自殺に関する統計(指標の計算方法など)
関連資料:自殺対策のための情報交換メール「自殺対策で用いられる指標」 [Wordファイル48KB])
自殺対策を行う上で自殺に関する指標(死亡率、標準化死亡比など)には必ず触れます。
統計に詳しくない人でも調べたり計算したりできるように、このページを作成しました。
データを集めて指標を計算してみましょう!
1.自殺に関連する指標の計算に必要な統計データを集める
必要なデータは「自殺者数」と「人口」です。
(1)または(2)から自殺者数を調べます。(全自殺者数および年齢別自殺者数)
(3)から全国の人口を、(4)から市町村の人口を調べます。(全人口および年齢別人口)
自殺率を求めるときは、該当期間の中間時点での人口を使います。
※ただし、年自殺率を求めるときは、国勢調査に合わせて10月1日人口を使うことが多いです。
資料 | 掲載サイト | 備考 |
---|---|---|
(1) 自殺統計(警察庁) | 地域における自殺の基礎資料 (厚生労働省ホームページ) |
都道府県と市町村の自殺者数(総数、性別)が閲覧できます。 |
(2) 人口動態統計(厚生労働省) |
保管統計表 都道府県編(報告書非掲載表) 死因 |
都道府県は性別、月別、年齢別のデータが閲覧できます。 |
(3) 全国・都道府県人口 | 人口推計 (総務省統計局) | |
(4) 市町村人口(福島県内) | 福島県の推計人口 (福島県統計課) | 総務省の人口推計には市町村の人口が掲載されていないため、 福島県の人口推計を使用します。 |
2.計算してみましょう!
指標 | 計算式 | 備考 |
---|---|---|
自殺死亡率(自殺率) | 地域の自殺者数 ÷ 人口 × 100,000 | |
年齢別自殺死亡率 | 地域の年齢別自殺者数 ÷ 地域の年齢別人口 × 100,000 | 人口動態統計を用いる場合、 計算できるのは都道府県のみです。 (市町村は年齢別自殺者数のデータがないので計算できません) |
年齢調整自殺死亡率 | ↓ 人口を全年齢分足し合わせます 全国年齢別人口 × 地域の年齢別自殺率 ÷ 全国人口 × 100,000 |
人口動態統計を用いる場合、 計算できるのは都道府県のみです。 (市町村は年齢別自殺者数のデータがないので計算できません) |
標準化自殺死亡比 (全国平均を100として計算されます) |
↓ 人口を全年齢分足し合わせます 地域の年齢別人口 × 全国年齢別自殺率 ÷ 全国自殺者数 × 100 |
Q. 自殺統計(警察庁)の自殺者数と人口動態統計の自殺者数はどう違いますか?
A. 自殺者数は大きく分けて表に示した3種類の統計があります。それぞれ用途が異なります。
また、下記の違いのほか、警察庁の自殺統計と人口動態統計は自殺であることの確認の仕方が異なります。
統計 | 地域分類の仕方 | 用途 | 自殺率計算 に用いる人口 |
備考 |
---|---|---|---|---|
自殺統計(警察庁)/発見地 | 発見された場所に基づく | 地域の安全対策 | 総人口 | 暫定値が翌月に公表される 外国人を含む |
自殺統計(警察庁)/住居地 | 住んでいた場所に基づく | 地域住民への支援 | 総人口 | 暫定値が翌月に公表される 外国人を含む |
人口動態統計 | 住民票の所在地に基づく | 地域住民への支援 | 日本人人口 |
概数が約半年後に公表される 外国人は含まない |
自殺統計、人口動態統計における直近の自殺者数の確認方法はこちらのページをご覧ください
Q. 指標を計算するときには、総人口と日本人人口のどちらを使えばいいですか?
A. 次のように使い分けます。(上記の表にも示しています)
(1) 自殺統計(警察庁)は国籍にかかわらずに自殺者数を数えるので「総人口」を使います。
(2) 人口動態統計は日本人の自殺者数を数えるので「日本人人口」を使います
なお、自殺率等の計算には、厳密には人口動態統計の自殺者数を使います。
理由は、各指標の計算の際、住民票人口を使うので、自殺者数も住民票に基づいて数えなければならないからです。
(住民票を置いたまま他地域に居住する場合に誤差が出てきます。)
Q. 自殺統計の指標のうち、どれを使えばいいですか?
A. 簡単には自殺死亡率(自殺率)で構いません。しかし、高齢化率が全国と比べて著しく高い場合などは、他の3つの指標を使うことをお勧めします。
理由は、一般的に高齢者の方が自殺率が高いため、高齢化率が高いというだけで自殺率が高くなってしまうからです。
町村レベルの人口規模では標準化自殺死亡比を用いるほうがいいでしょう。
理由は、年齢ごとの自殺者数が少なすぎて、かえって誤差が出てしまうからです。
Q. 自殺率が高いか低いかを評価するには?
A. 自殺者数が数名程度の場合、1人の自殺者の増減だけでも大きく自殺率が変動してしまいます。
その影響を考慮して評価するために、統計的な解析を行います。
次の計算シートをダウンロードして、特定の集団(市町村など)の特定の期間の自殺率が全国よりも高いか低いかを検定できます。
[準備するもの] 該当期間の全国の自殺率(年換算していないもの)、該当期間の該当集団の人口と自殺者数
[計算シートダウンロード] 自殺率信頼性計算シート [Excelファイル/22KB]
[計算結果の例] 市町村の自殺者数・自殺率・検定結果 [Excelファイル/19KB]
(福島県内市町村の平成22年から25年までの人口動態統計に基づく年自殺率とその統計検定の結果)
※参考ページ:自殺関連指標を計算するためのエクセルシート(福島県)・・・各市町村の自殺統計を集約したものです
Q. 統計をどのように生かせますか?
○ 統計結果を見て、「現状を正しく評価する」ということが最も大きな役割です。
多くの報道などでは、自殺者が多い/少ない、増えた/減ったといったことを、統計的な解析なしで記事にします。
前年との比較だけでなく長期的な推移に目を向けるなど普段から数字に慣れておくことが大切です。
○ 統計結果を見たからといって、ほとんどの場合、一義的に対策が決まるわけではありません。
・自殺率が低かったとしても、自殺が起こったということは重く受け止めます。
・継続して自殺率が高い集団へ特別に対策を考える、自殺者数が多い集団への対策に重点を置く、といった活用方法がありますが
自殺対策は「生きることの包括的な支援」として「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して」推進されるものです。
最終的には対策は幅広く実施することが望ましいので、統計結果に縛られる必要はありません。
・自殺の防止や遺族等の支援に取り組むことで「国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与すること」も自殺対策の目的です。
社会づくり(まちづくり、地域づくり)として取り組む視点が大事です。
・自殺者数ゼロが続いている場合は、これからも地域がそうあり続けるために大事なことや必要なことは何か?という視点で取り組みましょう。