点字広報ふくしま第303号
<県政の窓> 未来へつなぐ福島の伝統的工芸品
古くから受け継がれる伝統的な手法により、職人の手で一つ一つ丁寧に作り上げられる伝統的工芸品。 県内の伝統的工芸品や後継者の確保・育成に向けた県の取り組みなどを紹介します。
1 伝統的工芸品とは
国指定伝統的工芸品とは、昭和49年に制定された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(通称:伝産法)」に基づき、経済産業大臣が指定した工芸品をいいます。
また、地域に根付いた伝統的工芸品を振興するため、「福島県指定伝統的工芸品」として県が指定した工芸品もあります。
県内には、漆器、陶磁器、木工品、織物、和紙など40品目の伝統的工芸品があります。
【国の指定要件】
(1)主として日常生活の用に供されるものであること。
(2)その製造過程の主要部分が手工業的であること。
(3)伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
(4)伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
(5)一定の地域において少なくない数のものがその製造を行い、またはその製造に従事しているものであること。
※「福島県指定伝統的工芸品」は国の(5)(規模要件)を除いたものとなっており、小規模の伝統的工芸品も指定しています。
■県内の国指定伝統的工芸品5品目の名称と主な製造地域
・大堀相馬焼(浪江町)
・会津塗(会津若松市・喜多方市)
・会津本郷焼(会津美里町)
・奥会津編み組細工(三島町)
・奥会津昭和からむし織(昭和村)
(※これら5品目は県指定伝統的工芸品の指定も受けています。)
2 伝統工芸・地場産業の後継者確保に向けた県の取り組み
県では、県内外で伝統工芸・地場産業について学ぶ学生などを対象とした「福島県クリエイター育成インターンシップ」を実施しています。
県内事業者とのマッチングにより決定した受け入れ先において、3~14日間の期間で、各事業者が組んだカリキュラムに基づき技術交流や販売などを行います。経験を通して、クリエイターとしてのスキルアップを目指すとともに、学生などと県内事業者とのつながりを作ることで、後継者の確保を図っています。
インターンシップは、令和元年度からスタートし、これまで受け入れた研修生は57人にのぼります。県では、今後も後継者の確保や育成に取り組んでいきます。
◆問い合わせ先
県庁県産品振興戦略課 ☎024(521)7296
3 伝統を未来へつなぐ若手職人たち
(1)インタビュー 大堀相馬焼
ろくろ職人 吉田 直弘(よしだ なおひろ)さん(空想窯)
■伝統と革新の融合により生み出す新たな「大堀相馬焼」
京都美術工芸大学在学中のインターンシップ説明会で大堀相馬焼に触れ、出身地の関西地方ではほとんどない二重焼きという技法にまず惹(ひ)かれました。実際、インターンシップで活動していく中で、機械に負けない速さでろくろを操る職人の技術の高さに憧れ、大堀相馬焼職人を目指す浪江町の地域おこし協力隊に応募して、関西から遠く離れた福島県にやってきました。
始めた頃は、1日20個作るのがやっとでしたが、経験を積み重ね、今では150個程度作れるようになりました。
これまでの大堀相馬焼の作風は生かしながら、自分なりに研究した水色系の釉薬(ゆうやく)を使うこと、丸いフォルムをした柔らかい形とすること、筆で器に飛行機雲や入道雲を描くなどの最後のひと手間を加えることが自分の作品(空想窯)の特徴です。
将来的には、大堀相馬焼の窯元として独立して、自分で商売をしていきたいです。そして、県外への出張販売なども積極的に行い、大堀相馬焼の販売を通して、浪江町の現状を多くの人に知ってもらうよう発信していきたいです。
(2)インタビュー 二本松万古(ばんこ)焼
有限会社井上窯 井上 舞(いのうえ まい)さん
■唯一の窯元として、守りたい伝統がある。
二本松万古焼の唯一の窯元である井上窯の後継者として、日々製作に励んでいます。
二本松万古焼は、焼しめ(釉薬(ゆうやく)を施さない焼成方法)の土の風合いが感じられる焼物で、全国的にも珍しい木の型を用いた伝統的製法「手ひねり型くずし」による急須や湯呑みが代表的作品です。模様の特徴に梅や指跡などがあります。
私の作品では二本松万古焼の伝統を基に、自分で粘土からさまざまな陶印を創作し、その陶印で模様を付けた器やアクセサリーなどの新たな作品作りにも挑戦しています。
