ディープウェル(深井戸)を設置し、ポンプによる地下水の強制排水による応急対策工及び集水井の施工などによる恒久対策工を実施したことにより、地すべり活動は沈静化が図られた。
○地すべりによる主な被災内容
住 家 |
1棟の基礎部に亀裂と建物の歪み |
道 路 |
県道新郷荻野停車場線の約600mの被災(1,700mを通行止め) |
農 地 |
田1.70ha 畑0.40haで耕作不能(関係農家戸数16戸) |
河 川 |
阿賀川への土砂崩落(平成30年5月20日確認) |
送電鉄塔 |
高圧送電鉄塔1基が変形、破断(高圧送電鉄塔2基撤去) |
地すべりの被災状況
◆県道の被災状況 | ◆県道側溝枡の被災状況 |
◆地すべりブロック境界の被災状況 | ◆農道の被災状況 |
◆農地の被災状況 | ◆高圧送電鉄塔撤去 |
地すべり初期ドローンによる現地確認
被災直後の地すべりの移動状況(5月31日・6月15日)
を6月15日の航空写真と合成処理
しています。
県が行った地すべりの応急対策工事の内容
地すべりブロックの移動速度が大きく地すべりブロック内での調査すら危険で出来ない状況であることから、地すべり活動を抑えるため地すべりブロック外に緊急的な対策としてディープウェルを設置し、ポンプによる地下水の強制排水に着手した結果、すべり土塊の移動は早期の沈静化に繋がった。
また、地すべりブロック内の表面水の地下浸透を防ぐための沢切り替え工事及び地すべりブロック内に流入していた排水路切り替え工事を行った。
これにより、地すべり土塊内の調査及び恒久対策工事が実施可能となった。
ディープウェル工事 | 沢切り替え工事 | 排水路切り替え工事 |
県が行った地すべりの調査業務
地すべりの観測を開始すると伴に、地質調査の調査結果を基に災害関連緊急地すべり対策事業の計画を策定した。
その後、災害関連緊急地すべり対策事業の採択を受けて補助事業に移行し、地すべり移動の監視をweb等による24時間体制で続けるとともに対策工事の効果確認のための観測を行った。
調査ボーリング | 地上伸縮計 | 移動計(GPS) |
地すべり防止区域の追加指定
今回の地すべり発生した範囲の約6割は、農村振興局所管の既指定区域(揚津区域)に指定されていない箇所であったため、地すべり防止施設を設置するためには地すべり防止区域に追加指定を行った(H30.9.4)。
出典:国土地理院発行5.0万分の1地形図を加工して作成
県が行った地すべりの恒久対策工事の内容
恒久対策工事として、緊急に実施したディープウェルによる強制排水から集水井による自然排水に切り替えるとともに、仮設で実施した沢や排水路の切り替え工事を本工事で実施。
その後、農地復旧工事も実施した。
【集水井工事 8基(口径φ3.50m 掘削深 約16~31m、集水ボーリング、リリーフウェル)】 |
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【沢の切り替え工事】 | 【農地の復旧】 |
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営農の再開と県道の通行止め解除
○営農再開
本工事は、令和元年5月の連休明けから作業を開始して1.80haの農地復旧工事が完了し、令和2年に2年ぶりに営農再開された。また、令和4年度には、全ての農地で営農再開された。
○県道の復旧
平成30年度5月4日から通行止めだった県道新郷荻野停車場線の復旧工事が完了し、令和3年9月25日に約3年4ヶ月ぶりの通行止め解除となった。
福島民報(平成31年4月16日掲載) 福島民報(平成31年4月16日掲載)
恒久対策の集水井等の工事は、計画どおり令和3年12月に完了した。
移動量観測や地下水観測により安定解析を行った結果、地すべり対策工事の効果は確実に発揮されており、地すべりも鎮静化したため、本地区の地すべり対策工事は令和4年3月に概成した。