企業有林や工場緑地を「自然共生サイト」に登録しませんか?
令和4年12月に行われた生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)で、2030年までに世界の陸と海の30%以上を保全する「30by30(サーティバイサーティ)」と呼ばれる世界目標が採択されました。
30by30の達成に向け、民間で所有する自然豊かな森林などを「自然共生サイト」へ登録し、保全区域を増やすことが期待されています。企業等で管理している自然を自然共生サイトへ登録し、国際的な目標へ貢献しませんか。
国際的な目標「30by30」とは
私たちの生活は、食糧、医薬品、エネルギー、清浄な空気と水、レクリエーションや文化・精神面の豊かさなど、陸上、淡水、海洋の生態系からの恩恵(生態系サービス)によって支えられています。しかし今、生物多様性は前例のない早さで減少しつつあります。世界の森林面積は、1990年から2020年の30年間で1億7,800万ha(日本の国土面積の約5倍)が減少し、2023年3月時点で国際自然保護連合(IUCN)が評価対象とした動物・植物などの150,388種のうち、約27%に該当する42,100種以上が絶滅の恐れがあることが判明しています。
こうした中、自然や生物多様性の損失に歯止めをかけ、むしろ環境にとってポジティブ(プラスの状態)にしていくことを意味する「ネイチャーポジティブ(Nature Positive)」という考え方が提唱されました。2030年までに世界の生物多様性を回復の道に導くことを目指し、そのための具体的目標として定められたのが、世界の陸と海の30%以上を保全するという世界的目標「30by30」です。
この世界目標を踏まえ、福島県では令和5年3月に改定した「福島県生物多様性推進計画」で県土の30%を保全するという目標を設定しています。
●現状の保全区域(県土)の割合
福島県 28.8%(残り約170km2、猪苗代湖約1.6個分)
(参考)
・環境省 30by30とは https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/
・ふくしま生物多様性推進計画(第3次) https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16035b/tayousei.html
30%を保全することが重要な理由
国内外の研究報告で、生物多様性保全のために30by30を目指すことが重要と指摘されています。
●主な理由
(1)世界の陸生哺乳類種の多くを守るため、既存の保護地域を総面積の33.8%まで拡大が必要
(2)日本の保護地域を30%まで効果的に拡大すると生物の絶滅リスクが3割減少する見込み
30by30における保全区域とは
以下の(1)(2)の合計を30%以上とすることを目標としています。
(1)国立公園など法令で生物多様性が守られる地域
(2)民間などの取り組みにより生物多様性が守られる地域(企業が管理する森林など)
なお、民間などで保全される地域については、世界的にOECM(Other Effective area-based Conservation Measures)と呼ばれます。
OECM、自然共生サイトについて
OECMとは、自然公園等の保護区以外に、目的に関係なく、民間等の取組により生物多様性保全に貢献している地域のことです。OECMには、生物多様性保全が主目的の地域(企業が保全活動を実施している森林やビオトープなど)、生物多様性保全が主目的ではないものの、その保全に大きく貢献している地域(里地里山や社寺林、都市公園など)があります。
2030 年までに陸域と海域の 30%以上を保全・保護すること(30by30)が大きな目標の一つとして掲げられたことから、日本を含む世界各地で OECMの役割への期待が高まっています。
日本では、OECMの取組を推進するため、民間等の取組によって生物多様性の保全が図られている区域を「自然共生サイト」という名称で認証する取組を進めています。この認定を通じて、企業価値の向上や交流人口の増加などを通じた地域活性化に繋がっていくことが期待されています。
自然共生サイトに登録しませんか
自然共生サイトは、その場所がどのように生物多様性を守ることに役立っているかを専門家が評価し、国が公式に認定する仕組みです。認定した自然共生サイトは保護地域との重複を除いて、OECMの国際データベースに登録されます。
OECMに登録されると、30by30目標の達成に直接貢献できるため、生物多様性保全に貢献している企業であることを国内外へ広くアピールできる機会となります。
また、自ら森林等を所有していなくても、自然共生サイトの管理に貢献することで、国の認定を受けられる場合もあります。
申請方法や申請期間等について、詳しくは環境省ホームページをご確認ください。
(参考)
環境省 自然共生サイト https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/kyousei/
30by30アライアンスについて
環境省を含めた産民官21団体を発起人とする「生物多様性のための30by30アライアンス」が2022年4月に発足されました。自らの所有地等をOECM登録や保護地域の拡大を目指す、または関連する取組を応援するなど、30by30の実現に向けた行動をとる有志の集まりで、企業、自治体、NPO法人等、計528者が参加しています(2023年9月4日時点)。福島県でも令和5年8月29日に30by30アライアンスへ参加しました。30by30アライアンスに参加することで、国が企業の取組内容を発信したり、生物多様性に関する最新情報を共有できる等のメリットが受けられます。
環境省 30by30アライアンス https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/
おわりに
私たちの身の回りには生物多様性の恵みがあふれています。例えば、野生ハチ等の花粉媒介者は国内で年間3300億円の実りに関係します。森林の豊かな栄養は河川を通して海の生産性を向上させます。災害にも強く、恵み豊かな自然は、国土の安全保障の基盤にもなります。また、地域の豊かな自然資本を活用して、観光や交流人口の増加など持続可能な地域づくりも期待できます。
県では、現在、県内の自然共生サイトを増やすための取組を進めています。自然共生サイト登録について興味のある企業。団体等の皆様におかれましては、ぜひ自然保護課まで情報をお寄せください。
生物多様性の損失を止め、持続可能な社会を実現させるため、企業や地域、一人ひとりにできることを始めてみませんか。
花粉を媒介するハチ きれいな水を提供する森林
(ハナバチ類とハマボウフウ) (昭和村冷湖の霊泉)
植物の光合成による気候調整 観光の場を作り出す自然
(只見町恵みの森) (金山町の第四只見川橋梁)