また、作品のアイデアに生かせればとの思いから、県が実施しているものづくり人材の育成講座「ふくしまクリエイティブクラフトアカデミー」に参加しています。今まで気付けなかった第三者からの意見や、他の伝統産業後継者の話などを聞く機会が得られ、大変勉強になっています。
今後はSNSなどでの情報発信や、個展や催事などで知名度を高める活動にも力を入れ、より多くの方々に二本松万古焼の存在を知っていただけるように、唯一の窯元として、これからも伝統を継承していきたいです。
(3)インタビュー 奥会津昭和からむし織
からむし織研修生 佐原 一葉(さわら かずは)さん、島村 美緒(しまむら みお)さん
■村の暮らしとともに歩む「昭和からむし織」
【佐原さん】
「道の駅からむし織の里しょうわ」でのコースター織体験がきっかけで、からむし織に興味を持ちました。元々、ものづくりへの興味があったことや自然の近くで生活したいとの思いから、からむし織体験生に応募しました。
からむし織は、畑仕事から糸づくりや織りなどの全ての作業に関われることが魅力です。その中でも、からむしの茎から糸を作るための繊維を引き出す「からむし引き」という作業は難しいですが、大事な作業だと感じています。
4年目になりますが、まだまだ技術を習得したとは言い切れません。ですが、これまでの経験を生かして、昭和村のからむし織に貢献していきたいと思います。
【島村さん】
編み組細工を取り扱う店に勤めていた時に、昭和村や織姫制度のことを知りました。県外出身で縁もゆかりもない福島県の昭和村に来ることに多少の不安はありましたが、興味のほうが勝りました。
からむし織の作業一つ一つが、村の暮らしや季節と密接につながっていて、そこにすごく魅力を感じます。
全ての作業に難しさを感じますが、一番長い時間をかけて取り組む苧績(おう)みという糸作りの作業は根気が必要となる大変な作業です。
情報ボックス
新型コロナウイルス感染症に関するお知らせ
1 ワクチン接種の疑問点
新型コロナウイルス感染症への対策として、ワクチンの3回目接種が少しずつ進んでいます。3回目接種の受け方や副反応などについて、Q&A形式で解説します。
Q 既にワクチン接種を2回受けていますが、追加(3回目)の接種は必要ですか。
A ワクチンには高い発症予防効果などがある一方、重症化予防や感染予防の効果は時間の経過に伴い、徐々に低下していくといわれています。このため、重症化予防および感染拡大防止のため、2回目接種完了した18歳以上の方に接種券が送付され、追加接種が行われます。
Q 追加(3回目)接種では、1回目・2回目接種とは異なるワクチンを使用(交互接種)しても大丈夫でしょうか?
A 英国での研究結果によると、追加接種後7日以内の副反応は、1回目・2回目接種と同じワクチンを接種しても、異なるワクチンを接種しても安全性の面で許容されること、また、1回目・2回目接種でファイザー社のワクチンを受けた人が、追加接種でファイザー社のワクチンを受けた場合と、武田/モデルナ社のワクチンを受けた場合のどちらにおいても、抗体価が十分上昇することが報告されています。
Q 追加(3回目)接種でも、副反応はありますか。
A ファイザー社のワクチンおよび武田/モデルナ社のワクチンどちらの場合も、2回目の接種後と比較して、頭痛や発熱などの発現はおおむね同様の傾向があると確認されています。ワクチン接種後、2日間以上熱が続く場合や症状が重い場合は、医療機関などへの受診や相談、または、次のコールセンターへの相談をご検討ください。
■福島県新型コロナワクチン副反応コールセンター
相談専用フリーダイヤル 0120(336)567
受付時間 午前9時~午後8時(毎日)
Q 初回(1回目・2回目)接種がまだ受けられていません。追加(3回目)接種が開始されても、初回接種を受けることはできますか。
A ワクチン接種が受けられる期間は、令和4年9月30日までです。この期間内であれば、初回接種を受けることも可能です。なお、接種できる時期や会場などについては、住民票のある市区町村へお問い合わせください。
2 相談窓口
発熱、咳、体のだるさなどの症状がある方は、まずは電話で、かかりつけ医や身近な医療機関へ電話でご相談ください。かかりつけ医がいない方、相談先が分からない方は「受診・相談センター」にご相談ください。
■受診・相談センター フリーダイヤル 0120(567)747
受付時間 24時間(毎日)
県の対策や予防法などは一般相談窓口にご相談ください。
■一般相談(コールセンター) フリーダイヤル 0120(567)177
