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うつ病と自殺について 「高齢者への取り組み」

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年12月1日更新

高齢者の自殺を予防する取り組み

自殺は予防できるのか

新潟県の松之山町では、昭和61年から自殺予防活動を実施した結果、昭和45年から61年までの17年間で、434,6人/10万人と全国平均の約9倍も高かった老人自殺率が、自殺予防活動を開始した翌年の昭和62年から平成12年までの14年間では、96,2人/10万人と4分の1以下に減少しました。うつ病を手がかりに自殺念慮のある高齢者をスクリーニングし、適切に治療につなげたり、危険のある人を継続的にフォローすることが、高齢者自殺を予防することに有効だったわけです。もちろん、地元診療所や精神科医、保健所、精神保健福祉センターなどの協力体制があって得られた成果です。

松之山町における高齢者自殺予防システム

うつ病のスクリーニング(「健康についてのアンケート」調査・面接対象高齢者の選定)

 ⇒精神科医による診断面接
  (自殺の恐れのあるうつ病高齢者の発見)

 ⇒ミーティング
  (精神科医 :治療方針の決定、診療所医師と保健師への助言)
  (診療所医師:治朗計画作成)
  (保健師  :保健福祉的ケアの計画作成)

 ⇒追跡とケア
  (精神科医 :対象高齢者の定期的診察面接)
  (診療所医師:日常診療でのうつ病治療)
  (保健師  :うつ病高齢者の病状観察 保健福祉的ケアの実践)

松之山町では高齢者への全数調査を行ったのですが、必ずしも全数でなくとも啓蒙効果を伴い、予防効果が発揮されるとの報告もあります。今後は、人口規模や地域の特性に合った方法で、高齢者のうつ病を早期に発見し、ケアしていくシステムづくりが望まれます。

うつ対策

一次予防(健康増進、疾病予防)

老人保健事業の健康教育、健康相談の場を活用して、うつ病についての正しい知識の普及啓発を行うことができます。また、脳血管疾患既往後の高齢者にはうつ病にかかる人もいますので、機能訓練事業に関わるスタッフも正しい知識をもっておくと良いでしょう。また、閉じこもりや社会的孤立を予防し生きがいづくりにつながるような「人との関係をつなぐ」場づくりなど積極的な対策も大切です。

二次予防(早期発見、早期治療)

老人保健事業の健康審査の機会などに質問票を用いたスクリーニングの実施や必要により相談や受診勧奨などの保健指導を行うことができます。

三次予防

相談、訪問活動を通じ、うつ病の危険が高い人やすでにうつ病にかかっている人、その家族への支援など個別ケアが重要です。回復までに長い期間かかる方もいるので、本人や家族がうつ病についての理解を深め、セルフケアの力を高め、再発予防ができるような支援を個別または集団での関わりの中で考えていけると良いと思われます。障害をもつ高齢者や自宅に閉じこもり状態となっている高齢者は、うつ病にかかっている者が比較的多いと推測されます。直接、高齢者の介護にあたるヘルパーなどの職員がうつ病についての正しい知識を持つことはとても重要です。

うつ病の普及・啓発活動やスクリーニングなどの保健活動は、高齢者自身やその家族をうつに対する気付きを高めますし、窓口としての役割も明確になり気軽に相談や受診しやすい地域づくりにも重要です。支援に関わる職員の側も、できるだけ1人で抱え込まずに、一般の臨床医や精神科医、保健所、精神保健福祉センター、福祉事務所などの地域の関係機関の職員を含めた検討会など地域ぐるみで考える体制づくりが重要です。今後は、既存の事業を実施する際にも、うつ対策や自殺予防についての視点を入れて見直してみることが活動の一歩になるのではないでしょうか。