うつ病と自殺について 「自殺のサイン・自殺防止のための診断基準」
自殺のサイン・自殺防止のための診断基準
自殺の前兆
世間では自殺は発作的に行われるという印象が強いようです。しかし、実際にはそうではありません。ご遺族の方々は自殺者の生前の生活習慣や言動が変わったことに気付いていました。他人には気付かれない些細な言動の変化でも、寝食を共にしている家族の方々は敏感に感じていました。ご遺族の方々が気付いていた言動の変化を下表にまとめました。
このような変化を友人や職場の同僚が察するようでは事態は深刻です。これらの多くは鬱状態に関係する変化や徴候です。鬱状態となる原因の多くは日常生活の「ストレス」です。そして「ストレス」から「鬱状態」に進み、「鬱状態」から「自殺企図」へ繋がるのです。このような流れを十分理解しておく必要があります。
鬱状態は「心の病気」で、風邪のように誰でも罹る可能性がある病気ですし、適切に治療すれば直る病気です。しかし、鬱状態になりますと本人は引きこもりがちとなりますし、自分の「心の病気」に気付いていません。家族はどうしたらよいのか対応に苦慮します。しかし、苦慮している場合ではありません。
自殺を疑わせるような言動の変化や徴候が多く現れてきたら、本人が拒んでも、家族は迷わず医療機関へ連れて行くべきです。お年寄りの生活支援に関わる職員が、これらのサインに気づいた際はできるだけ早期に治療に結びつけることができるように本人を支える家族やその他の周りの方々と話し合って下さい。それが最も有効な自殺防止策なのです。
自殺防止のための診断基準
家族の一員で以下の項目に当てはまる方はいませんか
1,最近友人や知人との付き合いは少なく、一人でいることが多い 2,最近ストレスになるようなことがあった 3,ここ3カ月、むやみに自分を責めたり、自信がなさそうな話しぶりや態度をしたり、あるいは暗い内容の話をしたりする 4,何か病気を苦にしているようだ 5,ここ6カ月の行動で、何か以前と変わったなと感じることがある 6,部屋や家にひきこもりがちで、外出するのがおっくうそうだ 7,ここ3カ月、眠れない日が多いようだ 8,すぐに興奮したり、落ち込んだり、気分の変わりやすい傾向があるようだ 9,ここ3カ月、あまり食欲がないか、あるいはやせてきたようだ 10, 精神科、神経科、あるいは心療内科を受診している |
3~5項目該当:イエローカードです。早めに医療機関を受診して下さい
6項目以上該当:レッドカードです。すぐに医療機関を受診して下さい
出展 樋口輝彦編集:自殺企図 その病理と予防・管理 2003