月曜日~金曜日 午前8時30分~午後9時
土日祝日 午前8時30分~午後5時15分
点字図書館だより
1.受賞おめでとうございます
当館の図書製作に尽力され、令和3年度に表彰を受けられた奉仕員の皆さんを紹介します。(五十音順・敬称略)
●令和3年度各種功労者知事表彰(令和3年5月19日)
亀岡 京子(音訳)
●公益財団法人鉄道弘済会第51回「朗読録音奉仕者感謝行事」
朗読録音奉仕者全国表彰(令和3年9月30日)
長林 かよ子 (音訳)
朗読録音奉仕奨励賞(令和3年10月19日)
飯野 栄子(音訳)、曲山 和子(音訳)、山浦 久美子(音訳)
●福島県点字図書館館長感謝状(令和3年10月19日)
今泉 容子(点訳)、遠藤 悦子(点訳)、佐々木 英子(点訳)、鈴木 ハツヱ(点訳)
●「福島県社会福祉大会」における知事表彰(令和3年11月5日)
岩下 せい子(点訳)、鈴木 豊子(点訳)、山田 シカ(点訳)
●「福島県社会福祉大会」における知事感謝状(令和3年11月5日)
小野 さつき(点訳)、齋藤 愛(点訳)
●「福島県社会福祉大会」における社会福祉協議会会長表彰(令和3年11月5日)
齋藤 みどり子(点訳)
●「福島県社会福祉大会」における社会福祉協議会会長感謝状(令和3年11月5日)
遠藤 説子(点訳)、野村 秀重(点訳)
●日本盲人社会福祉施設協議会
第69回全国盲人福祉施設大会奉仕活動者(ボランティア)表彰(令和3年11月11日)
斎藤 悦子(点訳)
●厚生労働大臣表彰(令和3年11月19日)
鷺 シヅエ(点訳)
●厚生労働大臣感謝状(令和3年11月19日)
長林 かよ子(音訳)
2.「見えにくい・見えない人のための生活・福祉機器展2022」
2年連続の中止となりました「見えにくい・見えない人のための生活・福祉機器展」は、今年8月の開催予定です。
今回は来場者の密集を避けるため、事前予約制など、さまざまな新型コロナウイルス感染症予防対策を取りながらの開催になりますのでご了承ください。詳細は、次号(第304号)でお知らせします。
■開催日
8月7日(日曜日)
■会場
コラッセふくしま(福島市三河南町)
3.福島県点字図書館利用者アンケートの御礼
「点字広報ふくしま」2021年11月号(第301号)でお願いしました「利用者アンケート」に多くの方からご回答を頂きありがとうございました。
結果については次号(第304号)に掲載予定です。
アンケート調査の内容を精査し、今後の点字図書館の運営に活用させていただきます。
◆県点字図書館 電話番号 024(531)4950
みんなの広場
はやり やまい
デイジー編集奉仕員 紺野 廣重(福島市)
ミミミ ミレド ドシラ ラドミ ラララ ラソファ ファミレ レミファ。
私は、昭和40年代後半に流行病(はやりやまい)にかかりました。この病気は、耳から感染し、特に高校生がなりやすく、大抵は一過性で本人が分からないうちに通り過ぎてしまいます。初発はスペインと言われていますが、この病気を思春期の子供達に広めた人は分かっています。その人は、「ナルシソ・イエペス」という方です。
初めの典型的な症状は、まず貯めた小遣いを持って楽器店に走る事からです。ギターを買い求めます。そして次の症状で完全に感染していることが分かります。特定の曲の楽譜を求めることです。その楽譜のタイトルは「禁じられた遊び」(ギタリスト イエペスで有名に)です。ギターとこの楽譜を手に入れた時がこの症状のピークとなります。それから時間があるとギターを抱え、まだまだポロン、ポロンと間延びした音しか出せないうちでも「いいな!」「やっぱり心にしみるな!」と自己満足に陥ってしまいます。これが重症化するといろんな曲を覚え一端(いっぱし)のギタリストを気取り、家族の夜の安息時間を壊していることなど露程(つゆほど)も感じず陶酔感にどっぷりと浸ることになってしまいます。ただし、大抵の患者は、ギターコード押さえで人差し指はここの弦、薬指は手前の弦などなど指をつりそうになってもなかなかコードをマスターできないことが多いのです。
やがて、ギターが壁に寄りかかるようになり、間もなく楽器店に走った頃のテンションが下がり始め、家族の団らんの復活と併せるように楽譜の行方が分からなくなり、ギターは押し入れに入り、数年の内にそのギターも行方不明になってしまいます。
大体の人はこのようにしてそんな病気にかかったことさえ忘れ去り、完全に治癒します。私も数十年経った今、そういうことがあったなと思い出しました。
