ボツリヌス菌
Clostridium botulinum
菌の特徴
ボツリヌス菌は、土壌や海、湖、川などの泥砂中に分布している偏性嫌気性菌で、熱に強い芽胞を形成します。芽胞は、特殊な構造をしており、通常の調理(煮沸した程度)では殺菌できません。びん詰、缶詰、真空包装食品など、酸素が含まれていない(少ない)食品中で増殖し、毒力の強い毒素をつくります。そのため、致死率の高い恐ろしい細菌として知られています。
福島県内では、昭和52年以降5件(平成25年12月末現在)発生しており、死亡者(1名)もでています。
また、1歳未満の乳児がボツリヌス菌を含む食品(はちみつ等)を摂取すると、腸管内で菌が増殖して毒素をつくるため、乳児ボツリヌス症を発症する場合があることがあります。
原因食品
酸素のない(少ない)状態になっている食品で、缶詰、びん詰、自家製のいずしなどが原因食品となりやすいです。海外では、キャビア、野菜などの自家製びん詰や缶詰、ハム・ソーセージ類による食中毒が数多く報告されています。
本県におけるボツリヌスによる食中毒は、いずれも自家製のいずしが原因食品となっています。
また、乳児ボツリヌス症の原因食品は、ボツリヌス菌(芽胞)を含む可能性のある食品(はちみつなど)です。
症状
潜伏期間は、8時間から36時間。 吐き気、おう吐や視力障害、言語障害、えん下困難(物が飲み込みづらくなる)などのボツリヌス毒素による神経症状が現れるのが特徴で、重症例では呼吸まひにより死亡します。
予防のポイント
- 真空パックや缶詰が膨張していたり、食品に異臭(バター臭)があるときは食べないこと。
- 食べる直前に十分な加熱をすること。(ボツリヌス毒素は、熱に弱く、80℃30分間または100℃1~2分間で不活化される。)
- 新鮮な材料を使用し、十分な洗浄を行うこと。
- いずしは、作らない、食べない、人にあげないの3ない運動を徹底すること。
- 容器包装詰低酸性食品(容器包装に密封した食品のうち、pHが4.6を超え、かつ、水分活性が0.94を超えるものであって、120℃4分間に満たない条件で殺菌したもの)で、ボツリヌス菌食中毒の発生防止のために冷蔵を要するものは、冷蔵(10℃以下)で流通・保存すること。
- 1歳未満の乳児には、はちみつなどボツリヌス菌を含む可能性のある食品を与えないこと。
参考
福島県におけるボツリヌス菌による食中毒事件(昭和52年以降)
No. | 発生年月日 | 発生場所 | 摂食者数 | 患者 数 | 死者 数 | 原因施設 | 原因食品 | 型別 |
1 | 昭和52年1月1日 | 南会津町(旧南郷村) | 12 | 1 |
家庭 |
あゆいずし | E型 | |
2 | 昭和52年1月31日 | 只見町 | 3 | 2 | 1 |
家庭 |
あゆいずし | E型 |
3 | 昭和56年3月7日 | 南会津町(旧南郷村) | 3 | 2 |
家庭 |
あゆいずし | E型 | |
4 |
平成9年1月1日 |
南会津町(旧舘岩村) | 5 | 3 | 家庭 | はやいずし | E型 | |
5 |
平成9年3月7日 |
南会津町(旧舘岩村) | 1 | 1 |
家庭 |
いわないずし | E型 | |
計 | 24 | 9 | 1 |