でも隙を見せるとまた、似たような病気にかかります。私は40代で再度発症しました。病気は「メリークリスマス、ミスターローレンス」の台詞と坂本龍一が始まりです。「大人のピアノ教室」という症状を深めることも経験しましたが、結局、転帰は高校生の時と同じようです。平和な音楽の病気です。
新型コロナウイルス感染症が終息し、以前の生活に戻ることを祈っています。
協力会だより
日常生活用品(用具)の相談・あっせん
本会では、視覚障がい者の日常生活自立支援のため、日常生活用品(用具)の入手などについての相談・あっせんを行っています。
必要な用品(用具)がありましたら、事務局までご相談ください。
新型コロナ感染予防対策による在宅生活の長期化が懸念されることから、今回は、少しでも在宅生活を健康で楽しく過ごせるような下記用品を紹介します。(税込価格)
〇 にゃんこ計 ミケネコ(価格 3,040円)
・商品説明 手のひらに載るサイズのネコの形をした、音声と光でお知らせする温湿度計のおもちゃ。熱中症やお部屋の乾燥対策・光センサーとしても使えます。
〇 トランプカード(価格 1,320円)
・商品説明 点字表示付きです。点字の表示位置はカードの表と裏の2種類あります。
〇 オセロゲーム(価格 3,810円)
・商品説明 置いた石が他のマスに移動しないよう、マス目に仕切りを付けています。
黒石の表面には凸線を施しているので、触ると白石と区別できます。
〇 指先が出るやわらか手袋(価格 2,100円)
・商品説明 Mサイズでどなたでもお使いいただきやすい雪柄です。両手の親指、人差し指、中指の指先の横にスリット(穴)があり、手袋をはめたまま指先を出すことができます。携帯電話操作時、お買い物の際などさまざまなシーンで便利にお使いいただけます。
◆県視覚障がい者協力会 電話番号 024(533)4085(Fax兼用)
生活支援センターだより
白杖の購入方法について
支援センターへの相談の中で、白杖に関するものが多くあります。そこで今回は、白杖の購入方法を紹介します。
現在、販売されている白杖には、直杖、携帯用(折りたたみ)、身体を支える杖(身体支持併用:サポートケーン)の3種があります。
白杖の購入手続きは以下のとおりです。
1 購入する白杖を決めます。決めるにあたっては、実際に持って、振ってみることをお勧めします。センターには多くの白杖がそろえてあります。
(1)種類を決める。
(2)長さを決める。(脇の下程度、身長から40~45cm引いた長さ)
(3)石づき(先端)を選ぶ。(スタンダード、ローラーチップ、パームチップ等)
(4)材質を選ぶ。(軽金属、カーボン製、グラスファイバー製など)
(5)耐用年数の確認(白杖の材質により申請できる年数が異なる)
以上により、購入を希望する白杖の金額が決まります。
2 基準額(白杖の購入にあたって市町村からの補助金)
概ね6,500円程度の補助金が支給されるので、購入希望の白杖から基準額を超えた金額が自己負担となります(非課税世帯は自己負担なし)。
3 見積書を業者から取り寄せます。見積書が手元に届いたら、市町村役所(障がい福祉担当課)に申請します。
その際、見積書・身体障害者手帳・印鑑・マイナンバーカードなどを持参します。
詳細は、生活支援センターにお問い合わせください。
◆県視覚障がい者生活支援センター 電話番号 024(535)5275
福祉協会だより
以前にもこの紙面で数回にわたりお知らせしてきましたが、視覚障がい者である本福祉協会会員をはじめ、全国の視覚障がい者が生活の糧としている「あん摩マッサージ指圧」の職域をめぐって、裁判が行われていました。
この裁判では、視覚障がい者の就労保護を理由に、法律により「あん摩マッサージ指圧師」の養成施設の新設が規制されています。この法律の規定が、憲法の職業選択の自由に違反するか否かで争われていました。
東京高等裁判所、仙台高等裁判所、大阪高等裁判所では、私たちが支援する被告(厚生労働省)の主張(規定は合憲である)が認められる判決が出ましたが、原告は、この判決を不服として最高裁判所へ上告しました。
2月7日、最高裁判所第二小法廷(菅野博之裁判長)で判決が言い渡されました。判決では、二審の判断(規定は合憲である)が支持されました。
今日まで、多くの皆さまにご理解とご支援をいただき、署名活動や資金カンパをお願いしてきました。本当にありがとうございました。皆さまのお力添えで全国の視覚障がい者の職域を守ることができました。改めて感謝申し上げます。
◆県視覚障がい者福祉協会 電話番号 024(535)5275